プロローグ『シア』
久々の更新です
私は、呪われた子として、この世に生を受けた。
だから、家族にも嫌われた。必要とされなかった。
だから、私は『愛』を知らない。
家族の愛を知らない。愛することを知らない。
物心ついた時には既に一人だった。周りには、身の世話をする侍女や、私に勉強などを教える教師しかいなかった。
『忌み子』。気付いたときには、周りからそう呼ばれていた。
私は家に縛られた。
絶対に必要とされないのに、私は家に縛られ続けた。
教育を受け、技を知り、知識を知る。毎日、毎日、それの繰り返し。
それはまるで光のない、暗闇の日々。
でもそんな私にも、唯一の楽しみがあった。
お伽噺や英雄譚など――古今東西のあらゆる物語を読むこと。それが私の楽しみだった。
その数ある物語の中でも私が好きだったのは、【剣聖・グラン】の物語だった。
エリムベルム大陸最大の戦争、『統一戦争』で剣国【グランティカ】の始祖となった、剣聖と呼ばれた男、グランの物語。
数々の武勲、戦績、戦勝話。グランにまつわる全ての物語は、私を熱く高揚させ、昂ぶらせた。
だからこそ、私は『剣士』というモノに憧れた。
性別が女である以上、それは目指してはいけないモノだったかもしれない。しかし、それでも私は剣に憧れた。
その輝きに、魅せられたのだ。
それと同時に、私はその存在にはなれない――なってはいけない――ということも、幼いながらも理解していた。
私はその存在に為るだけの――資格が、ない。
鳥籠の少女。箱の中の少女。
其処に自由は無く、在るのは束縛。
それが、私。
けど、小さな救いはあった。
私が読んできた、数々の物語は共通して幸せな結末で終わっている。決して。不幸な結末なんて無かった。
だから私にも、きっとハッピーエンドが来る。この鳥籠から救けだしてくれる誰かが来てくれる、そう信じていた。
それは、夢見がちな少女の、勝手な願望だっただろう。
けど確かに、そう想うことで幼い私が救われていたのも確かなのだ。
幼い私は、夢を見る。
――何時の日か、この鳥籠から救け出してくれる、私の英雄が現れてくれる夢を。
そしてその夢は、叶うことなく、叶わぬ夢として、私の中で消えていった。
更新速度が遅くなると思いますが、頑張って書きます。




