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最終話9

 この場の誰もがこの『問題』の抜けかたを思いつかないうちに、到底味方とは思えないような追っ手や潜んでいたものらがばらばらと集まり始める。抜け駆けを許すまいと放られた手榴弾が的はずれの位置で爆発し、しかしそれが頭上を通過して反対側へ飛んでいった故のことだと気付いて一宇は恐れる。

 これは本当にまずい。

 先日レジスタンスローズに捕まったときの恐怖が胃の辺りから這い上ってきた。

「壊せないからな、言っておくが旧帝国の使ってた合金だかなんだかは、今の鉄やらじゃあ容易に傷つけられないンだ。俺が若い頃そうだった」

「若いって……今だって、半世紀も生きてないじゃないですか」

 若造はお互い様だ。

 ランゼルはうっそりと笑った。ひさびさにその笑みを見たような気がした。

「いいねェ……息切れしないうちに家族孝行しときたいもんだ、定年したら妻子にまともに相手して貰えないなんて衝撃的だろ?」

「何がですかーもう!」

 叫んだ途端、立っていた岩場が大きく崩れた。

「何だ!?」

 

 ふと、一宇が目を落とすと、手持ちの画面に、

 『仮許可a1817E6AWB、声紋及び身体的特徴の入力終了』

 という文字が一瞬並んで、あとは一転して屋内図が表示された。しばしの間、大佐と候補生は口を閉ざした。

「……声紋認証っていうよりは、むしろ、……俺が『誰』か覚えただけ?」

 呟いた一宇がイヤな予感にびくりとして振り返ると、大佐が冷たい笑みでこちらを見ていた。

「時間を無駄にするな! このっ」

 大佐がひと飛びで岩場に開いた穴に続く階段に飛び移る。それを追い、コードを引き抜いて一宇も走った。

「だってこれっどのみち読み込みまで二十五秒以上かかってるんですよ!? だってちょうど今開いたじゃないですかっ俺の所為じゃないですよ機械のせいですよっ処理能力は研究所の所為でっ」

「言い訳は後だ! 後方から敵が来ないわけじゃないんだからな! もって三十分、それが限界だ! 探せ!!」

 

 そこは、異様なほどの白い廊下と扉の世界。

 つもった埃と黴臭さを除き、人気(ひとけ)があればいくらでも病院に見えるだろう景色だった。

 階段付近で陣を組んだ味方の軍人たちが、内部の様子に顔をしかめた。

「……なんで何十年も、こんなふうに残ってるんだ?」

 声は無意味に反響し、残響音に外部からの攻撃音が混じった。

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