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お客様が「神様」でして ~道後の若女将は女子高生!~(web版)  作者: 田井ノエル
十一.お正月の神様がサボタージュですか!?
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《特典SS》幸だるまつくろう

約1年前、2巻のサイン会で来場者特典として配布した限定SSです。


また、現在AmazonKindleで書籍版「道後温泉湯築屋」シリーズの1巻、2巻が期間限定無料配信中です。

web版のみで、書籍版をチェックしていない!という方は、この機会にご利用ください。

3/6~3/19までの2週間となっています。

 

 

 

 湯築屋の結界はいつだって透き通るような黄昏の藍色で。雲一つない空から、幻の雪が降っている。その光景はどことなく異様で、されど、美しく。

 ほんのりと雪化粧を纏った寒椿が見守る玄関先で、子狐のコマがせっせとなにかを作っている。


「コマ、どうしたの?」


 九十九が声をかけると、コマは「ひゃ!」と小さな肩を震わせながら、なにかを背に隠した。


「若女将っ……なんでもないです!」


 全力で首を横にふると、つられて尻尾も左右に動く。しかし、子狐の努力はむなしく、小さな身幅ではうしろに隠した代物は容易に覗き込めてしまった。

 そこには、ゴロンと大きな雪の玉が二つ転がっている。


「雪だるま?」


 九十九は椿柄の着物が汚れないように腰を落として、雪玉に触れた。シロの結界に降る雪は冷たくない。けれども、重量感のある雪玉はコマには重く、持ちあげることができなかったのだ。


「わあ、若女将!」


 九十九が雪玉を持ちあげ、雪だるまを組み立てると、コマが頬を紅潮させて喜んだ。おしりの尻尾がブンブンと横に揺れている。


「どうせなら……」


 九十九はニコッと笑って、周囲の雪を集める。いくら触っても冷たくないのが実にいい。


「わあ! わあ! 若女将、すごいですっ!」


 ただの雪だるまを狐の形にすると、コマはその場でピョンピョコ跳ねた。


「コマの雪だるまだし、仕上げはお願いね」

「いいんですか? ……じゃあ」


 コマはバケツを逆さにした踏み台に飛び乗ると、嬉しそうに懐からみかんを取り出した。それを出来あがった雪だるまの上に、チョンと乗せる。


「可愛い!」

「若女将のおかげですっ!」


 温かみさえ感じる幻の雪。触れていると、不思議と笑顔があふれ出て、ささやかな雪遊びはしばらく続いた。


 その後も、玄関先の雪だるまは、冬の終わりまで湯築屋のお客様を出迎え続けるのだった。

 

 

 


双葉文庫5月刊で5巻が発売予定です。

4月に5巻に相当する12章~15章を更新します。

シロに関する謎なども、この更新で明かす予定です。

3巻分辺りから、設定管理ができなくって諦めて書籍版の設定でweb版も書き進めておりました。回収する伏線も、そちらに準拠してしまいます……。

書籍の1巻・2巻が無料配信中のこの機会にチェック推奨でございます。

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