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北山光晴の考察

 本当に変わったやつだな、と光晴はつくづく思う。

 男のようでいて女だとか。

 一線を置いて誰とも交わろうとしないのかと思えば、妙に人懐っこい笑顔を見せるとか。

 華奢な体からは想像できないような力を持っているだとか。

 高校から外部入学でやってくるかと思えば、人外だとか。


 光晴の通う『学園』は、人外の子のための教育機関である。

 人外……遥かな昔に、人であらざるものと契りを交わした人間の末裔。

 外見は人と変わらないため、ほとんどの人が知ることはないが、人間社会で成功者として普通に暮らしている人外は少なくない。

 能力的にも人とは比較にならないものを持っている彼らは、昔から上流社会に溶け込んで生きてきた。

 『学園』は、まだ気のコントロールの未熟な子供たちが、人間の社会で無用なトラブルを起こさないために設立された。

 彼らは小学部から高校、本人が望めば大学まで、学園の中で同じ人外の子供たちと学ぶ。

 光晴も、小学生になった年からずっと、学園の中で暮らしている。

 人外の子とはそういうものなのだと、ずっと思っていた。

 咲弥に会うまでは。


 人外同士、会えばそれだけで互いに人外だと認識できるというものではない。

 現に咲弥にクラスで一番最初に絡んだ雄大は、きっと咲弥が人外だとは気付いていないはずだ。

 今のところクラスで気付いている者は、光晴と黒澤の二人くらい。

 それ以下の能力の者では、話をしたりちょっと手で触れたくらいでは、人外と人間の気の違いには気付かない場合も多い。

 とはいえ、光晴でさえ圧倒された柔道部の猛者を軽く蹴散らしてしまった、あの怪力を見たはずの雄大が、なぜ咲弥が人外だと気づかないのか、疑問だ。

 本当は気付いているのか?

 それとも雄大にとってどうでもいいことなのか?

 光晴は後者だと思う。

 難しいことは考えず、バランス感覚だけで生きている雄大にとって、人外の女という存在はどうでもいいもの、あるいは深く関わりたくない存在なのだろうと思う。

  

 

「おーい。みっつー。これやろーぜ」


 子供のようにはしゃいでいる雄大と咲弥を眺めながら壁際でぼうっとしていると、少し離れたところから雄大が光晴に向かって手を振った。

 今日はゴールデンウィークに帰省しない三人で、町のゲームセンターに遊びに来ていたのだ。


「は? むり」


 雄大が指さすプリントシール機を一目見て、瞬殺で拒否したのに雄大は諦めようとしない。


「なに言ってんだよ! 早くしろよ! 早く早く!」


 大声で呼ぶのに加えてぴょんぴょん飛び跳ねだしたのを見て、光晴は諦めた。

 ただでさえ背が高く端正な顔立ちをしている光晴は目立つ。

 雄大だってつい目で追ってしまうような可愛い容姿をしている。

 それに加え咲弥だ。

 咲弥が行く場所行く場所、熱い視線が付いて回る。

 それはそういう視線にある程度慣れている光晴でさえ圧倒される量だった。

 当事者である咲弥は、そういう視線には慣れているのか、それとも初めて足を踏み入れたというゲームセンターに夢中なのか、さして気にする様子はなかったが、行きすぎる注目はトラブルを呼ぶ。


「しょーがねえな。一回だけだぞ」


 光晴は観念して、はしゃぐふたりを押し込むように機械の中に入る。

 珍しそうに目を輝かせてモニターを見つめる咲弥は、驚くほど無防備な表情だ。

 一方の雄大は、ああでもないこうでもないと、熱心に操作画面をいじっている。

 なんか今日無事に終われるのか、すっげえ不安……。

 早目に切り上げて帰ろう。

 いつもより無駄にキラキラをまき散らしている二人を見て、光晴はそっと心に誓った。

 

「はいピース!」


 出来上がった写真には信じられないくらいの美少女と美少年、そして仏頂面のイケメンが仲良く映っていた。


「なんで俺が美少女になってんだよっ」


 そりゃそうなるよね。

 できあがったシールを手に吠える雄大を見て、光晴はため息をついた。

 

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