はじまり
「ただいまー」
今日も何事も無く学校から帰ってきた
「あれ?父さん?帰ってきてるんだ…」
いつもなら帰ってきてないはずの父さんが帰って来てた
珍しい事があるんだなと思いながらリビングに向かった
「なんで保証人になってるのよっ⁉」
「俺だって知らなかったさっ」
「だいたいこんな金額一生かかっても返せないわよ…」
「すまない…」
初めて聞いた父さんと母さんの怒鳴り声
いつも笑ってて喧嘩なんてし無かったし僕もあそこまで怒られた事はない
行けないとは分かっていても僕はドア越しに聞いた
「どうするのよ?まだ碧だって学校があるのよ?
学費だって払わなくちゃ行けない…」
「分かってるさ…でも辞めてもらうしか…」
嘘でしょ?
何言ってるの?
借金?
保証人?
どういう事?
僕は部屋に戻りたかった
だけど衝撃が強すぎて体が動かない…
戻りたいっ
動いてよっ
ドサッ…
体が動いたと思ったら持っていた鞄を落としてしまった…
慌てて拾った時リビングのドアが開いた
「碧…帰ってたのか…取り敢えずソファーに座りなさい」
「うん…」
ぼくは父さんに言われるがままリビングに入ると母さんに促されソファーに座る
「聞いてたなら分かってるわよね?
お父さんの会社が倒産したの
それでね多額の借金を抱えているの」
「だから僕は学校辞めるの?」
嘘だと言ってよ
皆と別れたくないよ
ピンポーン
「お客さんね…ちょっと出て来るわね
ちょっと勝手に入らないでくださいっ」
「奥さん、俺はただ旦那さんに用事があるんだ借金を返してもらわないとな」
母さんと男の人?
なんだろうっ
そう思ってるうちに母さんと男の人がリビングに来た
「長栖さん、15億返してくれるよな?」
15億⁉
そんなに借金してるの?
僕はどうしたら…
「いい顔してるじゃねぇか」
グイッ…
いつの間にか男の人が僕の顎を掴み上を向かせて見つめている
「碧には手を出さないでくれっ
ちゃんと返すから碧にだけは…」
「お願いしますっ
必ず返しますからっ」
父さんと母さんが男の人に縋ってる…
僕はからだが固まったみたいに動かない…
怖いっ…
「しょうがねぇな…
なら離婚してもらおうか?」
「分かった」
え?
離婚…?
なんで?
嫌だよっ…
そんなこと思っているうちに母さんと父さんは離婚届けを書き終わっている
「これて碧には手を出さないわよね?」
「あ?誰が離婚すれば手を出さないって言った?
こいつを差し出せば借金はチャラにしてやるがどうする?」
「いたっ…」
男の人が顎から手を離したと思ったら髪の毛を引っ張られた
「辞めてっ…」
「拒否するか?
するならば今すぐ15億返してもらおうか?」
髪が引っ張られて痛い
だけど今は構ってられない
母さんと父さんを守らなくちゃっ
「辞めてくださいっ」
僕は力一杯男の人を押したら予想外だったらしくよろけたから僕は両親の元に駆け寄った
「碧っ…」
「碧…」
父さんと母さんが小さく見えただから僕が守るんだ
でも怖い
「ふっ…でどっちにするんだ?」
父さん…
母さん…
僕を捨てないよね…?
まだ3人で仲良く買い物とか行けるよね?
お願いっ…
それからどれくらいたったんだろう
母さんも父さんも悩んでる
すると母さんが男の人に向いて
「碧を…碧を渡します…
だからっ借金は無しにしてくださいっ」
えっ…何言ってるの…?
嘘でしょ?
母さんと父さんを見上げれば涙を貯めていた
呼ぼうとしたけど男の人に抱き寄せられた
「賢い選択だな
ならこいつはもらっていくぜ」
「嫌だっ…
母さんっ父さんっ」
連れ去られそうになって母さんや父さんに手を伸ばして離れようとしたが無理だった
玄関が閉まった…
最後に見た両親の顔が忘れられない…
泣きそうで儚くて悲しくて何時の間にか泣いていた
黒い車に乗せられた
僕はそのまま泣き続けた
気付くと眠っていた
涙を流しながら…
「玩具見つけた」
碧が言う男の人ー高峰 政樹ーはニヤッと笑いながらそう呟いた事は碧は知らない