表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

交流会6

 異変を感じたのは、ようやくありさの激情も治まりかけたころだった。

 肌をぴりぴりと刺す空気に、咲弥は囲まれていることを察知する。

 その気配から鬼の位置を掴むと、咲弥は腕の中のありさの耳に口を寄せた。


「鬼がいる。走れる?」


 咲弥の問いに一瞬体を固くしたありさが、小さくうなずいた。

 鬼は全部で五人いる。

 逃げる、というよりは、ありさを背に戦いやすい場所を求めて、咲弥は駈け出した。

 木陰から開けた場所に飛び出して、校舎を背に鬼を迎え撃つ態勢を整える。

 呼吸を整える間もなく、茂みをかき分けて現れたのは、全員ガタイのいい男子五人。

 角刈りの短い頭髪と隙のない構え方に、全員柔道経験者だと当たりをつける。


「こんな細っこいのに柔道できるか?」

「試合は無理でもマネージャーの仕事くらいはできるだろ」

「俺は後ろの女の子にお世話してもらいたいけどな」


 じわじわと包囲網を狭める男子たちをじっと見返す咲弥の後ろで、ありさは震えを抑えることができなかった。

 この絶体絶命の状況に、一体咲弥はどうするつもりなんだろう。

 ありさを庇うように立つすらりとした背中の向こうに見えるのは、全員咲弥の倍以上はあるだろう、あまりにも体格差のある五人の男子生徒。

 助けを求めようにも、ありさの膝はがくがく震えて走れそうにもない。

 黙って五人を見ていた咲弥が、涼しい顔でありさを振り返った。

  

「柔道部に入ってほしいらしいけど、どうする?捕まる?」


 なんでもないことのように言う咲弥に、ありさは激しく頭を横に振った。


「そっか。じゃ逃げるか」


 あっさりそう言い、咲弥はくるりと柔道部員たちに向き直った。


「悪いけど、柔道部は嫌だって。先輩たち道開けてくれない?」


 何の感情も込めずにそう言う咲弥に、柔道部員たちの顔に怒気が走る。


「生意気な奴だな。根性叩き直してやる」


 そう叫びつつ咲弥のジャージの衿を掴みに来た大男は、一瞬のうちに地面に転がっていた。

 その場にいる全員が、何が起こったのか分からなかった。

 ただ咲弥だけが涼しい顔をして、ジャージの裾を直していた。


「遅いよ。ほら、次」


 くいくい、と手のひらを上に数回指を曲げ挑発する咲弥に、柔道部員たちの顔色が変わった。

 一斉に飛び掛かってくるその迫力に、壁際のありさが思わず目を瞑る。


 どすどたどんがん。

 痛そうな音とともに聞こえるのは「ぐっ」や「ぎゃ」という声にならない声。


「お待たせ。行こうか」


 咲弥の声に恐る恐る目を開けたありさは、目の前の光景に茫然とした。

 醜態をさらして地面に体を投げ出す五人の大男たち。

 全員気を失っているようだ。

 対する咲弥は髪一筋すら乱していない。

 

「あなた、一体……」


 どうやって、と言おうとしたありさに向ける微笑みは、初めて会った時と同じ、爽やかな王子様のようだ。


「早く離れた方が良さそうだ」


 そう言って周囲に向ける視線は、ありさに向けるものとは比べ物にならないくらい鋭い。

 ありさは素直に頷き、大人しく咲弥に手を引かれ歩き出した。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ