第十四話 グランドリーブ
誤字脱字、アドバイス、感想、そして質問がありましたら、ぜひぜひお聞かせください!!
お願いしますっ!!
湿地帯の中を進み続ける。
どれだけ進んでもノイズどころか敵の影一つ見つからない。足場がぬかるんでいるせいで足の疲労も早い。これは作業ゲーよりも地味に辛いのではないだろうか。
「来い来い来い……」
それでもまだ気合の続いているシュネルはすごいと思う。そうでもなければやってられないのかもしれないが。もう既に言葉を発しているのはシュネルだけだ。
「ディエゴさん、ここにはノイズはないんじゃないですか」
「そうですね…。やはりまだ未完成ということでしょうか……」
探せども探せども見つからない。ノイズの予兆すら起こらない。それはそれで喜ばしいことなのだが、ダートフィークすらも現れないと何も進まない。
「ん?」
何かがいたような気がして後ろを振り向く。けれどやはり何もいない。あまりに長い探索で疲れているのだろうか……。横を見るとブリネナも後ろを向いていた。もう諦めた方がみんなの為なのではないだろうか。
シュネルとディエゴはこちらが後ろを振り返ってる間に先に行ってしまっていた。二人に諦める提案をするために駆け出そうとしたが、足が重い。湿地帯の悪い足場のせい化とも思ったが、これには違和感がある。まるで何かを巻き付けられてるかのような……。
「おわっ!?」
いきなり足を引っ張られた。あまりの勢いに前のめりに倒れ込んでしまう。コウキの声に反応してシュネルとディエゴが駆け寄ってくる。けれど間に合わない。
「コウキッ!!」
シュネルが必死に手を伸ばし飛び込むが届かない……。
ザバンッ
急加速したブリネナがその勢いのまま小太刀で水の中のモノを斬り抜く。
ダメージを受けたそれが水中、いやその下の泥の中から姿を現した。
全長10メートルあろうかという土色のウナギだった。コウキはその髭に掴まれている。多分こいつがダートフィーク……!
攻撃に驚いてかダートフィークは電撃を全身から放つ。その行動を予測していたシュネル達は間一髪でかわすことに成功するが、ダートフィークの髭に捕まっているコウキはもろに食らってしまう。さらにダートフィークは暴れ、コウキが口の中へ。コウキは体が麻痺して動けない。
「よくも…、よくもコウキを!!」
シュネルが魔道書をダートフィークに向ける。その表情はいつもの軽薄そうな顔ではない。鬼のような形相だ。
「風刃風刃風刃風刃風刃風刃………」
息の続く限り風刃の呪文を唱え続ける。多数の風の刃が降り注ぐが、細かい傷をつくるだけで効果的ではない。だがそんなことはシュネルには関係ない。目の前のこいつを倒す!!!
シュネルがもう一度魔道書を構えようとしたとき、ディエゴがそれを制止した。
「なにすんだよ!?俺はコウキを助けるんだよ」
「落ち着きなさい!そんな闇雲にやってなんとかなると思ってるんですか!」
「けどっ!」
叫んだシュネルとディエゴをブリネナが蹴り飛ばす。シュネルが抗議をしようとすると、そこには電撃を小太刀で受け止めるブリネナの姿があった。彼女は多少なりともダメージを受けているが麻痺はしていないようだった。
「そんな不毛な言い争いをするくらいなら動け。戦闘中だぞ」
「わ、分かった」
ブリネナの行為にシュネルは我を取り戻した。
ブリネナはそのまますぐにダートフィークの下へ攻撃に戻る。スピードと属性耐性の高い彼女にとって防御面ではダートフィークと好相性なのだが、一撃一撃の威力が足りない。このままでは倒した頃にはコウキがどうなっているか分からない。
そうだ。ディエゴの言った通り落ち着け。魔法職であり、上位職である錬金術師よりも多分職種的に高威力を出せるであろう自分がやるんだ。思い出せ攻略サイトの情報を。
(たしかダートフィークは頭が弱点。けど、どの部位が弱点かは個体差があるんだよな……)
弱点部位を観察する。幸いブリネナがあちこち斬っているおかげでどこが有効か解り易い。
「火弾」
ディエゴの作りだした火炎弾が直撃する。ブリネナの一撃よりは効いているが、それでも錬金術師は威力型の魔法職なためかあまり威力は出せない。
一ヶ所だけ膨らんでるところを見つけた。恐らく、そこにはコウキが…。倒すよりもそこに穴を開けた方が助かる確率は高い。
判断からの思考は速かった。
「ブリネナちゃん!『影縫い』でそいつの動きを止められるっ?」
「5秒程なら」
「じゃあ、合図したらお願い!ディエゴはブリネナをサポートして!」
言うと同時に駆け出す。ダートフィークの腹の膨らみ、その体と垂直になる直線上に位置取る。
「『フライ』!」
シュネルが地面から浮かび上がる。これがシュネルの固有スキルの『フライ』だ。MPを消費する代わりに空中浮遊が可能となる。賢者クラスの魔法職の中級スキルだ。
「風よ、大いなる風よ。一陣に駆け抜け彼の者に示せ。我が名はシュヴァーネル・アルタロン・ラ・フォングラス・ドリュッセン。世が光を手繰る者なり。斬り崩せ……」
呪文の詠唱を始める。ブリネナとディエゴは攻撃方法を威嚇に切り替えあまり動かないようにしてくれている。その最中、電撃がシュネルに向かってきた。
(間に会え!)
シュネルは煙玉を投下した。
「『影縫い』」
ブリネナが忍者系スキル『影縫い』を発動した。それは文字通り敵の影をクナイや刀で縫い付け動きを止める技だ。
「風刃!!!」
巨大な風の刃がダートフィークに向かって放たれた。
「く、うぅ……」
コウキはどうやら気絶していたらしい。
ここはどこだ。とても窮屈だ。全身がベトベトする。
(俺はたしか、ダートフィークに食われて)
ならここはその腹の中か。
このままここでゲームオーバーになるのか。
そしたらまた始めからやりなおし。そこからでもノイズの調査はできる。けれど、レベルの低い状態では調査範囲が狭まってしまう。それにブロークンエッジが失われてしまう。
(俺は、生き残らなきゃ!)
だがどうやって?ここから出る方法なんて……。
いや、ある。
ここで使う力は選んでいられない。
電撃を受けシュネルは地面に落下する。
結果として風刃は失敗した。コウキを傷つけないように角度を計算して撃ったのだが、威力不足のせいで肉の半分までしか斬れなかった。
「ごめん」
助けられなくてごめん、コウキ。
シュネルが斬り裂いた腹の傷、そこが膨張し始めた。
ウォオオオオオオ!!!
腹が裂け人影が飛び出す。右手には紅い剣、左手には逆手のビームナイフ、獣の瞳をした『狂化』コウキだ。
重力に任せカリバーを突き立てる。斬斬斬斬斬斬斬斬…………斬斬。理性など一切なしにただ目の前の敵を狩る。それだけを考える。
だがダートフィークもやられるばかりではない。全身から周囲に電撃を放ち、なお且つ暴れまわる。近くで戦っていたブリネナは予備動作を見て回避に移るが、コウキは構わずに攻撃の手を止めず、そして電撃と体当たりを受けて飛ばされる。それでもすぐにコウキは動き出そうとするが、僅かに震えるだけで全く動けない。
ダートフィークは電気を纏ったまま去ろうとする。それをブリネナが小太刀を投擲して止めた。それはちょうどコウキとシュネルで斬り裂いた所に刺さっている。シュネルとコウキの麻痺が解けた。コウキの方が後に麻痺したはずなのに同時に回復している。これも『狂化』の影響なのだろうか。
コウキは走り、シュネルは構える。
「疾風」
加速の風魔法をコウキにかけ、その速さと身に纏う雰囲気からまるで猛獣のようだ。
そのまま弱点である頭に向かって一気にカリバーを振り抜く。土色の巨体が水面の打ちつけられた。これでついにダートフィークを倒せた。けど何故……。
ウォオオオン!!!
何故コウキは『狂化』したままなんだ!?
コウキがシュネル目がけて突っ込んでくる。今までの疲労からか勢いが落ちていることがせめてもの救いか。ギリギリで攻撃をかわす。思いっきり降り抜いたカリバーが地面に刺さる。
カリバーを抜こうとするコウキを、ブリネナが手刀で気絶させた。
コウキから発せられる狂気の雰囲気が抜けた。
「なんだったんだ、一体」
そう言って心配そうな顔でコウキのことはシュネルは背負った。
= = = = = =
コウキ達が追い求める一つの手掛かり、銀髪の少年は湿地帯に降り立っていた。
ノイズの駆逐がついに終わった。大型のノイズは比較的簡単に処理できたが、細かいのを消すのは骨が折れる。
コウキ達がいるエリアにも実はノイズはあったのだが、これによりニアミスだったのである。
この星での今現在の仕事は終わり、帰路につこうとする。
ウォオオオオオオ!!!
獣の咆哮じみた音が聞こえてくる。普通ならば狼などの生物の鳴き声と判断するが、少年にはこの声に聞き覚えがある。二度もノイズの現場で会ったあの少年だ。
「……偶然か。それとも……」
次会ったら確認してみるとしよう。この前の問いについて。
そして銀光をなびかせ姿を消した。
ぷふ~。なんとか終わった~。できれば先週上げたかった。持論『休みは人をダメにする』。
さて、これを書きあげた本日、高校で運動会をしました。なんとうちの学校は進学校なのに、運動会も体育祭もあるのです。(バーン)
そしてその後に劇の公演を見に行って、もうへろへろです。
なので、私のことを休ませてくださいな。
物語や、あとその他の質問があったら、どんどん聞いてください。なるべく答えます。……という感想欲しいよアピール。(苦)
ではではまた次回!!