【第5章】花言葉
夏休みが終わり2学期が始まった。次に待っている行事は体育祭。だが、その前に輪たちは思わぬ事態に遭遇することになる。
9月1日の朝が来た。俺は気だるげに起きて支度をした。
昨日の8月31日に夏祭りが行われた。俺と海廻と裕司、優里奈と真由里の5人で行ったのだ。
昨日はとても楽しかった。だが、昨日は俺たちの中に「何か」が起きた気がするのだ。その「何か」は分からないけど。
「それから…何か忘れてる気がするんだよな~。まぁ考えても仕方ないか。」
俺はそう言って身支度を済ませ家を出た。
始業式が終わり、俺はぼーっと窓を眺めていた。そんな時に…
「おはよう!輪!」と声がした。声の主はもちろん…
「海廻か。相変わらず元気だな。」
「輪は相変わらず無気力だね。」
海廻が言ってくる。うるせぇよ。余計なお世話だ。
「何を話してるのですか?」
声の主は真由里だった。常に敬語口調なので分かりやすい。
「真由里か。いや、大した話はしてねーよ。」
「何だ…二人の愛について語り合っていたかと思ったぜ。」
裕司が訳の分からんことを言ってくる。
「あほか…お前は」
「この馬鹿はいつもこんなんなんだからいちいち突っ込んだらキリがないわよ。」
優里奈が言ってきた。まぁ、その通りなんだけど…
「しっかしもう2学期か~。早いもんだな。」
裕司が呟いた。確かにもう9月だもんな~。というか今までで一番速く時が経ってる気がする。
「2学期も楽しくなるといいね!」
海廻が言い出す。その時にチャイムが鳴り響きホームルームが始まった。
ホームルームが終わり俺たちは今後の予定について話していた。
「まず二学期はどんな行事があったっけ?」
海廻が聞いてくる。すると裕司が答えた。
「まずは体育祭だろ?次に修学旅行だな。そんで、最後は…日比野高校クリスマスパーティーだ!」
「おおー!」
海廻が嬉し気に答えた。そう、二学期は主にこれら三つの行事があるのだ。
体育祭は一般的に行われる体育祭とほぼ同じだ。最後に棒倒しがあるくらいで他はぶっちゃけ走るくらいだ。元陸上部の俺や優里奈はもちろん俺たちは全員運動神経がいいので俺たちの組は優勝候補と言ってもさし支えないだろう。まぁ、結果はやってみないと分かんないんだけど…
次に修学旅行だ。大概の高校がそうであるように俺たちの高校も修学旅行がある。高校2年生が行く行事だ。確か今年の修学旅行の場所はアメリカのニューヨークで主に観光地を回ると聞いている。まぁ、あくまでも予定なので実際はどうなるかは分からない。
そして最後にクリスマスイベントだ。これは文化祭ほどではないものの大きな一大イベントの一つだ。主に行われるのはパレードだ。そしてその後自分たちが用意したプレゼントを交換するというのが一連の流れであるのだが…この時の服装が制服ではなく男子はタキシードで女子はパーティドレスで参加しなければならない。正直何でそんな服装で参加しなければならないのこ…正直タキシードとかまだ着たくない。年齢的にまだ早い気がするのだ。
「まぁ、まずは一か月後に行われる体育祭だな。まぁ、その前に中間テストがあると思うと面倒だけど。」
「テストの話はしないでおこうよー」
裕司の話を聞きテストに関して嫌そうにしていた海廻であったが…
「まぁ、テストは特に問題ないんじゃないかしら?私たちは皆そこそこ学力はあるんだし。というか海廻は私たちの中で一番学力高いじゃない」
普段は無口な優里奈がそう言った。そういえば優里奈の口数が少し増えた…気もしなくもない。
「それでもテストは嫌なんだよー」
海廻がだだをこねる。
「まぁ、その後は体育祭だと思えばちょっとはやる気が出るんじゃないのか?」
俺が言うと「おー」と無気力に海廻が答えた。そんなに嫌かテスト…
「そういえば勉強会はするのですか?」
真由里が聞いてきた。だが、
「今回は俺は無理だ。悪い。」
言い出したのは俺だ。「何で!?」と海廻は聞いてきた。俺はその理由を説明する。
「しばらくは家の用事があるんだよ。ほら…うちは葬儀屋だし。」
「そうか…なら仕方ねーな。」
「なら、輪抜きで勉強会ですね。」
真由里が言う。
「そうしてくれ。」
俺はそう答えて一足先に家に帰った。
俺は今日、10月18日。今回の葬儀はかなり大がかりだったので準備に1か月くらいかかったのだ。
葬儀をする人の名前を見ていた。今日葬儀をする人の名前は三代美代子。この人は身寄りのない子供を迎え入れる施設を個人経営していた人だそうだ。とても優しい人であったと聞いている。だが、俺は少し疑問に思っていることがある。
「三代美代子か。どっかで聞いたことのある名前なんだよな~。気のせいか?」
俺はそんな疑問を持ちつつ葬儀の準備を始めた。
そして迎えた葬儀の日。正直俺はこの仕事は好きではなかった。なぜならー
「死者を埋葬するってのはやっぱいい気分にはなれねーよ。当たり前のことだけどさ。」
そしてそう言っている内に葬儀が執り行われた。
念仏が聞こえてくる。施設の子たちがすすり泣いているのが分かる。
多くの人たちに囲まれて三代美代子は死んでいったのだ。
「皆に愛されていてとてもいい人だったんだろうな。」
俺が一人呟いた。
しばらくして葬儀は終了した。
だが、俺はこの後衝撃を受けることになる。
葬儀が終わり片付けをしていると施設の子供たちが話をしていた。今までの三代美代子の思い出話をしていたのだろう。それらしい内容が聞こえてきた。だがー
「今日は『楽しかった』なー」と言う声が聞こえた。
「何言ってんだあいつら…」
俺は一人でそう呟いた。葬儀は楽しいもんじゃないだろ…俺は会話の内容をさらに聞くことにした。
「三代先生も俺たちがこんなにも楽しんでくれたらきっと天国で喜んでくれてるよ。」
「今までの思い出を葬儀中に振り返ってみてやっぱり楽しかったな~って思った。三代先生がいなくても楽しくやっていこうって思えた。死んだ人のことなんかずるずる考えても仕方ないよ!これから頑張っていこう!」
俺はとてつもない怒りと悲しみが込み上げてきた。死んだ人なんか?なんだよその言い方は…大事な人が死んだら普通は悲しくなるだろう?少なくとも楽しいもんじゃないだろ?思い出を振り返って懐かしむのは分かる。だが、なんで過去のことを簡単に切り捨てられるんだよ。おかしいだろ?
「お前ら何言ってんだよ。」
俺は思わず子供たちに言い放った。相手はほとんどの人が中学生から俺と同じ高校生くらいの人たちだった。
「なにがです?」
一人の少女がそう言ったすると俺はー
「お前ら…何でそんなに楽しそうなんだよ…育ての親が死んだんだぞ。普通はもっと悲しむもんだろ。思い出を懐かしみ死者を尊ぶもんだろ?」
少なくとも俺は葬儀が終わった後に近親者が笑ってる姿を見たことがない。無理をして笑顔を作ってる人は何人か見たことがある。だが、この子供たちはそれすら感じさせない。本当に『心から楽しそう』だったのだ。
「悲しくは無いのか?」
俺が問う。するとー
「悲しくないに決まってるじゃないですか!だって三代先生は私たちに色んなことを教えてくれました。そして、僕たちに囲まれて死ぬべき時に死んだんです!これ以上の幸福がありますか?僕たちの役に立って死んだんです。僕たちはこんなにも幸せなんです。三代先生もさぞ喜んでいることでしょう!」
その言葉を聞き俺はこの高校二年生が始まって『初めて悲しい』と思った。
俺がおかしいのか?というかよくよく考えたらおかしいじゃないか?何で俺は今まで悲しい、辛い、苦しいとは思わなかった?
そうなるべき時は何度も直面してるだろ?例えば文化祭だ。よく振り返ってみたらあの文化祭は『スムーズに進み過ぎていた』揉め事も蟠りもなかった。
意見が食い違うことが『まったく』なかったのだ。それは明らかに異常だった。全く同じ人間なんて存在しないのだ。
趣味、思想、考え方、性格は人それぞれ違うのだ。逆にそれらが全く同じでなければここまでスムーズにことが運ぶことはないのだ。
皆が違う考えがありそれらをぶつけ合って作ったものが本当に価値があるものではないのか?
文化祭は確かに楽しかった。しかし、どこか『空っぽ』だった。
「それだけじゃない…今回のことも…」
そう、俺たちみんなはとある感情が欠落していたのだ。あるいは欠落し始めている。その感情とはー
「悲しみ、辛さそういった負の感情が欠落している?」
俺はそう呟いた。
ぼーっと考え事をしていた俺はふと気が付くと人は誰もいなくなっていた…
負の感情の欠落…そうとしか考えられない。
そういう感情が無いに越したことはない。幸せを求め続けるのが人間の本質なのだから…だがー
「本当にこれでいいのか?いや、幸せを求めるのが人間だろ?ならそれでいい…はずだ。」
俺は自問自答して呆然と立ち尽くしていた。
「はー。やっぱ輪がいないと暇だな~」
裕司が呟いた。
「真面目に勉強しなさい」
私はそういうと裕司がまただだをこねだした。しょうがない奴だ…
「私も輪がいないとやっぱ物足りないー」
「そうですね~」
海廻と真由里が言い出した。
そう、今私たちは私の家で輪抜きの勉強会をしていた。
今回で2回目の勉強会だ。1学期中間の時に最初にやったんだったな。あの時は楽しかった。
だが、1学期期末の時は勉強会は行われなかった。その理由は皆夏休みのことで準備があったり、文化祭の後片付けに追われやる暇がなかったのだ。
なので、今回で2回目ということになる。
因みに1学期中間の結果は海廻、裕司、真由里、私、輪の順で海廻に関しては学年1位だった。
1学期期末も同じような結果だった。
昔だったら友達の中でも私は順位が低かったら空也氏がるところだが、高校2年生が始まってからそういう感情が無くなっていた。楽しければそれでいいそう思い始めたのだ。
「あれ?おかしいわね?何で私はこんなにも悔しくないの?」
「優里奈~。何言ってるの?」
海廻が聞いてくる。
「ちょっと考え事」
私はそれだけ言って考え続けた。
私は本来、負けず嫌いな性格だ。なのに何で悔しくないのだろう。
「よくよく考えてみれば高校二年生になってから悲しいこととか辛いこととかが一切無かったわ…
これはおかしい、何かあるとしか思えない。
「輪がいないだけでここまで変わるものなんですね~。私たちにとって輪がどれほどの存在か実感されますね」
「まぁ、そう…だな」
真由里がそういうと裕司が同意した。正直私もそう思う。
「やっぱり輪を無理にでも連れていくべきだったと思うんだー」
「それはダメですよ、海廻。輪にも都合がありますからね。」
海廻と真由里が話していた。
私の中で一つ気になることがあった。それはー
「真由里と海廻は輪のことをどうおもっているの?」
「「え?」」
二人とも唖然としていたが…真由里が先に答えた。
「素敵な人だと思いますよ。」
それだけ答えた。随分たんたんとしてるなと思った。
そして海廻はー
「私は輪が好き。大好きだよ。この世界で一番好き」
そして海廻はさらに続けた。まるで呪文ように…
「私は輪の為ならなんだってする。恋人になりたいっていうならそれに答えるし私を求めてくれるならそれに応じるよ。もちろん他の女の子を選んでくれてもかまわない。私は輪の恋人でも、他人でも、友達でもなんでも構わないよ。だって、輪がそうしたいならそれでいいから。輪が幸せならそれが私の幸せ。他は何もいらないもん」
私は正直海廻に初めて恐怖を感じた。そう感じたの私だけではないようだった。
特に裕司はかなり動揺した顔をしていた。
「そんなに輪のことが好きなのね…海廻は。いっそ告白したら?」
「さっきも言ったでしょ?輪から来てくれないと嫌なの!」
海廻ははっきりと言った。海廻は分かりやすい性格をしているようで意外と分からない性格をしていると私は思う。
「もうそろそろ時間だし俺は帰るよ。じゃあな」
「私もそろそろ帰らせてもらいます。それでは」
「私はもう少し時間が経ったら帰るねー。」
それぞれが帰りの準備を始める。
そして、裕司と真由里は一緒に帰りしばらくして、海廻も帰って行った。
ここの所何かの違和感を取り払えずにいる。
「少し、私なりに調べてみるか…」
そう言って私は外に出て行った。
「いい加減しつこいな~。まだ監視を続ける気か?真由里」
裕司が答える。するとー
「当たり前です。あなたは何をするか分からないので。」
真由里がそう答える。裕司はとても気怠そうにこう言い放った。
「面倒な奴だな」
「なんとでも」
そうして裕司の家に着くと二人は別れ、真由里は自分の家に帰って行った。
俺は思い出そうとしていた、三代美代子のことを。
「けど、思い出せないんだよな~。絶対会ったことあると思うんだけどな~。」
そうこう考えているとピンポンの音がなった。家の前にいたのは海廻だった。
「なんで家に来たんだ?」
「今日で葬儀終わりでしょ?だから会おうと思って」
「そうか。」
海廻らしいなと思った。そして俺はなぜか海廻にとある質問したのだった。
「海廻はさ、三代美代子って知ってるか?」
海廻はかなり驚いた様子で俺に質問をし返してきた。
「三代先生を知ってるの?何で?」
「今日の葬儀の人だったからだよ。」
そう言うと海廻が悲しそうな顔をした。
「そうか、三代先生は亡くなってたんだね。」
「知ってる人なのか?」
俺が質問する。するとー
「高校に入ってから一人暮らしを始めたのと私が施設の人間ってことは輪も知ってるでしょ?三代先生は私の育ての親だよ」
「そう…だったのか。知らされてなかったんだな…」
「うん…会ってあげられなかった…悲しいよ…」
海廻はそう言って泣いた…
「少しは落ち着いたか?」
俺が尋ねるとすぐに海廻は「うん」と答えた。
「ありがとう。輪」
「いや、俺は何も…」
「そうじゃなくて…三代先生を埋葬してくれたんでしょ?」
「ああ。そっちか…」
俺は納得したようにしていたが、俺はあの人を救ったわけじゃない。だから、今俺はやりきれない気持ちになっていた。
「俺はあの人を助けたわけじゃない」
「ううん。輪は三代先生を救ってくれたよ。だからー私はもう大丈夫だよ」
「そうか…」
本当に大丈夫なのか心配だったがこれ以上こちらから詮索するのは野暮というものだ。
「またね、輪!」
「ああ、またな」
そう言って海廻は自分の家に帰って行った。
「三代美代子…か」
俺はやはり違和感を拭い切れずにいた。三代美代子が海廻の育ての親というのは分かったが…
「俺なりに調べてみるか…」
俺は今いる俺たちの町で何が起こっているのか調べることにした。
10月25日、今日は体育祭の日だ。体育祭で行われるのは、100メートル走、200メートル走、400メートル走、女子は1000メートル、男子は1500メートル走、800メートルリレーがそれぞれあり最後に棒倒しがある。
…見ての通り基本走るばっかだ。
「頑張ろうね!輪!」
「ああ、海廻もあんまはしゃぎすぎるなよ!」
「ふふふ、俺の見せ場があることを忘れちゃあいけないぜ二人とも」
「あなたはあたしらの中で一番足遅いでしょ。裕司」
「うるせーよ!いちいち余計な一言が多いんだよ!優里奈は!」
「ふふふ、燃えてきましたね。絶対に勝ちましょう!」
俺たち五人は皆気合が入っていた。
話している内に時間が来たので俺たちは運動場に行った。
開会式が終わり、海廻以外の俺たち四人は観客席に居た。海廻は100メートル走の出場者のため運動場の中にいた。
この体育祭はクラス対抗戦であり俺たちの学校は一学年四クラスあるため全クラス十二組で試合が行われる。この100メートル走は四人づつで走りタイムが速い順に得点が入る。要するに一発勝負だ。
とはいえ、海廻の運動神経はうちの学校ではトップクラスのため一位を獲ることは難しくないはずだ。
そろそろ始まる頃だ。因みに海廻は三組目だ。
一組目が走り出した。100メートルという短い距離なのですぐに決着が着いて行った。
二組目が終了し、いよいよ海廻がいる三組目が走る。
海廻はストレッチをしながら余裕そうな表情をしていた。
全員がスタートラインに立つ。
「位置に着いて、よーい」
パン!
ピストルの音が鳴った瞬間に皆走り出した。海廻は他の三人をあっさり抜き去りゴールした。
試合は終了し俺たちが大方予想していた通り海廻がダントツのトップだった。
「お疲れさま。海廻」
「ありがとう、輪」
「それにしても圧勝だったな」
「うん。勝てて良かったよ」
「次は200メートルか」
「裕司が出るんだよね」
「ああ。早く行こうぜ。」
「うん!裕司の応援しないと!」
そういって俺たちは裕司を応援しに行ったのだった。
裕司も決して運動神経が悪いわけでは無い。というかむしろいい方だ。だが、さすがにトップを獲るまでには至らなかった。
結果は四位だった。決して悪い結果ではなかった。だからなのか裕司はあまり落ち込んでいる様子ではなかった。
「惜しかったな」
「まーな。けど、俺にしてはよくやったよ」
裕司はそう言って満足げに笑った。そして、俺に妙なことを聞いてきた。
「なぁ、輪。何かあったか?」
「何だよ。急に」
「いや、何か最近のお前ぼーっとしてることが多い気がしてな?だから一応…」
「そうか。お前には分かっちまうんだな」
俺はそう答えた。悩んでいるのは本当のことだ。俺は裕司に打ち明けることにした。
「裕司、俺ー」
「ここにいたんですね。探しましたよ」
俺が裕司に悩みを話そうとしたとき後ろから声が聞こえた。声の主は真由里だった。
「そろそろ優里奈が出る1000メートル走が始まりますよ。行きましょう」
「っと、いっけね!速く行こうぜ!輪!」
「っ!ああ!」
結局、裕司に話せないまま次の競技が始まったのである。
あれから、着々と競技が終わっていった。(まぁ、ほぼ走ってるだけだけど)
優里奈が出場した1000メートル走はやはりというか優里奈が一位で終わった。
さらにその後に俺が出場した1500メートル走も俺が一位で終わった。
次に800メートルリレーが始まろうとしていた。
800メートルリレーのルールは四人でリレー出場し、一人200メートル走りバトンを渡しながら走るというよくあるルールだった。
因みに男女二人づつ出場するルールがあり、今回出るのは、俺、裕司、海廻、優里奈の四人だ。
真由里は応援席で気軽に「頑張ってくださーい」と言っていた。
「さて、やりますか」
「足引っ張んなよ。裕司」
「私たちなら大丈夫!頑張ろ!」
「…うん」
裕司、俺、海廻、優里奈が一言づつ言っていく。
「それでは、これより400メートルリレーを始めます」
俺たちはスタートラインに立ち審判のスタートの合図が出た瞬間走り出したのだった。
皆すでに一つの競技には出場していたためかかなりスピードは落ちていたがそれでも他を寄せ付けなかった。
初めは裕司が走っていたがこの時点で一位だった。
さらに次に優里奈にバトンが行き渡り、そのまま一位のまま海廻にバトンが渡っていた。
この時点で二位の選手より数メートル差が開いていた。
最後に俺が海廻のバトンを受け取った瞬間さらに差が開き完全勝利で800メートルリレーは幕を閉じた。
「楽勝だったな!」
裕司が威張りながら言っていたが、かなりしんどそうだった。てか、一番余裕が無さそうだった。
「今のところは私たちが一番ですね」
真由里が余裕そうに言っていた。
「だが、最終競技の棒倒しは一番入る得点が高い。場合によっては点数が抜かれる可能性が高い。気を引き締めていこうぜ!」
裕司が言う。割りと饒舌だな。
「まぁ、そうだな。泣いても笑ってもこれが最後だ。気合入れていこう!」
「おおー!」
そして俺たちはクラス全員参加の棒倒しに挑むのであった。
棒倒しはトーナメント戦で行われる。俺たちは最初の試合からで同じ二年生のクラスに当たったが特に苦戦することなく勝利した。
二回戦は一年生のクラスと当たったがこれまた難なく勝利、俺たちは決勝戦へと駒を進めたのであった。
決勝の相手は三年生のクラスで現在二位のクラスだ。ここでこのクラスに負けてしまうと逆転勝ちされてしまうのでなんとしても勝たなければならない。
「勝てば優勝…分かりやすくていいぜ」
裕司が呟く。
「これで本当に最後です。頑張って行きましょう」
真由里が締めの言葉を口にした。
そして、いよいよ決勝戦が始まった。
真由里と優里奈と後は生徒五人くらいで棒を守り、俺、海廻、裕司の三人と残りの生徒は敵陣に攻めていた。
今までならこのまま突っ込むだけで勝てていたが、決勝戦となるとそうもいかないらしい。
「やっばー。輪!私たちの棒の回りもう囲まれてるよ!」
海廻が俺に言ってくる。
主に作戦を指示しているのは攻撃側が俺、守備側が真由里である。
「三人くらい守りに回ってくれ!裕司と海廻を軸に攻め直す!」
俺が指示を出すと海廻は右側、裕司が左側にそれぞれ別々の場所を攻めた。
他の生徒も二人に続きついていき攻めようとしていた。
だが、それでも一歩足りない。これではジリ貧だ。
「ちょっとこのままじゃ埒が明かないな~。真由里か優里奈に手伝ってもらわないと厳しいな…」
私は優里奈と自陣を守ってました。だけどー
「このままでは厳しいですね…しかし、これ以上守りを手薄にすることも出来ませんし」
困ったことになった。だが優里奈がいきなり二人の相手チームを追い払った後私にこう言ってきました。
「多分、輪は私かあなたのどちらかを攻めに当てたいはず。だからあなたが行って」
「なぜ、そう言い切れるんですか?」
純粋に疑問だ。なぜ、輪がそう考えていると思っているのか。
「私が輪の今の状況ならそう考えるから。だから言って」
「答えになってませんよ」
「ならここで負ける?」
「…分かりました」
私はそう言って一人で走り出しました。全くあの人のことは分からないですね…
「そろそろ限界だな…だからと言ってわざわざ俺が守備側に言って呼ぶわけにもいかねーし」
状況はなんというか…結構ヤバい。
相手チームの守りが突破できない上にこっちの守備側は敵に囲まれていてもう詰み寸前だった。
「輪、どうする?」
裕司が尋ねる。
「……」
…何も浮かばない。ここまでか…そう思ったときー
「諦めるには速いですよ」
「真由里!ちょうどいいとこに!」
「…どうやら優里奈の言う通りだったみたいですね」
「どういうー」
「話は後です。どうすればいいですか?」
「そうだな!真由里は相手の守備陣を剥がしてくれ!海廻は相手をかく乱!裕司は残ってるメンバーを統率して突っ込め!」
「了解しました」
「分かったよ!」
「俺だけ命令の仕方おかしくね!?」
それぞれ返事をして敵陣に突っ込んで行った。
「マズい!あと少しで倒される!耐えてくれよ皆!」
守備側は優里奈に任せるしかない。
俺の指示道理に三人は動いていた。そしてとうとう裕司が王手をかけていた。だがー
「くっそー!!倒せねー!」
後一歩の所で倒せずにいた。だが、これでー
「終わりだあああああ!!」
俺が裕司ごと棒を倒して試合は終了した。
「り~~~~~ん。てめぇ…俺ごと押し込みやがって良いとこどりしやがって~~~!」
「勝ったんだからいいだろ?」
「よくねぇよ!最初から狙ってたな!?」
「そんな訳ねーだろ!?相手が思ったより手強かったんだよ」
結果は俺たちのクラスが優勝で終わりクラスの皆は大喜びしていた。…今俺に文句を言ってる奴を除けば…
「やったね輪!皆!」
海廻が喜びながら俺に言ってきた。
「一時はどうなるかと思いましたがね」
真由里が疲れ切った声で言ってきた。
「そういえば、何で真由里はあの時俺たちのとこに来てくれたんだ?」
俺が質問する。するとー
「優里奈に言われたからですよ。輪が自分なら同じことを考えたはずだって」
「そうか、サンキューな。優里奈」
「…うん」
俺が礼を言うと優里奈はうなずいたのだった。
こうして、俺たちの体育祭は幕を閉じたのであった。
「はー、疲れた。今日はもう寝よ」
マジで疲れた。あの後はクラスで優勝を喜び合っていたのだがすぐに疲れが来たのでホームルームが終わった後、皆すぐに帰って行った。特に俺たち五人はこの体育祭の主力メンバーだったので特に疲れていた。
「あの後は皆疲れすぎてなんも話さなかったなー」
俺はそういうとふと今起きている事を思い出した。
今、この街ではいや、もしかしたら世界中かもしれない。何かが起きている。
このまま、平穏のままで…幸せな毎日を過ごしたい。けど、今起きている『異常』な事態に目を背けることはどうしても出来なかった。
もしかしたら、今起きている事がきっかけで俺たちの幸せがどこか遠くに行ってしまう気がしたからだ。
考えすぎかもしれないが俺はどうしてもそう思わずにはいられない。
そして俺はもう一つ引っかかっていることがある。
「何で俺は記憶の一部が抜け落ちてるんだろう?」
そう言いながら記憶をたどる。すると、少しだけふと思い出したことがある。それはー
「何で今まで思い出せなかったんだ?俺は三代先生に会ったことがある。だけど何でだ?会った時のことが思い出せない」
そう、俺は三代先生に会っている。会っているはずなのだ。だけど『何時、何処で会ったのか』が思い出せない。
どうやら調べなければならないことが山ほどあるようだ。そして、ここからは俺の感だけどこれら全てのことは一つに繋がっているーそんな気がするのだ。
だが、今はもう疲れたので俺は眠りについた。
【記憶をたどっては駄目。あなたは何も知る必要は無いんだよ】
声が俺にそう言ってくる。
俺はいつもの夢の中にいた。だが、今回の夢はただ、白いだけの世界ではなかった。
花だ、地面に花が咲いていた。咲いている花は『ゴボウ』だった。
確かこの花の花言葉は「私をいじめないで」だっけ?
「何で思い出しちゃいけないんだ?俺は何も知らない自分が嫌なんだよ!お前には分かるか?目が覚めたら何も分からなくなっている事への恐怖を!俺は絶対記憶を取り戻す!!お前の正体も必ず暴く!」
【それ以上はやめて。私をあなた自身を「いじめないで」】
「どういう意味だ?」
【警告はここまで。どうしても私のことを知りたければそうしなさい】
「待て!」
声は消えた。そして、俺の意識もそこで途切れた。
【第5章】花言葉を投稿しました!はい、ぶっちゃけこのサブタイはタイトル詐欺(笑)花のことなんか最後しか出てこないし。これからは楽しいだけの日常では無くなるとか言っといてそんなことは無かった…でも、話は動いてますし、楽しいだけの日常では無くなってきてはいる…はず。ですが、次の話は結構暗い内容になる予定です。まぁ、予想はつくと思いますが次は修学旅行の話を書きます。後、これからの話は花言葉が結構重要になったりならなかったりします。(どっちだよ…)まぁ、今回は話そんなに動かなかったですけど終わりには着々と近づいていますのでどうか結末をお楽しみに。それではまた!




