ブラコン(シスコン)なのは嫌と言うほど分かってるから今更だ(よ)!
昔々、本当に遠い昔、人と人ならざる者が、背中合わせながらにも共存していた時のこと。
人ならざる者達の群れの中に、人の形を持って生まれた人ならざる者が居ました。
その人の形を持った人ならざる者、"彼"は、確かに人ならざる者であるはずなのに、彼を彼たらしめるものの全ては、まるで人と変わりありませんでした。姿形も、その心ですらも。
人ならざる者であるが故に持ち得ている力以外、どこからどう見ても人である彼。
他の人ならざる者達から忌避の目で見られるのは、必然でした。
同じ時の中、人の中にも、異端な者が生まれていました。
異端な人、"彼女"は、確かに人であるはずなのに、彼女を彼女たらしめるものの全ては、まるで人ならざる者と変わりありませんでした。姿形も、その心ですらも。
人であるが故に狡猾で無力であること以外、どこからどう見ても人ならざる者である彼女。
彼女が他の人から忌避の目で見られるのも、必然でした。
そして、必然故に居場所を追われた二人が出会ったのも、また必然であったのでしょう。
彼と彼女は、出会った瞬間に理解しました。
『君は、僕(私)なんだね』
生れ落ちる前、お互いに何かを取り違えてしまった僕達。
まるで継ぎ接ぎのように、矛盾だらけの私達。
人の心と人の形、人ならざる者の力を持つ僕。
人ならざる者の心と人ならざる者の形、人の狡猾さと無力さを持つ私。
足してしまえば、ただの人と人ならざる者二人分でしかない。
それならば、お互いにお互いを補いながら、二人で一人として生きていくのも、また必然なのだろう。
そうして、彼と彼女は、手を取り合い生きていくことを決意しました。
決意し、実行し、人に紛れ、人の世に紛れることのできた二人は、終いには結ばれました。
お互いが何よりの理解者であり、言うならばもう一人の自分なのです、そうならないはずがありません。
そして、結ばれた二人は、子を成しました。
その子供はただの人でした。
自分たちのどちらにも影響されず、ただの人として生まれてきたのです。
二人は歓喜するとともに、同じくらい恐怖しました。
この子は人として生まれてきた。
しかし、次に子を成したとしたらその子は?
それどころか、この子の子供はどうだろうか?
ちゃんと人として生まれてくるのだろうか。
もしくは、ちゃんとした人ならざる者として生まれてくるだろうか。
恐怖し、悩み、話し合い、そして二人は、自分達の子に全てを話すことにしました。
人の世に紛れる前のこと、後のこと。
その全てを子に話し、その子にも、子孫代々語り継いでいくことを約束させました。
約束は確と守られ、何代かに一人生まれる先祖方の特徴を持った者を守るために、今も語り続けられています。
時は流れ、そういった者が生まれることも減ってきた現在、一族の者達が揃って驚く出来事が起きました。
なんと、先祖方の特徴をそれぞれ持った、双子の赤子が生まれたのです。
人のような人ならざる者。
人ならざる者のような人。
どちらかが生まれることは、少ないながらに幾度もありました。
しかし、二人同時に、しかも先祖方に瓜二つの状態で生まれてきたことは、ただの一度もありませんでした。
とは言っても、一人でも二人でも大した問題ではありません。
今までと同じように、長年語り継がれてきたように、人の世に紛れて生きて行けるように、一族総出で可愛がられました。
まぁ、先祖方の見目については知りませんが、私達の見目は客観的に見ても整ったものであると自負していますから、それに加えて人ならざる者の力は一族のためにもなりますからね、可愛がられて当然でしょう。
ここまで言えばもう分かっているかと思いますが、その珍しい双子の赤子というのが僕達のことです。
先祖方とは性別が逆転していますが、それ以外は全て同じです。
姿形も、心も、その在り方も、です。
だからこそ、ここまで語ったのです。
私達は貴方達との婚姻に何ら不満はありませんし、むしろ好ましいとすら思っています。
ですが、先祖方のように、僕達はお互いが何よりも大切です。
最優先は常にお互いです。
貴方達を不快させることもあるかもしれません。
それでも、私(僕)達との婚姻を望まれますか?
人の心と人の形、人ならざる者の力を持つ私。
人ならざる者の心と人ならざる者の形、人の狡猾さと無力さを持つ僕。
全てを受け入れる覚悟はお有りですか?