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エデンの鳥かご  作者: チャッピー
5/12

【第4章】最後の日常

 ついに迎えた夏祭り。胸を躍らせる輪たちだが、ある人物がこの世界に違和感を持ち始める。そして、この夏祭りを境に徐々に人間関係も変化していく。

 俺、黒羽輪は夏の暑さに干からびていた。

 現在は8月の中旬…正確に言えば8月15日の午後1時だ。

「さて、今日は暇だな。ちょっと勉強でもするか。」

 そうして、俺は黙々と勉強をした。勉強している最中にあの時の『夢』について思い出していた。

「あの時の夢はなんだったんだろうなー。って考えても仕方ないか。」

 俺はそう言いながらもあの『夢』のことから頭が離れずにいた。

 声の主は誰なのか?目的は?あの声が口にした幸せとは?楽園とは?何もかもがわからない。

 今の俺はとても幸せだ。皆がいる、海廻がいる、真由里がいる、優里奈がいる、裕司がいる、楽しいことだらけ、けどなぜだろう?その楽しいことだらけな今がどこか違和感を感じるのだ。

 しばらくして、夜がやってきて俺はそのまま自分のベットで眠っていた。



 8月29日夏祭り前日俺、神山裕司は夏祭りが行われる俺たちの住む炎天町の隣町の桃源町を下見を一人でしていた。俺は可能な範囲ならなるべく下見をするようにしている。だが、今回はー

「ただ単に下見に来ただけじゃないんだよなー。気になることがあったからそれもついでに調べねーと。」

 そう、去年の8月31日の記憶が綺麗にぬけ落ちてた。俺はそのことに違和感があった。後、もう一つ、俺のとある感情がまったく「消えて」いた。上手くは言えねーけど負の感情がまったく感じなくなっていたんだ。

 辛いことや悲しいことを感じなくなるのは悪いことではないはずだ。だが、それが俺にとってはとてつもなく違和感があった。

 例えば文化祭の時だ。俺たち実行委員はとてつもなく忙しかった。ストレスが溜まるようなことが山のようにあった。なのに何故だろうそれを苦だと思ったことは準備期間中まったくと言っていいほどなかった。揉め事や自分たちの意見のぶつかり合いもこういう大きな行事であればあるほどあるはずだ。少なくとも俺の経験上ではそうだ。なのに今回の文化祭はどうだ。それらのことがまったくなく、スムーズすぎるほど事が運び、そして文化祭は何の「問題も無く」終わった。これは、明らかにおかしい。大きなイベントは何かしらの不備や問題は起こる。それをお客さんや参加者などに悟らせないようにすることは可能だ。だが、主催者側がトラブルを0にすることは事実上不可能なのだ。ありえないことが起こっている今は明らかに異常だ。俺の思い過ごしいであればいいんだけど。

「まぁ、今はすごく楽しいからこのままなのが一番いいけどーそう上手くいくわけがない。」

だから、俺は密かに色々調べていた。そして、ふと頭によぎったのだ。


         去年の夏祭りの記憶が「まったく無い」とー


 そしてそれは俺だけじゃなかった、輪を始め、全員が記憶が無かったのだ。

「とはいえ分かったのはこれくらいで他は調べてもまったく分からなかったけどな。てか、情報少なすぎて調べようもなかったし。だから、その手掛かりを掴むためにここに来たわけだが…さて、手掛かりは見つかるかね?」

 俺の感だけどこの夏祭りは何かがある。そんな気がした。

 俺は調査を始めた。色々と探したがそれらしいものはないな。

 こんな道あったっけ?

 俺が今いるのは桃源山の立ち入り禁止区域だ。しかし、子供の頃輪と一緒にこの場所に行くことが多かったので地形は大体把握している。にも関わらず知らない道があったのだ。

 違和感に気づき俺はその道に行くするとー

 あれ?こんな墓標あったっけ?

「えーっと、名前は『園花海廻』?…なんだよこれ」

 そう、そこに書いてあった名前が俺の友達の園花海廻と同じ名前だった。

「偶然か?いや、園花海廻なんて名前同姓同名で存在するなんて普通あるか?」

 俺は考える。するとー


           「裕司ですか?」


 後ろで声がした。振り向くとそこにいたのは真由里だった。

「なんだ、真由里か。脅かすなよ。」

「私は、脅かしてなんてないですよ。あなたが考え事をしていたからではないですか?」

「考え事をしてるって分かってるんならいきなり話しかけるなよ。」

「それは、ごめんなさい。まさか、あなたが本当に考え事をしてるとは思わなかったもので。珍しいですね。」

「俺が、考え事をしてることがそんなに珍しいかよ!」

 たまらず俺は叫ぶ。考え事くらい俺もするっての。どんだけアイツにとっての俺はアホなんだよ…まぁ、普段の俺の行動しか見てないから仕方ないか。

「ええ。どうやらあなたは私が思っている以上に思慮深いようです。少しあなたを侮っていましたよ。」

 真由里がそう言う。何か言い回しが妙だな。てか、おかしいぞ。

「何でお前はこんなところにいるんだ?」

「私もあなたと同じですよ。明日が楽しみで下見に来ただけですよ。」

「俺とお前は2時間前に日比谷高校ですれ違った。そしてお前は俺とは逆方向に行ったはずだ。なのに何でお前はここにいるんだ?ここからは歩きで2時間はかかる。それだけじゃないお前は転校して3か月くらいしかたってないから隣町の地形を把握してるとも思えない。色々イベントも多くてバタバタしてたしな。しかも俺は場所をお前に伝えてないぞ?輪たちは行ったことがあるから場所は言うまでもなかったしお前もどうせついていくだろうから場所は教えてない。俺はお前に直前で伝えるつもりだった。」

「私も興味があったので家に帰ったあとバスを利用して行ったんですよ。バスを使えば1時間で行けますし。それに夏祭りの詳しいことは輪たちに聞いて知っていましたし下調べをしていました。夏休み中は時間もありましたし。」

 そう、真由里は答えた。確かにここまでは辻褄が合う。だが最大の問題はー

「ここは立ち入り禁止区域だ。普通は入れないしそもそも大概の人は入ろうとはしない。特にここは暗いしかなり危険な場所だ。さらにいうとここら一帯はかなり入り組んだ地形をしていて長年ここで道を把握している奴じゃないと大概迷う。この時間に人はほとんど来ない。少なくとも俺はこの場所でこの時間帯で人とすれ違ったことはない。夏祭りの時とかは別だけどな。考えられるとしたらお前…ずっと俺をつけてたな?」

「…だとしてあなたは私をどうしたいんですか?」

「何で俺をつけたんだ?声かけて一緒に行くこともできたはずだ。」

「あなたは、普段の行動とは裏腹に感がよく鋭いですね。あなたのことを甘く見すぎていましたよ。」

「質問に答えろ。」

「あなたが2時間前に下見に行くと言っていたので様子を見ようと思っていたんですよ。もしかしたら『真実』がバレてしまうかもしれないと思ったから。でも、予想以上でした。あなたは下手をすれば『真実』にたどり着いてしまう。だからーあなたを消しに来たんですよ。」

「なっ、何を言ってるんだお前は?冗談だろ?」

「大丈夫。何もあなたを殺そうというわけじゃないです。少し記憶を消すだけです。」

「記憶を消すだと?そんなこと出来る訳…と言いたいとこだが嘘じゃないようだな。」

 まずいな…やっとなんか分かると思ったのに。ここは切り抜かないとな。よし、何とか口車に乗せよう。

「逃げ切れそうもないみたいだな。けど、いいのか?俺の記憶を消しても」

「?どういうことですか?」

 真由里が聞き返す。よし、いい流れだ。

「俺がこの時の記憶が抜け落ちることになってそのことが輪たちに知られたらさすがに輪たちも違和感を感じるようになる。輪の性格上必ず今起きてることを調べようとするだろう。勿論俺もな。もしかしたら、俺より先に謎解きが終わっちまうかもしれないぜ?そうなったらやばいんじゃねーか?」

「なるほど、だから手を引けと?」

「ああ、そのかわり今日の出来事は誰にも公言しない。お前のことも言わない。勿論輪たちにも。もし俺が約束を破ったらその時は俺の記憶を消すといい。」

 真由里はしばらく無言のままだった。すると、

「いいでしょう。確かにあなたが言うことも一理ありますしこの場は収めましょう。ですが、約束は守ってもらいます。それから、私はあなたを監視することにします。これ以上余計な詮索はされたくないので」

「分かったよ。好きにしろ」

 俺はそう返事をする。なんとか切り抜けたが…まずいことになった。これ以上調査することが困難になてしまった。まぁ、それはおいおい考えるか。

「まさか、あなたがここまで切れ者だとは思いませんでした。人は見かけによらないものですね。」

「そんな単純な世界だったら誰も苦労はしねーよ。」

「それもそうですね。あなたは思っていた以上に面白い人ですね。少し見直しましたよ。」

「そりゃどーも。」

 さっきまでのやり取りが嘘のようだ。なんだかんだで俺と真由里は『友達』なんだなと思った。

 その後、俺は真由里と雑談をしながらこの街を案内した。本当にさっきまでのやり取りがうそのようだった。

 真由里と話をしていると、真由里は突然質問をしてきた。

「裕司、一つ聞きたいのですが昔の輪はどんな人だったんですか?」

「今とあんま変わんねーよ。バカで不愛想でそのくせなぜか気になって、いつも俺の中心でいた。海廻や優里奈、お前とつるむようになってからもあいつはいつも中心にいて…なんか不思議な奴だったよ。昔からな。」

「じゃあ、海廻や優里奈はどう思ってるんですか?」

 また聞いてきた。まぁ、隠すほどのことでもねーし俺は話した。

「優里奈はなんつーか、輪とウマがホント合うんだなって感じ。無口だからあんま何考えてるかは最初は分かんなかったけどよく他人を見ててすげー、いい奴。輪と少し似てるとこあるしなー。不愛想なとことか。海廻はそうだな。なぜか一緒にいると元気が出るんだよなー。俺と普段のノリと似てるからかなー。あと輪のことが本当に好きなんだなーって思う。輪は鈍感だから気づいてねーんだろうけど。」

 俺がそう答えると真由里はこう返した。

「やっぱりあなたはすごく人をみていますね。それでは、最後の質問がしたいんですけど…なぜあなたはここを調べようとしたんですか?後、いつから違和感を感じたんですか?」

 真由里は聞いてきた。質問が多いな…だが、俺は正直に答えた。

「今、俺たちに何が起こっているか知る必要があったからだ。」

「それが例え、悪いことじゃなかったとしても?」

「そうだ、お前も多分そうだろ。自分の知らないことを調べようと思うだろ?少なくとも俺は得体のしれないものに身を預けることはできねーよ。後、違和感を感じたのは文化祭の時だ。あの時の俺たちは異常だった。なんせストレスは溜まらなかったし、喧嘩も問題もなくことが進んだからな。」

「それでいいじゃないですか。なんでそれが違和感になるんですか?」

「本来起こることが起きなかったら違和感があると思うやつはいる。俺みたいにな。後、俺はこうも思うんだ。何もトラブルや問題が起こらなければそれに越したことはない。けど、本当にそれでいいのか?そう考えちまうんだよ。上手く言えないけど。」

「変わり者ですね、あなたは。」

「よく言われる。」

 話をしている内にどうやら真由里の家の近くまで来ていたようだ。

「では私はこれで、さようなら。色々と今日は楽しかったです。」

「俺はハラハラした。けどまぁ、お前と二人でゆっくり話したこと無かったからいい機会だったよ。じゃあな」

 そう言って別れる。するとその直前に真由里がこう言ってきた。

「約束、忘れないでくださいね。私たちは友達ではありますがお互いを監視し合っていることもお忘れなく。」

「…分かってるよ。」

 こうして俺の波乱万丈な夜は終わった。


 8月31日夏祭り当日ー

「さて、行くか。皆を待たせるのもあれだし」

 黒羽輪は夏祭りの準備を終え集合場所へ向かった。

「お待たせー。」

 輪は一番最後の到着だった。

 ほかの四人は全員来ていた。皆浴衣姿だった。輪は黒色、海廻は水色、裕司は緑色、優里奈は桃色、真由里は白色の浴衣を着ていた。

 集合場所は桃源山の麓で夕方5時に集合予定だった。輪が着いたのは集合10分前だった。いうほど遅れてはいない。だが、

「輪!遅いよー!結構待ったんだから!」

 海廻が文句を言ってくる。

「うるせーな。さっさと行くぞ!」

 そうして、輪、海廻、裕司、優里奈、真由里の5人はお祭りに行った。

 そしてーこの日を境に物語は急速に加速を始めるのであった。


 私は、裕司と共に行動していた。彼は監視を続けなければならないから。

「そんな警戒しなくてもいいだろ?今日は祭りを楽しむだけだぜ?だから真由里は俺を監視する必要は今はないぜ?」

「一応念のためです。あなたはどう私の裏を掻いてくるか分からないので」

「嫌われたもんだな俺も。」

 本当に何をしてくるか分からない。私はこの『楽園』を守らなきゃならない。

 そうーこれは私の意思なんだから!

「一つ聞きたい。お前は何か知ってるんだろ?教えてくれないか?少しでいいからさ。」

 冗談じゃない。誰がー

「教えるかって思ってんだろ?一昨日はさんざん俺のこと聞いてたくせにそりゃないぜ?」

 …どうもこの男とはやりずらい。まぁ、調査は絶対にさせないから少しくらいならー

「ここは『楽園の世界』。それだけは教えておきます。」

「そっか。要するにこの世界は俺たちが本来住んでる世界とは違うってわけか。それだけ分かればいいや。どうせ抜け出す方法も教えてくれねーんだろうし。そもそも、お前が抜け道を知ってるかすらわかんねーしな。」

「話が分かって助かります。言っておきますが話はここまでです。後このことは…」

「分かってる。誰にも言わねーよ。」

「怪しい素振りを少しでも見せたら…その時は覚悟しておいてくださいね?」

「おーおー、怖えーな。分かってるよ。」


 私と裕司は話を終え、金魚すくいをしていた。…金魚が獲れない。なんで?裕司はたくさん獲ってるのに…

「真由里は金魚すくい下手だな。こういうのはコツがあるんだよっと。」

 裕司はそう言って、軽々と金魚をすくう。なんなんだこいつは!

「ほらよ、可哀想だから1匹やる。」

 そう言ってニヤっと笑い私に金魚を渡してくる。少し悔しかった。

 次にたこ焼きを食べに行った。すごく美味しいが熱い。

「猫舌だなお前。てか、あれか?もしかしてたこ焼きは初めてか?」

 バカにするように聞いてきた。正直腹が立つ。

「初めてですよ。祭りにも行ったことはありませんし。」

「そっか。じゃあ、今のこの思い出を大事にしないとな。」

 そう言って裕司は別の場所に回った。私は裕司についていくのだった。心のどこかで私はこの瞬間を楽しんでたのかもしれない-


 「さてっと、どこから回ろうかねー。」

 なんか裕司と真由里は2人でどっか行っちまったし優里奈も一人でどっか行きやがった。

 つまり、ここにいるのは俺と海廻だけということになる。

「輪、始めはどこに行こうか?」

 海廻が尋ねてくる。ここで、ぼーっとしてるのもあれだし、

「2人で回るか。」

「うん!」

 そう言って俺と海廻は2人でこの屋台の山に回ることにした。

 まず初めにたい焼きを食べた。あんこ以外も色々味が選択できるようで海廻はチョコ味を選んでいた。俺は無難にあんこ。

「チョコ味美味しーー!」

 海廻はそう答えた。俺のたい焼きも中々の味で美味しかった。

 次にカステラを食べに行った。

「うーん。イマイチ。」

 俺はそう言い放った。

「えー、美味しいのになんでー?」

「ふっくら感が足りないし甘さも微妙だ。」

「手厳しいよ、輪。」

「事実なんだから仕方ないだろ?」

 そう話をしながら次の屋台に行った。

 その後、フランクフルト、たこ焼き、かき氷などの屋台を回った。

 今現在は金魚すくいをしてる。

 俺たちは二人とも金魚すくいが得意だったのでお互いに1匹獲った後さっさと出て行った。

「輪、私射的やる!」

 いきなり海廻が言ってきたのだ。まぁ、断る理由もないので俺は同意した。

 ポンっ!

「もーーーー!なんで当たらないの!?」

「だだこねんなよ。獲れねーもんは仕方ねーだろ?」

「じゃあ、輪やって!」

「分かったよやりゃいいんだろやりゃあ!」

そう言って俺は海廻に「どれが欲しいんだ?」と聞いた。すると海廻が「あれ!」と言って指さした。

「あれか」

 俺はそう言って狙いを定めて銃を撃った。すると一発で獲れた。

「ほらよ」

 俺は景品を海廻に渡した。見たところ白い箱のようだが中身は何だろう?

 海廻は早速中身を開けた。すると中身はとある花柄の髪飾りとネックレスだった。

 髪飾りの方は海廻が自分の頭につけて、もう一つのネックレスの方は俺に渡してきた。

「ネックレスの方は輪にあげるよ。取ってくれたお礼。」

「いいのか?」

 俺がそういうと「うん!」と言ってきたので俺はネックレスを受け取り首にかけた。

「うん!似合ってる、似合ってる!」

「まぁ、サンキュー。けど、良かったのか?もっといいの狙えたぞ?」

「これがいいの!輪はそんなこと気にしなくてもいいの!」

 そう海廻が言って海廻は走って行った。

「おいおい、待てよ!」

 俺は海廻を追いかけようとしたその時頭の中である映像が浮かんできた。

 それは、1年前の8月31日の出来事の1部だった。

 今日と同じように射的で景品を当てて中身に髪飾りとネックレスが入っていて今日と同じように海廻にネックレスが渡されたのだ。

 だが、記憶がかなり混濁していて上手い事思い出すことが出来ない。いや、そんなことより、

「何で、俺は1年前のことをほとんど覚えてないんだ?」

 そう、覚えてないのは去年の今日だけじゃない。去年の8月から今年の3月までの記憶が俺の中から「完全に抜け落ちていた」のだ。

 だが、今ので少しだけ思い出した。1年前の今日、間違いなく俺たちは夏祭りに来ていた。そう、「真由里を除いて」4人でだ。

 裕司はいち早くこのことに違和感を持っていた。裕司が言いたかったのはこのことだったのか。

「輪?どうしたの?」

 突然海廻が声をかけてきた。

「なんでもねーよ」

そう言って俺と海廻は再び一緒に屋台を回った。


 優里奈は一人で屋台を回っていた。表向きではそう見えるだろう。

 だが、優里奈は一人で屋台を回っていたわけだはない。真由里と裕司をつけていたのだ。

 優里奈は2人の関係がどこかおかしいことに気づいていたのだ。

「あの2人なにかある。付き合い始めた…というわけでもなさそうだし…とにかく今のあの2人が普通ではないことはたしかね。」

 優里奈はそういうと二人は話を始めていた遠くだからかよく話の内容は聞こえなかった。

 だが、ちょこちょこ単語は聞こえていた。

「楽園の世界?なんだそれは?」

 優里奈が聞き取った言葉で一番気になった言葉である。

 一瞬考え事をしていた間に二人を見失ってしまった。

「一体何が起こっているというの?」

 そういって優里奈は呆然と立ち尽くしていた。


「おーい!海廻ー!どこにいるんだー!」

 迂闊だった。まさかはぐれてしまうとは。

「ここは確か…昔裕司とよく遊んだ場所だな。もしかしたらここにいるかもしれないな。あいつはこういう危なそうな場所にも構わず行っちまうからな。」

 俺はそのまま禁止区域に行った。

 道は裕司とよく一緒に行っていたので大体覚えてる…はずだった。

「あれ?こんな道あったっけ?」

 俺はその道に向かった。すると、

「おっかしーな。こんなとこに墓標でもあったか?」

 俺は墓標に書いてある名前を見た。そして、絶句する。

 「なっ!」

 そこに書いていた名前は『園花海廻』だった。

「え??何で海廻の名前が???おかしいだろ何で?」

 そして、流れるように記憶が戻っていく。

 去年の8月に夏祭りに行ったこと、海廻が突然倒れてそのまま亡くなったこと、それ以降引きこもってしまったこと、全てを思い出した。

「一体何がどうなって、じゃあ、今いる海廻は?」


  ー【ここはあなたが来る必要はない。あなたはここにいてはならない】ー


 頭の中で声がした。

「誰だ!?」

 そう俺が問うと夢で何度か見た白い世界にいた。

「ここは一体…」

 そういうと俺の目の前にノイズがかかったシルエットが出現し、そのシルエットが語りかけてきた。

【あなたは永遠の楽園に居続ければいい。このまま幸せな夢を】

 聞いたことがあるような無いような、男か女か分からない歪な声がそう言ってきた。

「楽園って何なんだよ!お前は何者なんだよ!?何が目的だ!?答えろよ!!」

 俺は声を荒げて問いただす。すると、

【私は楽園の主。あなたの幸せのため、世界の幸せのため、私は動ている。】

「意味が分かんねーよはっきり説明しろ!」

【これ以上説明する必要はない。なぜなら全て『忘れる』のだから】

「なっ!?」

 俺が絶句したのとほぼ同時に世界が白く染まり意識が途切れた。


       【さようなら、黒羽輪また…逢おうね。】


「輪!起きて!起きてよ!!」

「うーん。ここは?」

「良かったー。倒れてたから心配したんだよ!?」

「そっか。ってあれ何で俺こんなとこにいるんだっけ?」

 どうやら俺は海廻を探してる内に倒れていたらしい。

「お!海廻と輪じゃん。こんな人が寄らないとこで何してるのかなー?」

 声の主は裕司だった。

「別になんもねーよ!」

 俺はそう返した。すると

「本当ですか?」

と真由里が問いかける。

「もう勘弁してくれ。」

「冗談です。」

 悪戯っぽく真由里が言う。

「皆ここにいたのね。探したわよ。」

 そういって優里奈も俺たちのもとへやってきた。

「ちょうどいいや。ここには人は誰もいないし警察も他の場所の警備で忙しいから来ない。だからこいつが出来る!!」

 裕司がそう言って取り出したのは花火の山だった。

「花火じゃ花火じゃーーー!!」

 裕司が叫んだと同時に花火が開始された。

 俺たちは花火を始めた。俺と優里奈はは無難に普通の花火を両手持ちしていたが、他の三人はというと…

「うおりゃーー!トリプル花火!」

「負けませんよ!四刀流!」

「甘いな!海廻!真由里!こっちは六刀流だ!」

 そう言いながら花火を多く持ちブンブン回している。危ないからやめてくれ…

「騒がしいわね。もっと静かにできないの?」

「ああ、まったくだ。」

 俺と優里奈はそう呟いた。

「まぁ、けど…こういうのも悪くないわね。」

「ああ、そうだな。」

「一足先に線香花火をしましょう。」

「だな。」

そう言って俺と優里奈は線香花火を他の三人より一足早く始めた。


 他の三人も線香花火を始めていた。裕司と優里奈は結構長時間持っていたが、真由里と海廻そして俺はすぐに花火が落ちてしまっていた。

「上手くできませんね。なぜでしょう?」

「真由里はこういうの普通にできると思ったんだけどな~」

 俺は意外に思った。けど真由里はお嬢様っぽいからもしかしたらこういうことはあまりやって来なかったのかもしれない。

「う~ん。で~き~な~い~。」

「ごねるな。海廻。」

「ふはは!遊びの天才の俺には勝てんわな!」

 裕司が調子に乗っている。うるせーよ。

「………」

 やっぱ、優里奈は無口だな。

 線香花火をしてる時の皆は静かだった。そして、この後はラスボスが待っている。


「デデーン!ロケット花火~!」

 裕司が言い放った。変な擬音語つけんな鬱陶しい。

 線香花火が一通り使い切り最後はロケット花火をかますことになった。

「どんなのか楽しみですね!」

 真由里は未開人のような発言をしている。以外と世間知らずな奴なんだな。

「……」

 やっぱ優里奈は無口だった。

「ワクワクするね!」

 海廻は相変わらずのテンションだった。

「じゃあ、輪!準備はOKだからお前が火をつけろ!」

「俺が!?」

 そんなこんなで俺が火をつけたすると、一斉に花火が打ち上がった。

「綺麗」

 第一声を放ったのは以外にも優里奈だった。

「綺麗ですねー」

「おお~!たくさん上がってる~」

 海廻と優里奈が続けて言う。確かに綺麗だ。

「やっぱこういうのは楽しいな!なぁ、輪!」

「ああ、そうだな。裕司」

 俺たちは笑い合いながらそういった。

 こうして俺たちの今年の夏は終わったのだった。


 輪は知らなかった。輪自身が見えないところで様々な思惑が交錯されていたことを。

 そして、この時が輪たち五人の最後の平穏であったことに輪たちは知る由もなかった。


【ダメ…このままじゃ壊れちゃう。それだけは嫌】

 歪な声がそう言っていた。

【必ず、この世界は維持する。必ず。ねぇ、あなたもそう望んでるんでしょ?輪】


 【第4章】最後の日常投稿しました。はい、話がめっちゃ動きましたね~。後、裕司視点の話が個人的にすごく書いてて楽しかったです。裕司はこれから物語にガツガツ絡める予定です。ちゃんと優里奈も絡めます。なんたってこの作品は五人全員が主人公なわけですから!

 海廻と真由里はかなり特殊な位置づけをしてますのでこの二人視点の話をやるのはもうちょいさきですねー。(真由里は少しだけやったけどあれはやったの内に入らないと思う)

 ついにこの物語の世界について言及されましたね。しかも最初に突き止めたのが裕司という(笑)裕司は本当にトリッキーな動きをしてくれるので書きやすいですし楽しいです。というか、過去に行ったわけではないんですよね~(半分は正解でもう半分は間違い)

 この「エデンの鳥かご」もついに後半戦に入ります。恐らく今までのような楽しいだけの日常ではなくなると思います。この物語を彩ってくれている少年少女の結末をどうか最後まで見てやってくださいな。

 後、リアルがものすごく多忙だったため投稿が遅れてしまいました…大変申し訳ありませんでした。

 それではまたお会いしましょう!

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