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第七話 ブラックドラゴン

コウキ「体中が痛い……」

シュネル「どうした?最初から満身創痍で」

コウキ「俺、今回はすごくがんばったんだぞ……」

シュネル「そうだったな。そのせいで俺の活躍がなかったけど」

コウキ「お前今まで活躍したか?」

シュネル「失礼なっ!前々回チョー活躍したじゃん!!」

コウキ「あまり描写されてないけどな」

シュネル「チクショーー」

コウキ「では、本編どうぞ」

シュネル「俺だってやるときはやるんだーー!!」


 しばらく草原を歩いていたが、敵、というよりも生物に出くわさなかった。

 ここまで遭わないとかえって怖くなる。

「こうも平和だと拍子抜けするなあ。レベル上げしたいのに」

 シュネルも少しは敵に遭わないことに不信感を抱いてるようだ。

「普通のアクションゲームなら雑魚がいて、そして最後にボスが待っているんだろうけどね。このゲームの場合は本当にリアルな感じだから、竜の出現に弱い生物は隠れているのさ。洞窟の中に入ればワラワラ出てくるよ」

 椿がこちらの疑問に答えてくれる。

 このゲームのリアルへの徹底ぶりには感心させられる。

「わたしはあまり動物を攻撃したくないので、この方が嬉しいです」

「けど、それだとレベルが上がらないよ」

「それはそうなんですけど……」

 なあたんは優しい少女のようだった。

 彼女のレベルが低いのにあの金額の武器にお金を出せるのは、彼女の性格からしてその系統のクエスト以外を受けていたからかもしれない。

「なあたんには悪いけど、これから洞窟に向かうからね」

「…はい」

 仕方のないことなのだろうけれど、少し罪悪感が湧いてくる。

 コウキは彼女の考え方を聞くと、背中の武器に手を伸ばすのが躊躇われた。

「なあたんちゃんは優しいなあ。そういう子は大歓迎だよ」

 こいつには罪悪感なんてなさそうだ。

 毎度のことながら、シュネルに対してなあたんが引いていた。

「ほらほら行くよ。お二人さん」

 少し離れた所から椿が呼びかける。

 椿に促され、なあたんは逃げるように、シュネルはそれにショックを受け、そちらに向かった。


 コウキ達一向は一つの洞窟の前に着いた。

「……見られてますね」

 コウキは敵意と怯えの混ざった視線を感じて呟いた。

 その言葉に椿が嬉しそうな顔になる。

「分かるかい?一歩でも踏み込めば……来るよ」

 一同に緊張が奔る。

 慎重に慎重に近づいていく。

 そして、踏み込む。

 そこにいたのは人の膝ほどまでの大きさのネズミとリスを足してニで割ったような生物だった。

 こちらに後退りするだけで、警戒はしているが襲ってくる気配はない。

 さすがにこれでは……。

「攻撃する訳にはいかないですね」

「そうだね。この子のためにもね」

 多分、普段の自分なら敵として攻撃していたと思う。

「せっかく構えてたのに~!」

 ここにいるやつは普通に攻撃しそうだが。


 二つ目の洞窟の前。

 今度の視線はどうやら――敵意――だけのようだ。

「今度は、きますよね」

 椿に確認するように、コウキは聞く。

「違いが分かるのかい?」

「はい」

 コウキと椿がそれぞれPL・クリムゾンカリバーとショットガンを抜き放つ。

「え、どうしたの二人とも」

「武器を出して、何かあったんですか?」

 シュネルとなあたんが首をかしげる。

 この二人はこの気配を察していない。

「今回は多分襲ってくるよ」

 椿の発言。それでやっと理解したらしい。

 二人のそれぞれの得物を構える。

「シュネルくん、今回はレベル上げができると思うよ」

 そして洞窟に踏み込む。

 すると今度は灰色のオオカミのような生物が飛び掛かってきた。

 コウキは横にかわし、バッティングの要領でカリバーを横薙ぎに振るう。

 オオカミは腹を斬られたが、難なく着地した。

 どうやらコウキの攻撃では威力不足だったようだ。

「ウォルか。連携プレイが取り柄の奴らだけど、この狭い洞窟内なら怖くないね」

 椿は言いながらショットガンでオオカミ――ウォルを撃っていく。

 椿は一撃で倒してしまった。

 レベルの差を痛感させられる。

 シュネルが構えた魔道書が青白く光る。

貫通氷弾アイス・ピアス

 前回のものよりも尖った氷弾が放たれる。

 それは敵を倒すことはなかったものの多くの敵を貫いていき、数体が凍りついた。

「えい、えい」

 なあたんが弓を連射する。

 何本か外れてしまっているが、コウキやシュネルが倒し損ねた相手に止めを刺す。

 そちらを見ようとはしていない。

「なんか、ハメちゃってます?」

 シュネルが呟いた。

 確かに狭い通路で一方から遠距離攻撃をしたらハメになるだろう。

 だがコウキのみ近接戦なので、コウキには全くハメには感じられない。

 コウキ、シュネル、なあたんの三人掛かりで仕留めていく。

 それでやっと椿と同じ位のペースだ。

 十数体倒したところでウォル達は下がっていった。

「深追いはするんじゃないよ。この先は広い空間になってるかもしれないからね」

 先程も言っていた連携プレイを警戒しているのだろう。椿一人ならどうにかできるかもしれないが、コウキ達には荷が重いかもしれない。

 それともう一つ理由があるかもしれないと、コウキはなあたんの方を見た。


 その後も洞窟を巡って経験値稼ぎをした。

 コウキとシュネルは1、なあたんは2ほどレベルが上がった。

「それじゃあ、そろそろフレイ・ディラグのところに行こうか」

「行きましょう、ぜひ!」

 シュネルは初の竜との戦いに興奮しているようだ。

 それはコウキも同じである。

 竜――それは男ならば憧れる存在である。

 それと現実ではないとしてもこの体で戦えるのだ。

 なあたんは少し強張っているが、その気持ちも分かる。

 それに比べ椿は動揺していないようで、場数の違いを感じられる。

「ここを越えたところにいるんですね……」

 武者ぶるいのせいだろうか、体が震えて声が少し上擦ってしまう。

「そうだよ。…恐いかい?」

「少し」

「わたしも」

 椿以外にとってはこれが初の大型ボス戦だ。

 どんなゲームでも初めてのボス戦は興奮するものだし、ここではそれが体感されるのだ。

 あそこでなぜかシャドウボクシングなんかをしてるシュネルも、本当は女の子の前で気丈に振舞っているだけで、内心は恐いに違いない。

「さあ、行くよ」

 その言葉に無言でついていく。

―――――エリアを移動します―――――

 少しの空白の後に次のエリアが眼前に広がる。

「……なんですかここ……」

 エリアを越えた先、そこの雰囲気は異様だった。

 そこは確かに草原だった。

 草原なのだが、風景が歪んで見える。

 それに、コウキには忘れられるはずもない、ノイズがところどころに……。

「こんな所だったかい、ここは……」

 突然の異常に椿も対応できていない。

「も、戻りましょうよ。椿様」

「ああ」

 全員で急いで戻るのだが、そこに見えない壁があるように先に進めない。

 この異常な空間に閉じ込められた。

 グゴアァァァーーー!!

 咆哮が聞こえてきた方を向くとそこには黒い竜がいた。

 圧倒的な存在感、人など取るに足らないというような威厳、そして空間と同じ異常さ。それが猛り狂い、黒い火球を放っている。

 これがこれから挑もうとしていたものなのか……。

「おかしい」

「え?」

「フレイ・ディラグは赤い竜のはずだし、あそこまで凶暴じゃない。それに……」

 椿がフレイ・ディラグの方を指さす。

「あいつを中心に歪みが発生してる」

 椿に言った通り、フレイ・ディラグの近くほど歪みが酷い。

 それはこの竜が異常の原因ということだろうか。

「ということは、あれを倒せばこれは治まるということですかね」

 シュネルの一言には一理ある。というか現状それしかないだろう。

「やりましょう」

 コウキは今できることをする。そう決めた。

 例えそれが不正解でも。

「それしかないみたいだしね」

 椿は左に腰だめにガトリング砲を、右手にライフルを構えフレイ・ディラグに狙いを定める。

 なあたんはキッと口を結んで、弓に矢をつがえる。

「燃えてきたあ!」

 シュネルも気合十分だ。

 コウキは走り出す。

 それと同時に他の三人の一斉射撃が始まる。

 コウキも走りながらハンドガンを発砲する。

 これだけの斉射を受けて相手に効いてる様子はない。そこまで規格外なのか。

 肉薄。そしてPL・クリムゾンカリバーによる上段斬り。

 ……感触がない。まるで空気を斬っているような。

(まさか!)

 当たっていないのか、全てが。

 コウキは周りを巡りあらゆる部分を斬りつける。

 どこを斬っても同じだ。全く感触がない。

 ドゥンッ!

 突然の爆発にコウキは飛ばされる。

 あまりダメージがないのはフレンドリーファイアだからだろう。椿のライフルがこちらを向いていた。

 さっきまでコウキがいたところに竜の尾が振り下ろされていた。

 椿の攻撃がなければ喰らっていた。

 フレイ・ディラグが三人の方に火球を吐く。

 それに気付いたのだろう、シュネルが防御用の呪文のロングスペルを唱える。

 だがダメだ。それには……。

「ガードするな!避けろっ!!」

 コウキは叫ぶ。

 その声を聞き咄嗟に回避行動を行う。

 ノイズ入り(・・・・・)の火球は音も立てずに空間を抉った。

 あれを喰らったら恐らく……。

 通常攻撃も魔法も一切効かない敵相手にどうすれば。

 一つだけあるとすれば……。

 唯一ノイズの中で残った――ブロークンエッジ。

 これしかない。

 迷いなく抜き放つ。

 何が起きるか分からない。けれどできることはするしかない。

 細いビームの刃が展開される。

 この場を任せるには頼りない気もする。

「うあああああ!」

 それでも構わずに斬る。

 ザシュ

 ……当たった。

 これならばダメージを与えられる。

 敵も初めてのダメージに気付いたようで、コウキに尻尾を叩きつける。

 それを寸でのところで回避する。

 早期決着。

 そのためにコウキは”固有スキル”を発動させた。


 椿達の視線の先ではコウキが縦横無尽に飛びまわりフレイ・ディラグに斬撃を与えていた。

「なんなんだい?あれは」

 普通のプレイではあそこまでの行動はできない。

「あれはコウキの固有スキル『狂化』ですよ」

「狂化……」

 固有スキル―――それはその人個人が種族、職業に関わらず一つ持っているスキルだ。

 これのおかげで本来はできないスキルの組み合わせができる。

 コウキの『狂化』も本来は狂戦士のみが持つスキルである。

 理性をすっ飛ばして攻撃のみを行う。

「あれだけやってもビクともしなかった相手がダメージを追っている……」

 レベル差や武器の性能差以外のなにかがある。

 ただ、それは歪で……。

「コウキさんが恐いです……」

 なあたんの言う通りなのだ。


 狂化をしてビームセイバーが斧剣の形に変わった。

 MPが切れるまでただひたすら攻撃。

 思考も攻撃しか考えられなくなる。

 ガアァァァァ

 それはコウキの咆哮か竜の悲鳴か。

 今まで圧倒的だった存在は、一人の少年に圧倒されていた。

 何度も何度も何度も攻撃をする。

 そして遂にフレイ・ディラグが倒れ伏した。

 MPも同時に切れる。

「ハアハア」

 終わったのだ。

 

 そのときはそう思った。

 

 グゥ…グァァ……アアア!

 フレイ・ディラグが再び立ち上がる。

「?!」

 一度倒した敵が起き上がる。

 今回はあり得ないことが起こり過ぎだ。

 火炎放射の呼び動作を行う。

(無理だ。避けられない!)

 最後を覚悟したその時。

 ドン

 銀の閃光が竜を真上から貫いた。

 その一撃で竜は姿を消す。

 そこに残った人影は剣を一振り。

 そこから放たれた剣閃がノイズを消していく。

 人影、それは幾何学模様の黒服に身を包んだ、コウキがあのときに見た銀髪の少年だった。

二週間開いてしまった。

そしてテスト期間によりまた二週間開くという……。


あと、個人的に文の始まりが“そ”になりやすいような。

そこは個人のスキルなんでしょうね。

ああ、上手く書けるようになりたい。


そうそう、先日予選会というものがありまして、


アリスの格好をしました!


不思議の国のあいつです。

では、また次回。(爆弾投げっぱ)

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