【第6章】楽園
体育祭も終え、輪たちは修学旅行に行くことになった。それぞれの思いを胸にアメリカのニューヨークに行く輪たち。ニューヨークに向かう中、それぞれの思いが交錯する。
そして、この時を境に輪の心境に変化が現れるようになる。
俺は明日の修学旅行の支度をしていた。
明日ーつまり11月24日から27日までの4日間アメリカのニューヨークに行くのだ。
公立高校で国外に行くのは以外に珍しかったりする。なぜなら金がかかるからだ。だが、今年のこの日比野高校の方針がグローバル化であったためか今年はアメリカになった。正直英語自体は苦手ではないが話せるかどうかは別の話だった。
「何で今年に限って海外なんだ?まぁ、なるようにはなるとは思うけど…」
俺はぽつりとつぶやいた。
その時一本の電話がかかってきた。
「もしもし~。あ、海廻か」
『もしもし~輪?明日の支度できた?』
「今その途中。何か用か?」
『ううん。輪が今どうしてるかな~って思っただけ。そうか~まだ支度中か~』
「そういうお前はどうなんだよ支度は終わったのか?」
『私はとっくに終わっているのだ~!エッヘン!』
「そうか。じゃあもう切るぞ」
『うん!じゃあね輪!また明日!』
そういって海廻は電話を切ったのだった。
そしてそのまま準備を終え明日に備えて眠ったのだった。
ーまたあの夢だ。
俺は白い世界にいた…今度も花が咲いていた。
今度はゴボウの花ではなく紫陽花だった。
「またお前か…」
【あなたはこの先どうするつもり?また、あの空虚な日々に戻るの?】
「お前の言っている意味が分からない。お前は俺の何を知ってるってんだよ!」
そもそも、こいつは一体何者なんだ?そう考えていると「声」は淡々と語りだした。
【私はあなたの全てを知ってる。だからこそ私はあなたに幸せになって欲しいの。あの空虚な日々に戻って欲しくない】
「俺のことを知ってるから俺の幸せを願う?なんだよそれ。訳がわからねーよ」
【輪…あなたは分からなくてもいいの。このまま幸せな微睡を過ごせば】
分からなくてもいい?どういうことだ?
「お前は一体何を?」
【何故あなたは今に違和感を持っているの?「今の人生」がそんなに気に入らないというの?」
こいつは本当に俺の全てを知ってるんだな。なら、隠しても仕方ない。俺の思っていることをそのまま俺は言葉に出した。
「何もかもお見通しって訳か。いや、俺は今の生活が気に入らないわけじゃねーよ。むしろ大好きだ幸せだと思ってる。けど、俺の周りに普通じゃないことが起きてる」
【普通じゃないこと?】
「上手くは言えないけどその「普通じゃないこと」が俺たちにとって悪いことに繋がるかもしれないんだ。」
【それは絶対に無い!!在ってなるものか!!私たちの日常に…楽園にそんなものがあるはずが無い!!!】
「私たち…?お前は一体…」
その瞬間意識が遠のいていく…俺は完全に意識が無くなっていた…
【私たちの楽園が…間違ってる訳がない。そうだよね?】
俺は目が覚め、学校に向かっていた今日は珍しく海廻が俺の家に来なかったので一人で登校していた。
「よお!輪!あれ?海廻は?さては喧嘩したか?」
後ろから現れたのは裕司だった。俺は裕司の問いに答えた。
「今日は珍しく海廻が俺の家に来なくてな…先に学校に行ったんだと思う。」
「なんでまた?」
「俺が知るか」
俺と裕司はそのまま学校へ行ったのだった。
学校に着き俺と裕司はすぐに体育館に直行した。
8時30分に体育館に直で集合しないといけなかったからだ。
自分のクラスのいるところに行くとそこにはお馴染の生徒と海廻、真由里、優里奈の三人もいた。
「いたいた。お~い!」
俺が呼ぶと3人はこっちを向いた。
「おはよう。」
「ち~っす!」
俺と裕司が挨拶をする。
「うん…おはよう…輪、裕司」
「おはようございます。」
「…お早う」
海廻、真由里、優里奈の順に返事をした。今日は珍しく海廻は元気がないようだ。
「どうしたんだ海廻?元気ないな」
裕司が言う。
「うん、ちょっとね」
海廻は適当にはぐらかした。
「なんかあったか?」
俺が質問すると海廻は「何でも無い!」と言った。
そう話している内に出発の準備が完了したようだ。俺たちは順番にバスに乗って行った。
アメリカに行く順番としてはまず学校から出るバスに乗り空港に行きアメリカのニューヨークの空港に到着した後、ホテルに行き今日1日はそのホテルで過ごすことになる。
どうも着くのは夜遅くになるらしく今日はホテルに着いたら出られないらしい。時差もあるし。
今俺たちはバスに乗って空港に向かっていた。俺と裕司が隣同士で海廻、真由里、優里奈の三人で座っていた。
「楽しみだなぁ、輪」
裕司が楽しそうに言ってくる。
「そうだな」
俺はそう答えた。
「まぁ、バスの中じゃ退屈だよな~」
「別にそういうわけじゃないけど…外の景色を見るのも悪くないし」
「外の景色見ても退屈だぜ。速く空港に着いて飛行機に乗りたい。俺飛行機に乗るの生まれて初めてなんだぜ?」
俺も飛行機に乗ったことがないのでとても楽しみではある。あるのだが…
「何か怖そうだよな…」
「いや、高校生にもなって何ビビってんだよ…」
裕司が呆れるように言ってくる。仕方ねーじゃん。怖いもんは怖いんだよ。
「つーかこれどれくらいで着くんだ?」
「確か十五分くらいで着くはずだからもうそろそろだな」
「てか、あの三人寝てやがるぞ…呑気な奴らだ」
裕司がそう言ったのだった。確かに呑気だな…俺なんか飛行機にビビりまくってるのに。
「おっ、そろそろ空港に着くみたいだぞ」
「まじか!飛行機一番乗りはこの俺だ!」
「いやいや、順番決まってるから」
そして、無事に空港に到着したのだった。
「金属探知機なんて本当にあったんだな。驚いた」
「やっぱり、輪も驚いたか~。実は俺もだ」
「話してないでさっさと済ませましょう」
「………」
「もー。輪、裕司、真由里、優里奈~。速くしないと置いてかれちゃうよ?」
金属探知機に驚きながらも海廻があんまりせかすもんだからさっさと済ませて飛行機に乗った。
俺のクラス全員飛行機に乗り座席に着いた。座席はあらかじめクラスで決めており俺の隣が優里奈で、海廻と真由里が同じ席、そして、裕司はクラスの男子の隣だった。
「そういえば今までお前とこうして二人になることってあんま無かったよな~」
「そうね」
俺が言うと優里奈は淡々と答えた。相変わらず口数の少ない奴だ。
「そろそろ出発みたいだな」
「うん、飛行機に乗ったの初めてだから少し緊張するわね」
「まぁ、多分大丈夫だろ?」
俺は自分の不安を振り払うように行った。
「間もなく飛行します!シートベルトを着けてください!」
俺たちは声の指示に従いシートベルトを着けた。
「飛行します!」
その声が聞こえた途端、飛行機が動き出したのが分かった。飛行機は速度を上げていきついには飛行し始めた。
「うわわわわわわ!」
「すっごーい!飛んでる!」
「綺麗ですね」
裕司、海廻、真由里の順で声が聞こえてきた。裕司…お前が一番ビビってんじゃねーか。
「思ったより浮遊感が無いな」
俺が驚いていると「飛行機はそういうもんよ」と優里奈が言ってきた。
「優里奈は飛行機初めてじゃないのか?」
「何度か乗ったことがあるわ。たまに家族で旅行する時に乗る機会があったし」
「へぇ~、そうなのか」
俺が優里奈に感心していると優里奈は突然妙なことを聞いてきた。
「ねぇ、輪。あなた最近何かおかしいと思わない?」
「何かって?」
「とにかく何か違和感みたいなのを感じないかって聞いてるの」
優里奈はそんな事を聞いてきた。優里奈も何かを感じている…ということなのだろうか?
「違和感なら、いくつかあるな」
「どんなこと?」
そして、俺は優里奈に話した。文化祭の違和感、去年の夏祭りを含めた今年の三月までの記憶が無いこと、今年の夏祭りでの違和感、葬式の時の出来事、そして、その違和感が日に日に大きくなってきていること、それら全てを優里奈に話した。
「大体は私も同じことに違和感をもってるわ。葬式の時のことは分からないけど」
「優里奈もか。だとしたら思い違いって訳でも無さそうだな」
「私たちの間に何かが起こっている。それは間違いないわ」
何かが起こっている…確かにそう思う。だがー
「漠然と違和感を持ってるだけで、決定的な確信と証拠が無い。地道に調べていくしかないわ。先は長いわね」
「ああ、そうだな」
俺はただ一つだけ優里奈に言ってないことがあった。夢のことだ。
夢の内容はぼんやりとしか覚えていないが、何かの「声」が俺に語り掛けてくるのだ。
確か、私たちの楽園とか言ってたっけ?それが何なのかは俺には分からない。
ーこの時の俺は分かっているようで何も分かっていなかったー
私は裕司の隣に座っていた。
「ねぇ、裕司?顔色悪いよ?大丈夫?」
私が裕司に声を掛ける。
「お、おう。どうやら、飛行機にやられちまったようだ」
飛行機はほとんど揺れてないし浮遊感も無いのに酔うなんて…変なの
「はー、退屈ー。何か話してよ~裕司」
「俺、今酔ってんだけど」
裕司が気持ち悪そうに言ってくる。う~ん、仕方ないか。
「分かった。じゃあ、はい!これ!酔い止めの薬!」
そう言って私は裕司に酔い止めを渡す。結構いいやつだから、すぐに治るはず!
「お、おう。サンキュー」
裕司は私の酔い止めの薬を受け取りすぐさま薬を飲み、しばらくすると酔いが止まったようだ。
「はー、酔いが覚めた気がする。ありがとな、海廻」
裕司がお礼を言ってきた。
「どういたしまして。さてと、裕司何か話そう。私すごく退屈」
私が言うと裕司が快く「いいぜ」と言ってくれた。やっぱり裕司は接しやすい。
「んじゃあ、何の話をしようか…」
裕司と私は二人で色々話した。そういえば裕司とこうして二人で話すのは久しぶりな気がする。
私と裕司が知り合ったのは中学三年生の時だ。今いる五人の中で最初に知り合ったのは輪。
輪とは中学二年の終わりによく話すようになり、中学三年生の時に輪と裕司、優里奈と同じクラスになりそこで二人と仲良くなった。
特に裕司とはウマが合いよく話していた。よく二人で輪に対して悪戯したりもした。なんだかんだで裕司とはウマが合ったんだよね。
逆に優里奈は無口であることが多かったのであまり最初の方は話せずにいた。
だけど、優里奈が部活のことで悩んでいた時期があり、そんな時に私とバッタリ会い話すようになってからは話すことが増えた。…相変わらず何考えてるか分かんない時があるけど。
真由里は…よく分からない。でも、もう大切な人になってる。私たちにとってかけがえのない存在に。
輪は私の全て。私にたくさんのものをくれた人。世界で一番好きな人。例えどんなことになろうとも絶対に輪だけは不幸にしない、幸せにする。私の全てをあげる。私は輪が幸せならそれでいい。他には何もらない。輪は常に私の中心にいて皆の中心で私の心の拠り所で私の支えで…輪が悲しむ姿は見たくないな。だから、輪は幸せでいて欲しい。
「海廻~。おーーーい。海廻」
突然声がした。声の主は裕司だった。
「何ぼーっとしてんだよ。俺の話聞いてたか?」
「もちろん聞いてたよ。裕司が前の体育祭で輪に踏み台にされた事に対して少し怒ってたんでしょ?」
「少しじゃねーよ!少しじゃ!でもまぁ、海廻に言ったら何かどーでもよくなったわ」
なんか開き直ったみたい。良かった。
「お、間もなく着くっぽいな!」
裕司が言ってくる。
「そうだね!楽しみだね!ニューヨーク!」
私は胸を高鳴らせ、窓の景色を見ていた。
さてさて、私は一人ですか。なにやら、輪と優里奈、海廻と裕司は楽しそうに話していますね。
私も混ざりたい。まぁ、そんなこと言っても仕方無いですけど。この町に来て、色々ありましたけど楽しかったですね。
皆優しかった。海廻は元気で明るくて破天荒な所もあるけど皆を明るくしてくれる…そんな人です。
優里奈は無口ですけど色々気を使ってくれたり、さりげなく皆を陰で支えてくれている。私の主観だと彼女が私たちの中で一番女の子らしいと思います。
裕司は最初は軽薄な人で、ムードメーカーだと思っていました。確かにその面もあるのですが彼は誰よりも周りを見ていて「この世界のこと」に気づいていた。人は見かけで判断できないと思い知らされた人でもあります。
輪は私にとっては大切な人。輪は多分覚えていないと思いますけど私と輪は五年前に会ったことがあるのです。
その時の私はとても臆病で学校でも人と輪と出会うまで話したことがありませんでした。
…少しだけあの時のことを振り返って見ましょうか…
今から五年前のある日のこと当時の私は引っ込み思案な性格で友達が出来ずにいた。幼稚園、小学校の六年生までずっと友達が出来ずにいた。
小学五年生の時私は陰湿ないじめを受けていた。理由は単純で私はクラスの男子から人気があり、それに嫉妬していたのです。
バケツのトラップが仕掛けられていたり、机に落書きされたり、ひそひそと私の悪口を聞こえるように言ったりと例を挙げればキリがない。
そんな陰湿ないじめを受けていたある日のこと私は公園に呼び出されました。
そこには四人くらいの名前も知らない女の子がいました。…もっともクラスの人ということは覚えています。
「あなた、うっとうしいしいのよ!そんなにかわいこぶって!あたしのすきな山田君があなたのことがすきっていって…あなたがじゃまなんだよ!」
四人とも似たような理由でいじめてたらしい。今思えばしょうもない理由だった。
石を投げつけられたり、水をかけられたり、悪口を言われてさんざん罵られたり、ひどいものだった。
そんな時に彼は現れた。
「なにやってんだよ!やめろよ!かわいそうだろ!」
「彼」はそう言ってきた。
「あなたには関係ないでしょ?」
「関係なくない!おれと同じくらいのこがいじめられてるんだ。だから、関係なくない!」
そういって「彼」は彼女達を追い払った。
「だいじょうぶ?」
「うん…大丈夫」
「いやならいやって言わなきゃ。あの子たちも君が堂々としてればいじめようとはおもわないよ!」
「でも、あたし、よわいから…」
その時の私は心が折れそうになっていた。そのとき彼はー
「弱い人なんていないよ。人は皆それぞれいいところとわるいところがあって、君にもそういうのはあると思う」
「でも、私、怖くて…」
「何がそんなにこわいのかよく分からないけどこわいって思うってことはそれだけ色々考えてるってことだよね。それって俺はすごいと思うよ」
「彼」は小学生とは思えないようなことを言ってきた。「彼」の気持ちは素直に嬉しかった。でもー
「駄目なの。勇気がでないの。他人と話すのが怖いの。私なんかが人と関わってその人が不幸になったらどうしようって」
「そんなことないよ。君のせいで不幸になるってことは絶対ないよ!だってこんなにかわいいのに」
「でも…」
「そんなにこわいんだったらしばらく俺の家にきてよ。一緒にあそぼ!あ、そうだ!自己紹介がまだだった。俺は黒羽輪。君は?」
「白姫真由里」
「変わった名前だね。よろしく!」
それから私は輪とよく遊ぶようになりました。そして輪は私に希望の言葉を贈ってくれました。
「もし、怖くなったら俺を思い出して。俺がついてるから。俺と君はずっと友達だよ!」
私はその言葉に救われました。そして、私の性格は明るくなり、いじめる人はいなくなりました。
ですが、私は家の事情で引っ越すことになったのです。輪にもそのことを伝えると輪は悲しそうな顔をしましたが最後は元気に「また、いつか会おう!」と言ってくれました。
私が町から出ていく時も手を振って見送ってくれました。
それから、五年経ち今に至ります。
輪はそのことを覚えていないでしょう。覚えていたのなら私に気づくはずですから。
「覚えてくれて無かったのは少し残念でしたけど、これから楽しくなると思えば安いものです」
そう、「この世界」はそういう世界なのだから。
「そろそろ着くみたいですね」
アメリカのニューヨークに着いたのでした。
「はぁーーー。やっっっと着いた」
裕司が疲れ切ったように呟いた。
「それにしてもやっぱ日本とは全然違うな」
俺はそう呟いた。なんというか…雰囲気が全く違うのだ。
「うわー!当たり前だけど黒人さんや白人さんがたくさんいるね~」
海廻はとても元気そうにそう言った。
「久々のニューヨーク。変わってないわね」
優里奈が懐かしそうに呟いた。そういえば、何度か海外に行く機会があったんだっけ。ニューヨークにも行ったことがあるようだ。
「私は外国には行ったことが無いのでとても新鮮です」
真由里が目をキラキラさせながら呟いた。
俺たちがそれぞれ呟いていると先生が二列で並ぶようにとクラス全員に行った。
俺たちが着いたのは午後七時かなり遅い時間だった。
予定通り俺たちは近くのホテルに向かったのだった。
「いや~、まさか俺たち五人が全員同じ部屋とはな!」
裕司が嬉しそうにそう言った。
「前の海の時とまったく同じで変わり映えしないな。まぁ、全く話したことが無い人と同じになるよりはマシだけど」
俺は裕司に対して率直な感想を述べた。
「結局いつも道理ね。まぁ、悪くないんじゃない?」
優里奈が適当な感じで言ってくる。
「そうですね。むしろ、海外にいるわけですから友達同士同じ方がいいですよ」
真由里が冷静に言ってくる。
「ねぇねぇ!そろそろ夕飯の準備が出来るみたいだから速くいこ!」
海廻が焦らすように言ってくる。
「そうだな。行くか」
俺がそう言うと皆で食堂に行ったのだった。
やはりというべきか…日本の料理とは全く別物だった。
西洋風の料理がたくさん並んでいた。
今回の夕食はバイキングで好きな食べ物を勝手にとって食べるというものだった。
海廻や裕司は一心不乱に飯にかぶりついていた。…案の定二人とも食べ過ぎて眼を回していた。
「海廻、お前は仮にも女子なんだからちゃんと行儀よく食えよ…」
俺が海廻に呆れるように言う。
「別にいいじゃん!美味しいんだもん!」
海廻が開き直るように俺に言ってきた。
「あ~~~~~~。俺、この修学旅行に入ってから気持ち悪くばっかりなってる気がする」
「いや、飛行機のことはともかく今のは完全に自業自得だろ…」
俺が吐き捨てるように言う。一方、優里奈と真由里はお互い黙って食事をしている。…海廻にもこれ位落ち着きがあったらいいのに…
「俺はもう腹いっぱいだししばらくはぐるぐる回ってるか。
そうして俺は適当に時間が来るまで適当にぶらついていた。
私は真由里と二人でいた。
「色々な食物がありますね」
真由里はそう呟いた。
私は真由里に聞きたいことがあったのだ。今がその時だ。
「真由里と裕司は最近よく一緒にいることが多いわね。今も裕司を見てることが多いし。あなたたち二人はどういう関係なの?見たところ付き合ってる風には見えないわ。どちらかというとお互いを「監視し合ってる」みたい」
私は真由里に質問をした。
「あなたの思い違いですよ。私と裕司がそんな険悪な関係に見えますか?」
真由里はいつも通りの表情で言った。
「なら、何で定期的に裕司の家に行ってるの?」
「……」
真由里が無言だった。だが、私はそのまま続けた。
「あなたたちがおかしいと思った時から私なりに色々調べたの。あなたたちを尾行したりもした。そしてあなたは裕司の家に頻繁に訪れるようになっていた」
「証拠が無いですよ。もしかしたら私じゃないかも」
「確かに証拠は無いけど、あなたが奇妙なことを口にしたのは覚えてるわ」
そして私は続けた。
「「楽園」って何?裕司の言ってた本来の世界とは違うってどういうこと?」
真由里は表情を変え私に脅しをかけるようにこう言ってきた。
「これ以上深入りはしない方が身のためですよ」
「やっぱり何かあるのね」
私がそういうと真由里が「もう話すことはありません」と言いそのまま去っていった。
俺はあることを思い出していた。それは三か月前のニュースだ。そのニュースの内容はアメリカがある条約を持ち出してきてその内容は覚えていないが全世界がその条約を受け入れたもちろん日本も…早い話世界は一つになったのだ。
「世界は一つになって争いも無くなった。平和な世界になったんだな。実感ないけど」
世界の平和、自分にとっての揺り籠、平穏、これらは誰もが望んでることだと思う。それが叶ったんだ、これ以上嬉しいことはないだろう。
「まぁ、明日になったら色々な所を回るし今はそんなに深く考える必要はないか」
そういって俺は眠りについた。
「またここか…」
俺はまたこの白い世界に来ていた。だが、気のせいだろうか?この白い世界の色が少し変化していた気がした。
「前より青くなってるような?」
そして、周りには花が咲いていた。咲いていた花は色々あった。クローバー、カランコエ、コチョウランなどの花が咲いていた。いずれも、幸福に由来する花だ。
「それにしても、綺麗だな」
俺はそう呟いた。するとー
【ここはあなたと私の世界。あなたの心が満たされればこの世界は輝く】
「声」がまた現れた。
「どういうことだ?」
【あなたは今幸せであるということ】
「つまり、この世界は俺の心を表してるってことか?」
【それは少し違う…これはあなただけでは無く私の心も表している】
「意味が分かんねぇ」
【分からなくてもいい。ねぇ、今が幸せならそれでいいのではないか?あなたは今幸せなんでしょう?】
「声」が問いかけてくる。俺は正直に答えた。
「ああ、幸せだよ。これ以上ないくらい。この幸せが永遠に続けばいいと思ってるよ!でも、俺はどうしても『何か』が引っかかるんだよ」
【それは葬式の出来事のこと?確かにあの子たちの言動にはまったく問題が無かったとは言わない。けれど、前に進もうとしている人たちを否定するのはどうかと思うけど?】
「違う!そんなんじゃないんだ!」
俺は否定したものの「声」の言う通りだと心の中で思っていた。「声」は俺の心の中を見透かしているようですぐに「声」はこう言ってきた。
【人は幸せを求める。自分の幸せ、家族の幸せ、友達の幸せ、世界の幸せ、誰もが求める。そして、あなたのいる世界は皆幸せのはず。世界は統一され、あなたの穏やかな平穏は続いている。周りの皆は前を向いて歩いている。幸せのはず。だって私が与えてるから。あなたは何がそんなに不満なの?】
「分からない…そうだ、何を言ってんだよ俺は幸せならいいじゃないか。バカだなぁ俺は」
そうだ、よくよく考えてみれば当たり前じゃないか。「声」が言ってることは全て正しいことなんだ。
【そう、それでいい。それでいいんだよ、輪!それが正解なの。人は幸せでないと生きてはいけない。幸福こそが生きる糧になる。私があなたに幸せを与える。与えるから】
「声」は形を変えて人の姿になっていった。だが、顔が見えない。だが、これだけは分かる。この子は海のような白くそして「全てを包み込んでくれる優しい少女」だと…
「そうか…俺はこの世界で幸せに暮らすだけでよかったんだ」
俺がそういうと少女は俺を抱きしめて「ずっと、一緒にいようね」と言った。
声は普通の少女の声だった。聞き覚えのある声だが思い出せない。
だが、今の俺にとってはそんなことはどうでも良かった。
「輪は今幸せだよね?」
少女は俺に聞いてきた。
「うん、幸せ」
俺はそう答えた。すると少女はさらに続けた。
「この幸せが永遠に続けばいいよね?」
「うん。永遠に続いて欲しい」
「なら、私の言うことを聞いてくれる?そうすれば永遠に幸せになれるよ」
「うん、聞く。」
俺は少女の甘い声に心を奪われなにもかかかかかかかかかか…
「じゃあ、このままずっと一緒にいて。永遠の時を私と過ごすんだから。」
おれはこえをしょうじょのこえをきくたびにここちよくよくよくよよくなっていたたいて?たのでした。
「ああ。幸せ。しあわせ」
「よかった。輪は幸せなんだね。」
おれはもう…しあわせ~~~~
「ああ、気持ちいい。幸せ幸せ幸せ幸せ幸せブランコ乗りたい。幸せ幸せ幸せーーーーーーーーーー幸せーーーーーー~~~~~~~あ~あああああああ~~~あああ~~~1000引く893~~ががが~~~幸せ~」
「よしよし、いい子いい子。私も今、すっごく幸せだよ。」
輪は気持ち良さそうに寝ていた。少女は安心したように輪にこう言った。
「これはあなたが望んだこと…私はあなたの望みを叶えた」
少女はさらに続けた。
「これで、皆幸せになれる。嬉しいなぁ~」
俺は目が覚めた。何も思い出せなかった。けど、すごく気持ちがいい。
「俺は…」
「輪!お早う!」
海廻が元気よく挨拶をする。…相変わらず元気な奴だ。
「ああ、お早う。海廻」
俺は何気なく返事を返した。
「おはよう!輪、海廻」
「みなさん、おはようございます。」
「…おはよう」
どうやら、皆起きたようだ。
「よし、じゃあ、行くか」
俺が言うと皆部屋から出て行ったのであった。
今日の予定は基本的に八時までは自由行動だその後クラスでミーティングをして終わりだ。
「じゃあ、早速出発するか!」
裕司が元気そうに言った。すると、海廻も「おー!」といい、真由里と優里奈もノリノリだった。
「じゃあ、行こうぜ!」
俺が言うと皆、ニューヨークの街を歩きだしたのだった。
はい、【第6章】更新しました~。なんといいますか…本当はこの話で修学旅行を終わらせるつもりだったんですけどね~。長くなっちゃった(笑)物語自体はもう後半に差し掛かっているのですが…まだまだ続きそう…今回で輪の心に大きな変化がありましたね。果たして輪はどうなってしまうのやら。
今回は裕司をあまりにも雑に書いてしまいましたが、次の話はちゃんと出番あります!後、とうとう海廻と真由里視点の話を書けました。(実はもっと後に書く予定でした)まぁ、これからどんどんこの二人視点の話を書いていきたいと思います!
う~ん、さすがにもう「声」の正体バレてるよね…てか、もっと前からバレてるかも。一応伏線だけちりばめてバレないようにはしてたんだけどなぁ…
次も更新しますのでお楽しみに!それでは!




