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エデンの鳥かご  作者: チャッピー
12/12

【最終章】僕たちが生きる世界

 輪と海廻はそれぞれの想いと記憶を辿っていた。様々な思い出を噛みしめながら二人の想いはぶつかり合う。輪と海廻の最終決戦が始まる。この戦いの先に待っているのは絶望か、それとも新たなる救済か、それともー

 創世記に描かれていた楽園、その名はエデン。アダムとイブはただ蛇に誑かされただけで禁断の果実に手を出したのか?二人は禁断の果実に手を出すという大罪を犯した。

 しかし、二人が果実に手を出したのは求めていたからではないだろうか…【本当の幸せ】を…そして、二人は理解していたのかもしれない…エデンには本当の幸せが存在しないことに…

 輪と海廻はこの世界の概念を変えてしまった。それは紛れもない罪だ。この二人もある意味ではアダムとイブなのかもしれない。だが、罪によって迎えた結末は違うものであった。

 アダムとイブは犯した罪により楽園を追放された。輪と海廻は世界の概念を書き換えるという大罪を犯し楽園を創造した。

 アダムとイブ、輪と海廻、この四人には共通するものが二つある。一つは大罪を犯したこと。そしてもう一つがー「求めつづけたこと」。

 しかし、アダムとイブの本当の考えなど…分かるはずもない。輪と海廻の結末もまだはっきりしていないのだ。

 輪と海廻、二人の最後の戦いが始まった。



 黒羽輪は今、日比野高校にいた。海廻はもしかしたらここにいるのではないかと思ったからだ。しかしー

「どうもここにはいないみたいだな」

 輪がそう言うと学校を見渡すと様々な思い出がよみがえった。文化祭のことその中で劇をやったこと、体育祭のこと、どれもこれも思い出深かった。輪は一つ一つの思い出を噛みしめながら進んでいった。

「今思えばあの時は楽しいだけじゃなかった。大変だった。辛い時もあった」

 輪はもはやこの世界の住人では無い。これまでの思い出の負の感情が流れ込んできた。

「もっと、意見をぶつけ合っても良かったかもな。もっと上手くできたことも今思えばたくさんあった。なんでこんな簡単なことを…俺は忘れてたんだろう?」

 輪は悲しみや痛み、あらゆる負の感情を否定しようとは思わなかった。むしろ今は心地いいとさえ感じる。

「俺ってこんなにドMだっけ?いや、元に戻っただけなのかもしれない」

 輪は学校の隅々まで歩き、見渡していく。確かに、この学校には思い出があって、それが生き続けているんだ。

「最後は屋上だな」

 そう言って輪は屋上に向かった。


 屋上に輪は到着し、輪はそこから景色を見渡した。

「やっぱ、ここからの景色は最高だな!」

 輪はそう言いながらこの屋上の記憶を辿っていた。

 文化祭の終わり、シンデレラの劇が終わった後にこの屋上に来た。

「そういや、あの時の裕司や優里奈の演技は最高だった。今でも笑いそうになる。俺も海廻も周りから見たら面白がられてたんだろうなぁ~。何かそう思うとへこむな」

 輪はシンデレラの自分たちの演技を思い出しながらそう言った。

「ここで、文化祭終わりに俺は海廻に聞かれたんだよな。今は幸せかって」

 ここで、輪は海廻に最初の選択を迫られた。

「今なら分かる。あの時の選択は間違ってなかった。俺は皆と一緒に居たいという選択をしたのだから」

 そう、輪の皆と一緒に居たいという思いは間違ってはいなかった。

「ただ、海廻は間違って俺の答えを聞いちゃったみたいだな」

 輪は屋上から飛び降りた。そして、背中には黒い翼が生えてきた。

「よし、飛べるな」

 概念がめちゃくちゃになってるこの世界なら多少のことは無視できる。輪はそう考え、屋上から飛びおっりたのだ。

「さぁ、行くか」

 そう言って輪は次の場所に行った。


 ーそう言えばこの海に来たんだっけな。

 輪が向かっていたのは去年の夏休みに行った海だ。

「ここで、ビーチバレーをしたんだったな。俺と裕司は女子三人にボコボコニされたっけ。バーベキューもしたっけ」

 輪が思い出を懐かしむ。ここでの思い出も鮮明に覚えている。

 輪は近くのホテルへと向かった。

「ここで裕司とゲームしたな。後、部屋で集まって夏祭りのことを…」

 輪がそう言いかけた途端、輪は海廻の居場所が分かった気がした。

「多分、海廻の居場所は分かった。けど、まだ行かなきゃいけない場所がいくつかある。そこを回ってからだな」

 とは言え時間は残されてはいない。輪は少し急いで次の目的地に向かった。



「輪はここが分かったかな?」

 海廻が退屈そうに言っていた。海廻は長い夢から覚めたばかりなのだ。

「そう言えば、この世界では色々あったな~。文化祭の実行委員も私がやりたいって言い出して、輪たちも一緒にやってくれたんだよね。あの時は楽しかったな。劇もすごく楽しくて…輪にキスされたのはちょっとびっくりしたけど」

 海廻は思い出を一人で語っていく。最後の方はかなり恥ずかしそうだった。

「海にも行ったな~。あの時は輪と裕司をボコボコにしたっけ。バーベキューも楽しかった。女子三人でUNOとかもやったな~。一つ一つが私の大切な思い出だった」

 海廻が切なげに語る。海廻も分かっている。終わりを迎えるこの世界の思い出をどんなに語ったところで虚しいだけだということをそれでも海廻は語るのをやめられなかった。

「さてと!もう昼過ぎだし昼ご飯を食べよう!」

 海廻はそう言ってお結びを食べ始めた。



 輪が今いる場所は自分の家だ。

「ここでテスト勉強したんだよな~。出来る科目も出来ない科目も皆バラバラでなんか面白かったな~。真由里が転校してきて間もない頃だった」

 輪は一人で思い出を語っていると何かを思い出したように自分の部屋に行った。

 部屋に着くと裕司は花柄のネックレスをクローゼットから取り出した。

「この花…勿忘草だよな?確か花言葉は「私を忘れないで」、「真実の愛」だったよな」

 花言葉を呟いた輪はさらにこう続けた。

「俺は…絶対に忘れない。皆のことを、海廻のことを」

 そう決意した輪は次の目的地へと向かった。


「ちょっと時間が掛かるな~。なんつってもアメリカに向かってるからな~」

 輪は今アメリカに向かっていた。修学旅行の旅行先だ。

 しばらくするとアメリカに着いた。

「よしっ!到着っと」

 そして、輪は辺りを見回す。

「やっぱ、日本とは全然違うな。当たり前だけど」

 輪はニューヨークの街を歩き回った。

「この遊園地…もっと遊びたかったな~。あの時は色々ゴタゴタしたからな。この時点で裕司や優里奈のことを気付いてやるべきだった」

 輪は後悔した。二人を助けられなかったことを。

「…次の場所に行くか」

 そう言って輪は次の目的地へ行った。


「ここには来たくなかったな」

 そこは風化してボロボロになった廃工場だった。ジェイソン・ブラックと名乗る大男に監禁され拷問をされた場所。ここで輪は、髪と眼の色が変わった。

「俺はこの時から絶望に囚われてたのかもしれないな」

 輪は建物を一つ一つを退けた。

「見つけた…」

 輪が見つけたのはジェイソン・ブラックの死体だった。そしてその後、輪は近くに穴を掘りお墓を作った。そして、ジェイソンの死体を埋め、両手を重ねて祈った。

「あんたは俺を痛めつけた。めちゃくちゃになるまで俺は絶対にお前を許さない。けど、お前もこの世界の被害者だったんだよな。俺と海廻のせいでお前を狂わせたんだよな…すまない。この墓はお前に対するせめてもの償いだ」

 そう言って輪は、ここを後にした。


「ふ~。大体回ったな!じゃあそろそろ行くか!」

 輪はニューヨークの街を後にし、再び日本に帰った。

「海は広いな。とてつもなく。つーか世界の約七割が海っていうからな~。ヤバいな、そう考えると海の広さは」

 輪が呑気にそんな事を言っていた。

「また、海に行きたいな」

 そんな事を言いながら輪は海廻、裕司、真由里、優里奈の五人で朝の海の景色を見たことを思い出していた。

「海廻、待ってろよ。必ずお前を見つけてやる!そして、お前を連れ戻す!」

 輪は飛行速度を上げ海を駆け抜けていった。



 海廻は辺りの景色を見渡しながら輪を待っていた。

「輪は私の居場所まだ分かんないのかな後6時間くらいでこの世界は崩壊するよ?」

 海廻は呑気そうにそう言った。

「まぁ、いいっか」

 そう言って海廻は再び自分の思い出を辿りだした。

「輪の家でテスト勉強したっけ。皆私より勉強できなかったっけ?あれはおかしかった。輪に勉強を教えたり教えられたりすることがあまりなかったからすごく新鮮だった。他の三人もそう、とても新鮮だった。アメリカの修学旅行は楽しみだった。でも、思うようにはならなかった。皆とても悲しい顔をしていた。この世界は間違ってるかもしれないって一瞬でも思ってしまった。そんなはずはないのに」

 海廻が勉強会と修学旅行のことを語っていた。そして、更に続ける。

「夏祭りは本当に楽しかった。多分一番楽しかった。輪と色々回ったりみんなで花火をしたり、後、輪は射的で景品を獲ってくれた。今でもこの花柄の髪留めはつけてる。お気に入りだもん。景品は髪留めだけでなくネックレスも入っていた。ネックレスの方は輪にあげた。あのネックレス。輪は今でも持っていてくれてるかな?」

 海廻はそう言うと世界が崩壊を始めた。

「後、六時間ほどで世界が崩壊する。世界崩壊が再開したね。さぁ、終わりの始まりを迎えるまでもうすぐだよ」

 海廻は世界の終焉を見守った。



「マズいな…もう崩壊が始まっちまったか。急がないとな」

 桃源町にいた輪は最後の目的地に向かっていた。

「最初から最後まであの場所だな。待ってろ!海廻!」

 裕司は桃源山へと進んでいった。


 街を走っていると町の中心にある墓園に辿り着いた。そこには裕司と真由里の死体があった。

 輪は二人の墓を作り埋めた。

「裕司、真由里。頼む、俺に力を貸してくれ!俺を見守ってくれよな!」

 そう言って輪は走り出した。そして、再び桃源山に向かった。


ーここだ!

 輪は桃源山の麓に辿り着いた。

「去年と今年二回夏祭りに行ったんだよな。去年のことは真由里が記憶を取り戻させてくれるまでは忘れてたけど」

 輪は桃源山を登り始めた。そして、失っていた記憶が甦り始めた。

 小六で初めて海廻と出会ったこと、海廻が病気で死んでこの山で墓標を作って海廻が帰ってくるように祈ったことそして、祈りが叶って生き返ったことを思い出した。

「俺は何でこんな大事なことを…海廻…俺は…」

 様々な記憶が押し寄せ輪は一つの答えに辿り着いた。

「海廻…そう言えば、あの時の返事…まだ答えてなかったよな!」

 輪は答えを見つけ出したのだ。正直輪はここまで海廻を止めるとは言ったし、助けるとも言ったが、どうすればいいか分からずにいた。

 だが、世界崩壊が始まって改めて思い出の場所を回り記憶を辿り、そして、ここ、桃源山の麓に来て失った記憶を思い出したことで輪はようやく一つの答えに辿り着いたのだ。

「行くぜ!」

 そう言って、輪は走り出した。輪は辺りを見回した。夏祭りの思い出が甦る。

「この時の海廻は本当に生き生きしてたな。それにこのネックレスもここの射的の景品だったんだよな。髪留めが海廻のものになってネックレスが俺に渡った。海廻はあの髪留めをそう言えばずっと着けてたな」

 この時輪は確信した。

「海廻はこの世界を本当は望んでない。無かったことにするなんて望んでいない。でないと、俺が送った髪留めを着けたりなんかは絶対にしない。海廻は俺たちの思い出を大切にしてくれている。それが分かればもう十分だ」

 輪は山を登っていく。走って行く。頭の中は色んな記憶がない交ぜになっている。だが、輪は自分の今すべきことははっきり分かっている。

 輪は足を止めない進み続けた。ひたすらにただ頂上へ



「輪は私の居場所が分かったみたいだね。じゃあ決着を着けられそうだね。私が勝つか、それとも…輪が勝つか。裕司が私の墓標を見つけた場所は半分正解で半分は間違い。あそこにあった墓標は私が作りだしたカモフラージュ。輪が作った私の本当の墓標はこの桃源山の頂上にある。そして、私が今ここにいる場所でもある」

 海廻が流ちょうに語る。今は満月の夜世界崩壊まで後、一時間。時間は夜の十一時。一月十日午前0時になると世界は崩壊する。

「ふふっ、もう桃源山以外の世界は崩壊した。さぁ、速く来て輪。私の中に入ってきて」

 海廻はそう願った。願い続けたその時ー



 世界崩壊が進んでいた。大地は消滅し、海は無となりその名の通り崩壊が始まっていた。

「もう、この山以外は完全に消え去ってるな。頂上の景色が見れないのが残念だ」

 輪は走りながらかなり呑気なことを言っていた。輪の異常な速力は背中の黒い翼によるものだ。しかし、その黒い翼も今、消え去ろうとしていた。

「ちっ!もう、翼はもたねぇか!」

 翼が完全に掻き消える。しかし、輪は走り続ける。

「もう少しだ!もう少しで頂上だ!」

 そして、頂上へと辿り着いた。


「来たんだね。輪」

 海廻がそう問いかける。

「ああ。見つけた」

 輪はそう答えた。

「答えは…見つかった?」

 海廻が再び問いかける。

「最初はさ、お前を止めるってただ漠然と考えていた。でもな、この世界崩壊が起こった約二十四時間の間に今までの思い出の場所を回ったんだ。本当はもっと前からお前の居場所は分かっていた。けど、回らずにはいられなくてさ。そして、俺はー一つの答えに辿り着いた」

 輪が話していると海廻は笑顔を作りながら輪の言葉を遮るように語り掛けて来た。

「ねぇ、輪。私と一緒に世界を創り変えよう。そうすれば皆幸せになれる。皆にとっての幸せな世界を創ろう。私とあなたが一緒になればそれが出来る!」

 海廻がそう言うと輪は首を横に振った。

「駄目だ。それは出来ない。海廻、俺はこの世界を認めない!」

 輪がそう言うと海廻は悲し気な顔を作った。

「なら、私が死ぬかあなたが死ぬしかないようだね!」

 海廻がそう言うとこれまた輪は否定した。

「違う!俺はお前と殺すためにここに来たんじゃない!お前を助けるために、迎いに来るためにここに来たんだ!」

 輪がそう言い放った。すると海廻はー

「それは出来ない私はこの【エデン】を維持しなければならない!そうしなければならないんだよ!!」

 しかし、輪は止まらなかった。海廻に伝えたいことを輪は伝えた。

「俺には!お前が必要なんだよ!俺の中ではもうお前がいる世界が日常になってるんだよ!裕司や優里奈、真由里もそして海廻!お前も俺にとってはかけがえのない存在になってるんだよ!だから!だからお願いだ!!帰ってきてくれ!!!俺はお前を絶対に取り戻す!!そう決めた!!これが!俺の答えだ!!!!」

 輪はそう言い放った。まるで、祈るかのように海廻に思いを伝えた。

「輪は…本当に真っ直ぐだね。目を背けたくなるほどの真っ直ぐさだよ。あなたはこの世界を通じて強くなったんだね。輪、私嬉しかったよ。あなたが私をそんな風に思ってくれてたことを。私は…やっぱり幸せ者だ…だからこそ、この世界は終わらせられない」

 輪の想いは結局海廻に届かなかった。

「待て!海廻!!俺はー」

 輪が何か言おうとするも海廻は『概念操作』の力を行使した。

「さよなら、輪。また次の世界で会おうね」

 海廻がそう言って光を放つ。すると、輪は虚空へと消えていった…



「輪!起きて!起きてってば!!起きろーーーーーー!!!!」

 誰かに布団をかっぱらわれた。かっぱらったのは海廻のようだ。

「速く行こう!」

 海廻が言うと輪はキョトンとした顔で海廻を見た。

「行くって…どこへ?」

 海廻が照れながら答える。

「デートだよ。デート。ほら!さっさと行くよ!」

 輪は準備をすぐに済ませ、海廻と一緒に出かけた。


 二人は遊園地に来ていた。

「まずは何から乗る?」

 輪が海廻に聞いた。

「あれに乗る!」

 海廻が指を指したのはジェットコースターだった。

「いきなりか…」

 輪は青ざめたような顔をしたが海廻は構わずにジェットコースターに行った。

「ワクワクするね!輪!」

 海廻が目を輝かせながら輪にそう言った。

「お…おう!そうだな!」

 輪はビビりながらそう言った。二人はジェットコースターの最前線にいるのだ。輪は絶叫マシンが苦手な上に最前列で挑むとなるとかなりの恐怖を覚えた。

「輪?もしかして怖いの?」

 海廻が輪に煽るように言ってくる。

「そそそそそそそんなことねぇよ!!どおおんっと来いや!」

 輪は悲鳴じみたようにそう言った。すると、ジェットコースターはどうやら最高点に到達したようで一気に落下した。

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああはははははははははははは!!!!」

 二人とも悲鳴を上げていた。特に輪のは悲鳴と言うよりただの鳴き声だ。海廻は途中から笑っていた。


「…死ぬかと思った」

 輪はそう言った。

「だらしないな~、輪は。はははっ」

 海廻は子どもの様に笑っていた。

「うるせーよ」

 輪はくたびれたようにそう言った。

「次はあれに乗る!」

 海廻が指定した乗り物は急流滑りだった。

「また絶叫系…」

 輪は絶望顔になるが海廻は気にせずに輪を連れて行った。


「水の流れる音が心地いいね~」

 海廻がそう口にする。

「ああ、そうだな…最後の急降下が無ければ最高だ」

 輪は吐き捨てるようにそう言った。

「輪…今楽しい?」

 海廻が聞いてくる。輪はすぐに答えた。

「ああ。楽しいよ」

 輪は笑顔でそう言った。

 しかし、その瞬間乗り物が急降下した。これが急流滑りであることを輪は完全に失念していた。

「ああああああああああああ!!」「きゃあああああ!!!」

 輪は情けない声をあげた。海廻は相変わらず楽しそうだった。


「次はどれに乗ろうかな~?」

 海廻が楽し気に言う。

「勘弁してくれ…」

 輪は疲れ切っていた。あれからいくつか乗り物に乗ったがどれもこれも絶叫マシンばかり…輪の精神が限界に来ていた。

「そろそろ絶叫マシンは…」

 輪がそう言いかけると海廻は次の乗り物を決めたようだ。

「今度はメリーゴーランドだよ!」

 輪はほっと息を着いた。


 メリーゴーランドに輪と海廻は乗っていた。ゆったりと回る幻想的な光景を輪は見惚れていた。

「輪!こっちだよ!」

 海廻が輪に声をかけてくる。輪は海廻に見惚れてしまった。輪は海廻がキラキラして見えたのだ。

「静かに乗れないのかよ…あいつは」

 輪はそう言いながらとても楽しそうだった。


 メリーゴーランドを乗り終えた輪と海廻は小腹がすいたので、近くの店でクレープを買った。

「ほらよ」

 輪が海廻にクレープを渡す。

「ありがとう、輪。頼りになるね!」

 海廻がお礼を言うと、輪は照れくさそうにした。

「お、おう」

「これ美味しいね。輪のも食べさせえてよ。私のも一口食べていいから!」

 そう言って海廻は自分のクレープを輪に差し出す。輪はそれを一口食べ、輪自身のクレープを海廻に差し出し、それを海廻が一口食べた。

「おまっ!一口でけぇよ!」

 輪が溜まらず叫ぶ。しかし、すぐに「どうだ?」と聞いた。

 すると海廻は「美味しい!」と答えた。

「今度はお店に行こう!」

 海廻は店へと走りだした。

「おう!」

 輪は返事をして海廻についていくのであった。


 輪と海廻は店にいた。色々な小道具やかわいいグッズもあり女の子向けの店だ。

「これとかかわいいよ~、輪!」

 海廻がそう言う。

「おう、そうだな」

 輪はそう答えた。

「輪が選んで。どっちがいいと思う?」

 海廻が指定したのは、赤い花柄の髪留めか白い花柄の髪留めだった。

 輪は即断即決した。

「じゃあ、白い方で。お前は多分そっちの方が似合う」

「ありがとう、輪!じゃあ、これにするね!」

 海廻がそう言いカウンターに行き白い髪留めを買った。そして、その後、その髪留めをすぐに着けたのだった。


 最後は観覧車に乗った。空から夕焼けの景色はまさに絶景の一言だ。

「うわああああ、綺麗…」

 海廻が目を輝かせながらそう言う。

「ああ、そうだな」

 輪も目を輝かせていた。

「今日は本当に楽しかったね!また、明日も、次の日も、また次の日もずーーーーっとこんな風に楽しく過ごせたらいいね!」

 海廻がそう言う。しかし、輪は無言だった。

「輪?」

 海廻が声をかける。しかし、輪は答えない。

「俺は何でこんなところに…」

 輪は今日より前のことが思い出せなかった。

「輪!」

 海廻が声をかける。

「どうした?海廻?」

「もう観覧車終わったよ!それに私の話聞いてなかったでしょ?」

 海廻が少し怒ったように言った。

「ああ、悪い、ぼーっとしてた」

 輪が誤る。すると。海廻は呆れたように息を吐いた。

「もう、しょうがないな~。場所を変えようか」

 海廻は歩き出し、輪はそれについていった。


 海廻と輪が今いる場所は花畑だった。海廻が軽やかな動きで花畑を駆ける。とても美しいなと輪は思った。

「…綺麗だな」

 輪がそう言う。咲いていた花はラケアニア。花言葉は…決断

ーそうか、俺はここで…

 輪は全てを悟った。

「ねぇ、輪。今日はすごく楽しかったよ」

 海廻がそう答える。

「ああ、俺もすごく楽しかった。一生これが続いて欲しいとさえ思ったよ」

 輪がそう言うと海廻は輪に問いかけた。

「じゃあ、輪はこのままずっとここにいてくれる?」

 輪は答えた。

「………ごめん。俺はもう、行かなきゃ…」

 海廻は諦めたような顔をした。次の瞬間ラケアニアの花が形を変え、ゼラニウムの花に変わった。花言葉は「決意」。この花は輪の決意を現していたのかもしれない。

「そっかぁ。…残念だなぁ」

 そう言って【海廻の幻影】は消えていった。

 世界は黒から白へーそこからさらに輪は元の世界に戻っていく。



 桃源山の虚空に穴が開いた。そこから出てきたのは黒羽輪だった。海廻は驚愕の顔をした。

「嘘!私の『概念操作』から抜け出したっていうの!?自分の意志の力だけで!」

「言っただろ?はぁ、はぁ、お前を…連れ戻すって…」

 輪は今にも倒れそうになりながらそう言った。

「海廻…帰ろう…元の世界に…」

 輪は海廻に優しく、そして、慈しむようにそう言った。

 海廻は悟った。もう、輪にはこの世界は要らないものになったことを。そして、海廻は自分が間違っていたことを認めた。

「かなわないなぁ、輪には」

「海廻?」

 輪は海廻の名を呼んだ。すると、海廻は言葉を発した。

「輪、あなたなら世界を元に戻せる。あなたの力を使えば!」

「どうすればいい!?」

「あなたは祈ればいい。この世界が元に戻るように。あなたの眼が中学二年生時に黒く変色したのはあなたの力で私が生き返ったことを認識したから。今のあなたなら思いの力でこの世界を元に戻せる!」

「分かった!それでお前も、皆助かるんだな!」

 輪がそう言うと海廻は力強く首肯した。

 輪は祈った。世界が元に戻ることを。輪が大好きなこの世界を…そして、世界は元に戻っていく。

 輪と海廻が創りだした楽園は完全に崩壊した。



「終わった…のか?」

 輪がそう言うと海廻が答えた。

「この世界は元に戻ったよ」

 海廻はその後倒れこんだ。

「海廻!」

 輪は海廻の元へ走り、海廻を抱き上げた。

「どうしたんだ!海廻!」

 海廻は弱弱しい声を発していた。

「私とエデンは…繋がってるの。だから、エデンが消えれば…私も消滅する」

「なんで!お前も助かるって!!」

「へへっ…嘘吐いちゃった。でも、本当のこと…言ったら輪は絶対に…躊躇うよね…」

「それは…」

 輪は答えることを躊躇った。

「ほら…やっぱり…でもいいんだ…今回で…分かったんだ…幸せなだけじゃ…駄目なんだね…辛いことも、悲しいことも、苦しいこともちゃんと感じないと…駄目なんだね…そうしないと…本当の幸せは来ないんだね…」

 海廻はそう言うと輪は涙を流した。

「俺は…お前を救えなかった。さっきはお前にひどいことを言った。あの世界は…お前が俺の為に作ってくれた世界なのに…」

「ううん…私…輪に救われたよ。輪は私にいっぱい幸せをくれたもん。私を外の世界に連れ出してくれて…色んな世界を…見せてくれた…私に…生きる意味を…くれた。私は本当に…あなたみたいな優しい人に出会えて…幸せ者だよ…」

 海廻は涙しながらそう言った。そして、海廻は色々な自分の感情が押し寄せて来た。

「うっ…うっ…これが…泣くって…ことなんだ…これが苦しいって…ことなんだ…これが悲しいってことなんだ…これが辛いって…ことなんだ…そして、その先に…あるのが…幸せ…」

 海廻が遠い眼をしながらそう言う。

「ああ、そうだよ!海廻!苦しさや辛さ、悲しみの先に幸せがあるんだよ!!お前はそれを知った。だから探せる!俺と一緒に探そう!!なぁ、海廻!!」

 輪は叫んだ。無意味だと頭では分かってる。けど、叫ばずにはいられない。

「ねぇ、輪、私…一回目に死んだ時…あなたに伝えたよね…私の想い…」

 輪はその時の言葉を思い出した。


『黒羽輪君、私を幸せにしてくれてありがとう。あなたをずっと愛しています。ずっと…好きでした』


「あの時の…輪の返事…聞いて…ないから…聞かせて欲しいなぁ…あの時の…輪の答え…」

 輪は元よりその答えを伝えるつもりでいた。輪は優しく答えた。

「園花海廻、俺のことを好きになってくれてありがとう。俺は…お前を好きになるために生まれたんだと…そう思うよ…俺も…俺も…ずっと君が…好きだった」

 海廻は今までの中でいちばんやさしい顔をした。

「よかった…最後に聞けて…」

 海廻の身体が消えていく…

「ねぇ、嘘でもいいから…答えて…また…逢えるよね?」

 海廻が裕司に問いかける。

「何言ってんだよ…当たり前だろ?」

 海廻の身体が完全に消滅した。


          -ありがとう、輪…私を幸せにしてくれた人…ー


 落ちていたのは白い髪留めだった。 

 輪は泣き叫んだ…いつまでも




 世界は元に戻った…園花海廻という存在は全ての人から忘れ去られた。そう、輪ですら彼女のことは覚えていない。



「おかしいな~。ここにもないぞ?」

 輪は筆箱を探していた。輪は高校三年生になった。その最初の授業があるのだが…筆箱を失くしてしまっていた。

「あれ?何だこれ?髪留め?」

 そこにあったのは白い彼岸花の意匠が施された髪留めだった。

「この花は…彼岸花だな。確か白い彼岸花の花言葉は「また会う日まで」だったな」

 輪はこの髪留めを見て、妙に懐かしい気持ちになった。

「「また会う日まで」…か」

 輪がそう言うと筆箱が右手の隣にあった。

「あった!良かった~」

 輪がそう言うと外から声がした。

「お~~い、輪!さっさと行くぞ!」

「分かってるよ!裕司!」

 輪は外に出て裕司と一緒に学校に行った。


「おはよう、輪、裕司」

 後ろから声がした。

「ああ、おはよう、真由里、優里奈」

「チーッス」

 輪と裕司が挨拶をする。

「今日から新学期だね!」

 真由里がそう言うと優里奈が「そうね」と答えた。

「ああ」と輪は答え、「そうだな」と裕司は答えた。

「皆反応が微妙じゃない?」

 真由里は不満げに言うがー

「今日はずっと授業なんだぞ…テンション下がるだろ…そりゃあ…」

 裕司が吐き捨てるように言った。輪と優里奈も同意見のようだ。

 そんな話をしてる時輪は聞き慣れた声が聞こえた。

「皆!速くしないと置いてくよ!」

「ああ~待ってよ!うみね~!」

 輪は「うみね」と言う言葉に懐かしさを覚えた。

「園花、海廻」

 輪がそう呼ぶと少女は立ち止った。

「?ねぇ、君、私の事呼んだ?」

 少女が輪に話しかけて来た。その少女は青がかった長い黒髪と黄色い眼が印象的な少女だった。

「輪?」

 裕司たちも足を止めるが輪はこう答えた。

「お前らは先に行っといてくれ」

 輪がそう言うと真由里が「分かった」と言って三人は先に行った。

 そして、輪は少女に対してこう答えた。

「え?いや、何でもないよ」

「変なの…でも…あなたってどうも懐かしい気がするんだよね~。どっかで会わなかった?」

 少女はそう言ってくる。輪も同意したように答える。

「奇遇だな。俺もお前とはあったことがあるような気がする。何か懐かしい気がする」

「ねぇ、あなたの名前…教えてよ」

 少女が問いかける。

「俺は黒羽輪だ」

 輪はそう答えた。

「私は園花海廻よろしくね、輪!」

 その少女…海廻は輪に満面の笑みを浮かべた。

「ああ、よろしくな!海廻」

 そう言って二人は別れた。海廻は笑顔を浮かべて去って行った。

 輪は白い髪留めを取り出しそれを見つめた後、再びポケットに入れた。

「また、会おう」

 そう言って輪は、笑顔で歩き出すのだった。


THE END


 


 ついに…ついに終わりました…いや~、書きたいこと全部描き切りました!ここまで長かった~。はい、輪たちがこの先どうなるかは皆さんの考えにお任せします。(とか言いながら番外編として、続きを出すかも…)これを書いて思ったこと…幸せって哲学だね!ここから先はこのエデンの鳥かごに出てきたキャラクターについて書いていきます。

 黒羽輪・・・このキャラは二番目に作ったキャラです。主人公なだけあって多分一番自分に近いです。輪は主人公らしく成長するキャラとして書きました。なんだかんだ言って一番感情移入するキャラでした。名前の由来は黒羽は黒い翼を使うことから、輪は輪廻の輪です。

 園花海廻・・・このキャラは自分が一番最初に決めたキャラです。初期設定は幽霊少女の設定でした。ですが今の状態になりました。ある意味この作品のメインヒロイン兼真の主人公ともいうべき存在で彼女がこの話の要でした。名前の由来は楽園の「園」とこの物語の伏線となった「花」、キャラのイメージが海から来てることから「海」、そして、輪廻の「廻」で園花海廻です。

 白姫真由里・・・この作品のキーパーソンを務めた少女。正反対の海廻をイメージしました。この子は結構不憫な子でした…輪と海廻と密接に絡む役でした。本当は輪と真由里で海廻を止める予定だったのですが、輪一人の方がいいかなって思って、真由里は退場させました。ごめんなさい。名前の由来は黒の反対の色である「白」、イメージが姫であることから「姫」、真実を暴く者と言うことで「真」と「由」そして、初期設定が忍者の里の人ということから「里」です。

 神山裕司・・・正直こいつはモブキャラにする予定でした。いや、ホントに…けど、裕司を動かすのが楽しくなっちゃってこうなりました。最初から最後まで決めるところは決めてましたからね彼は。ある意味自分の理想像です。名前の由来は神を山から見下ろす者と言うことで「神山」司る者で「裕司」にしました。正直「裕」の字は何となくしっくり来たからつけただけです。

 島崎優里奈・・・自分が一番扱いきれなかったキャラです…ホント申し訳ない。う~ん。やっぱ無口キャラは難しい…名前の由来はこれと言って無く、適当につけました。…ここでも不憫な扱い…化けて出られるかも…怖い…

 ここまでキャラの由来を書きましたが、これでもまだまだ書き足りないです。ですが、あまり長々とキャラの事書いてもあれなんで…

 この作品自体は思い付きで書いたんですが…最後まで書けて良かったです。先ほども言いましたが、書きたいこと全部書けました。とりあえずこの作品はこれで満足です!感想や意見も募集してますのでそちらもよろしくお願いします!

 この「エデンの鳥かご」を最後まで、読んでくれた皆さま、本当にありがとうございました!

 それではまた、別の作品でお会いしましょうそれでは!(まぁ、ぶっちゃけ、次回作を出すかどうか未定なんですが…)

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