第二話 ファーストオーダー
誤字・脱字の報告お願いします。
アドバイスをぜひください!
「結構集まってるなあ」
シュネルの言う通り、クエストルームには、緊急クエストの内容を知るために多くの人が集まっていた。
コウキ達が到着したあとすぐに、大型モニターから放送が流れ出す。
「今回の緊急クエストの説明を開始します。
先ほど食料貯蔵プラントへ、謎の物体の衝突が確認されました。
プラントに何かがあっては、コロニーへの食糧の補給が一時的に不可能になってしまいます。
ですから、みなさんにはプラントの調査と取り残された者の救助、そして可能であれば、事態の解決を依頼します」
調査と救助、これならば敵から逃げ回れば俺でもクリアできそうだ。事態の解決はこの際諦めてもいいし、もっとレベルの高い人に頼んでもいい。
「これ受けるか?これならクリアできるかもしれないぞ」
コウキの発言に、シュネルはう~んと悩んだ後に思案顔で答える。
「そうだなあ……。これなら他のクエストを受けた方が経験値的には良さそうだなあ」
シュネルはあまり乗り気ではないらしい。
確かに経験値を考えれば、殲滅系や討伐系がいいかもしれない。
「まだ続きがあるみたいですよ」
なあたんさんが、控え目に教えてくれる。
クエストの情報が更に放送される。
「なお、このクエストはアンノウンクエストとなります。受注する方は十分に注意してください。
受注は先着八名までとなります。受付時間は今から三分です」
放送が終了し、周囲がさっきまでとは違い興奮したような雰囲気に包まれる。
「あの、どうしてみなさんはこんなに興奮してるんでしょう?それにアンノウンクエストって……」
「俺もアンノウンクエスト、ってのが分からないんだけど」
コウキとなあたんがシュネルに聞く。聞かれたシュネルは得意気だ。
「それではシュネルさんが、お二人に教えて差し上げましょう」
なんかシュネルが輝いて見えた。
「アンノウンクエストっていうのは、その名の通り詳細不明のクエストのことで、出現モンスターの種類やレベル、手に入るアイテムが全然分からないんだ。だから、とてもレア度の高いアイテムが簡単に手に入ったり、一攫千金が狙えたりするんだ。しかも、中にはアンノウンクエスト限定のアイテムもあるんだよ」
「おおー」
言い終えたシュネルは、キャラの顔と釣り合うだけの雰囲気を纏っていた。
ローブ、エルフの青年、授業。なんか一つのキャラが完成したようだ。
「ただ、手に入る物が労力に見合わないことも多いんだけどね」
「まあ、そういうこともある。……ってあんたは、いえ、あなた様はどなたでしょうか?」
シュネルの説明に長身の女性が説明を付け加える。
コウキは女性に心当たりはない。なあたんのことも見るが、彼女も知り合いではないらしい。
「あたし?あたしは椿。まあ、ただのお節介な先輩だよ」
「はあ」
椿と名乗った女性は大人びた女性だった。地味ではない、しかし派手すぎないコートを着ている。いや、着こなしている。
シュネルなんかは鼻の下が伸びっ放しだ。顔がイケメンだから逆に痛い。
なあたんに服を少し強く引っ張られる。どうしたんだろうか。
「あたしはこれ受けようと思うんだけど、あんた達は?」
「受けます!よっしゃ、みなぎってきた!」
シュネルは即答だった。すごいオーラだ、邪念まみれの。
なあたんは迷っているらしい。
「そこの二人はどうするんだい?」
椿がもう一度聞いてくる。
シュネルはなあたんには期待の目を、俺には、友人として来て欲しい、が、来られると困るという目で見てくる。というか、そんな素直に感情を顔に出すな。
「俺も受けます。なあたんさんは?」
「わ、わたしは……」
なあたんは少し考えた後に、決心した顔で言う。
「わたしも行かせてください!」
「じゃあ、受注しようか」
四人はカウンターに向かう。
カウンターでは、人形のような少女が受付をしていた。
「緊急クエストを受けますか?それとも、通常クエストですか?」
受付に、感情の籠ってない声で聞かれる。
「緊急クエストをこの四人で受けるよ」
「了解しました。それでは、アカウントカードをこちらに」
アカウントカード――プロフィールや戦跡などを記した身分証明書を渡す。
「受注完了。それではしばらくお待ちください」
受付を後にし、適当な席に着くことにする。
その途中でシュネルに話しかけられる。
「なあ、受付のリセフさんって素敵だと思わないか?」
「受付のNPCってそんな名前だったのか。いや、まあそうだな。たしかに可愛いな。けど、NPCだぞ」
「なに言ってんだ!このゲームはNPCとの恋愛も認められてるんだぞ!!」
「まあそうだけど……」
「俺は絶対リセフさんをオトす!!」
こいつのこと置いて行っていいかな。
いや、そういう楽しみ方もいいとは思うが、こう、隣にはいたくないな、そういうやつと。
四人掛けのテーブルに着く。
「受注人数残り二名です」
受付の声が聞こえる。どうやら、先に二名受注していたらしい。どんな人物だろうか。
「そうだ。まだ三人の名前を聞いてなかったね」
椿が質問する。
確かにこれから同じクエストを受けるのだから、自己紹介をしておくべきだろう。
「私奴の名前はシュヴァーネル・アルタロン・ラ・フォングラス・ドリュッセンと申します。以後お見知りおきを」
ここぞとばかりにシュネルが自己紹介する。今回は最後まで言わせる。
しかし、椿は困った顔をしていた。やっぱり長すぎだろ、その名前。
「あー、どう呼ぼうか」
「俺達はシュネルって呼んでるんで、それでいいと思いますよ」
シュネルの恨みは買ったかもしれないが、仕方ないことだろ。アルタロンあたりで止めておけばよかったのに。
「俺はコウキっていいます。よろしくお願いします」
無難に済ませることにする。
シュネルを反面教師にして。
「わ、わたしは……えーっと、なあ、なあたんっていいま、す」
なあたんはすごく恥ずかしそうだ。俺だったら恥ずかしさで死んでいただろう。
というか、死んでしまうんじゃないかって位に顔が赤いぞ。
ふと思ったことを椿に聞いてみる。
「椿さんって、クラスはなんですか?」
クラス、それが分かればその人の戦い方が大体分かり、作戦が立てやすくなる。
作戦を立てられる程、経験を積んでいないが念のため。
「あたしのクラスはヘビィガンナーだよ」
「ほ、本当ですか!そんな人に手伝ってもらえるなんて光栄です!」
ヘビィガンナーとは、重火器を専門とする上位クラスだ。重火器以外の倍率が低く、扱いこなすのが難しいクラスの一つである。
「そんなことはないよ。あたしはただ遊んでたらこうなっただけさ」
椿はそれでも奢った感じはしない。
純粋にすごいと思う。この人と知り合いになれてよかった。
「いえいえ、とても尊敬します。ちなみに私は白魔術師です。なあたんちゃんは」
「狩人です」
小声で答えるなあたん。
狩人は弓や短剣、トラップを得意とする基本クラスだ。攻撃と支援を両立する、パーティに一人は欲しいクラスだ。
白魔術師は回復と水、風、光系魔法を得意とする基本クラスだ。
「コウキさんはなんですか?」
「俺は、ソルジャーだよ」
苦手武器が無く、強いて言えば軽量武器が得意な基本クラス。若干回避力も高い。
「これで全員のクラスが分かったわけだ」
「時間となりました。緊急クエスト参加者は出撃ゲートに来てください」
話してる内に三分たったらしい。
「それじゃあ行こうか」
「どこへでもついて行きます!」
「はい」
「わかりました」
コウキ達四人は出撃ゲートへ向かった。
ゲートにはコウキ達以外に三人いた。どうやらあの後に一人受注したらしい。
「さあ、やったるぜ!待ってろよレアアイテム!」
一人はなんか煩い犬の獣人だったが、弱そうな感じはしなかった。
「どうしようタカヒロ。私、コワーい」
「だいじょうぶさ、ヒロミ。僕が守るよ」
バカップルはパス。
ゲートを抜けると格好が変化する。
コウキは体の所々にプロテクターが付けられ、背中に長剣、腰にハンドガンが装備される。
シュネルはローブに青白いラインが走り、魔道書を持っている。
なあたんは弓と盾を装備し、腰に矢筒と短剣を付けている。
椿はコートが無くなり、その下の黒い水着姿が晒される。その上から様々な弾種のマガジンベルトを装備し、手にはヘビィガトリング砲、肩にはライフル、腰にはショットガン、所々に手榴弾を装備した、露出が多いんだか少ないんだか分からない装備だった。
獣人の人は大剣とマシンガンを持ち、バリアバッチを付けている。
バカップルはペアルックの片手剣、ハンドガンだった。
それぞれの情報が表示される。
エントリーリスト
Lv.24 タカヒロ 戦士38
Lv.23 ヒロミ 戦士37
Lv.48 椿=紅龍 ヘビィガンナー64
Lv.13 シュヴァーネル・アルタロン・ラ・フォングラス・ドリュッセン 白魔術師13
Lv.16 ヤノ・コウキ ソルジャー20
Lv.9 なあたん 狩人7
Lv.85 ガーベル クラッシャー83
no entry
「椿様は『紅龍一族』だったんですか!?」
シュネルが衝撃を受けていた。
「まあ、その話は後でね」
椿さんはそれを軽く流した。
シュネルの反応からは、そんな軽いことじゃないように感じられたが。
―――――食糧プラントに転送します―――――
メッセージの後、食糧プラントの入り口についた。
入り口は禍々しく黒くなっており、中で起こっていることの異常性を物語っていた。
二話目にして心が折れそうです……。
まあ、楽しいからいいんですけどね。
ちょっとした解説
この世界ではレベルに上限がありません。また、クラスレベルは100までです。クラスの後に書いてある数字がそれです。
質問・アドバイス大歓迎です。
次回は戦闘描写がある予定です。