第十三話 トライアルラン
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翌日、惑星ジィグラへ調査のために集まった。
とてもどうでもいいことだが、ログアウトして寝た後、現実では体を動かしていないのに全身が筋肉痛なような錯覚が起こったりもした。
「ピッフルグラスも自然が豊かな所でしたが、ここはなんといいましょうか、鬱葱としていますね」
ディエゴの言う通りで、ミッションカウンターの窓から見える景色は深緑一色だ。太陽はギラギラと照りつけているが、木々の影でむしろ薄暗いくらいである。
このジャングルを見ると、ディエゴ達と会う前に受けた『どこの無双ゲームだよ』と言いたくなる戦いを思い出す。
「ディエゴ、あれを」
「ええ分かっていますよ」
ブリネナに促されディエゴは手のひらサイズの白色のレーダーのようなものを取り出した。しかしそれは今は動いていないようである。
「これは?」
「前々から作成していたノイズ探知装置です。昨日一日で集まったデータ履歴を入力してやっと試作機ができました」
「おおすごいじゃん!そんなもの作ってたのかよ!!」
目の前にある白い物体がそんなすごいものだとは思いもしなかった。これさえあればこれからの活動がぐっと楽になる。
「今回はこの装置を使ってノイズを探そうと思います。ですが…」
ディエゴがコウキに手を伸ばす。その手は何かを求めているようであった。
「ブロークンエッジを渡してください。その対ノイズデータが無ければ正常に動かない可能性があります」
「分かりました。はい」
ブロークンエッジを手渡した。その時ディエゴの手が奪い取るようにも感じた。多分、表面上には出ていないが内心では危機感を覚えているのだろう。
ディエゴは更に別の機械を取り出した。それにブロークンエッジを繋ぐと何かの操作を始める。
「今度のはどんなやつなの?」
先程のノイズ探知装置を見たからかシュネルの期待は高まっている。もちろんコウキもだ。
「あまり大きな声では言えませんが、これはこのゲーム専用の改造装置です」
「かいぞっ、もごふがっ!」
予想通りにシュネルが大声を出しそうだったので、あらかじめ張っていたブリネナに口を押さえられていた。それにしても改造装置そんなものがあるとは。
「このゲームには繋げる機材がないので苦労しました。繋いだ機械からログインの度に微量のデータを送り、そしてそれを繰り返してこのゲーム内で組み立てました。管理局に知られないようにノイズ関連限定の機能だけに特化して他の機能を排しているので他のことには使えませんが」
「改造…できたんですね……」
このゲームはそこらへんの管理はとても厳重だと聞いていたのだが。それをできるだけディエゴが凄いということなのか。……改造できたのか。
ややあって作業が終わったのかブロークンエッジを返してもらった。
「応急的ではありますが一応は終了しました。これから試験運転をしたいと思います。外へ出ましょう」
促されるままに外へ出る一同。そしてそのまま人気のないところまでやってくる。
「そういえばどうして外に?」
ふと疑問に思い聞いてみる。
「この装置が暴走しないとも限りませんからね。もしそうなった場合、管理の厳しいあの場よりもこちらの方が少しばかり安全ですから」
結局やってることはルール違反なことなのだ。例え正当な理由があったとしてもその事実は変わらないということである。そう思うと少し微妙な気分になってくる。
「早く、早くやってくれよ!」
ここで技術の結晶に目を輝かせているこいつには、そんなコウキの悩みなんか関係がないようだった。
シュネルの催促に対してディエゴはそれでも悠然としている。というよりは誇らしげにさえも見える。褒めてほしかったのだろうか。
「まあそう急かさないでください」
「急げ」
なんとなく今日はブリネナが言葉を発しているような気がする。決して言葉数が多い訳ではないのだが、短時間に二度聞いたからだろうか。
名残惜しそうにディエゴが探知装置とジィグラの世界地図を広げる。
「いきますよ……」
探知装置が起動する。画面の中に変化は起こらない。探査範囲を拡大する。100メートル、200メートル、300メートル…。
「見つからないですね」
「管理局に見つかる危険性が高まりますが、仕方がありません、範囲を更に拡大しましょう」
更に範囲は広がる。400、500、600、700、……1500メートル。
「なあ、ここにはないんじゃないか」
「そうですね。これ以上範囲を拡大するのも危険ですので場所を変えましょう」
シュネルとディエゴが諦めかけたその時。
ピ、
「待って!」
コーン。
コウキが二人を止める。
1600メートル。探知装置には一つの点が示されていた。そこを地図の地点と照らし合わせ……。
ボンッ。
探知装置が破裂してしまった。
「やはり試作機では限界がありましたか」
ディエゴが肩を落とす。自分の機械が壊れたことがよほどショックだったのだろう。
「場所は判った。今はそれで十分だ」
ブリネナに喝を入れられるディエゴ。これはこれでいいコンビネーションなのだろう。
ブリネナが先程の地図上の地点を指さす。
「湿地帯か……」
湿地帯、この星では珍しい木の少ない場所らしい。見晴らしはいいが地面はぬかるんでおり、戦闘のし辛さではジャングルよりも上かもしれないと聞いている。
湿地帯へ向かうためにクエストカウンターに適当なクエストを受けに向かう。
多々あるクエストの中から目指す地点のクエストを探し出す。
ダートフィークの討伐
ランクE+
目的地 湿地帯
報酬 一人2600テルス
「ダートフィークかあ」
シュネルが嫌そうな顔をする。コウキはダートフィークのことをよく知らないが、ゲームの情報通であるシュネルがそのような態度を取るということはそれだけ厄介なのだろう。
「そいつってどんなやつなの?」
厄介な相手であるならば情報は共有しておくべきだ。とりあえずそれだけでも状況は変わってくるはずだ。
「うーん。ダートフィークは電気ウナギをモチーフにしたモンスターらしくて、攻撃力は高くはないんだけど電撃の範囲が広いうえに麻痺効果まで付いてて、『初心者殺し』なんて呼ばれてたりもするんだよ。あ、あと動きがトリッキーでしかも速い」
途端に勝てなく思えてくる。ゲームではよくある『CMは難しそう』みたいなものであると期待したいところだ。
ディエゴが腕組みをして難しい顔をしている。
「ノイズの調査の前に強敵に勝つ必要があるというのは、なんとも煩わしいですね」
探索クエストならばそのようなことはないのだが、リアルを徹底した結果、クエストが発生しているエリアには探索に行けないという制限がかかっているのである。
「方針としては属性・状態異常耐性の高いブリネナを主軸に、私、コウキさん、シュネルさんでサポートに回るということでどうでしょう」
「俺はそれでいいと思います」
「俺も賛成だよ」
対ダートフィークの会議は終了しクエストを受注に行く。
「これを」
ディエゴが受けるクエストをカウンターに持っていきリセフに渡す。
「それでは参加者のアカウントカードを」
そうして手続きを終わらせた。これで調査に行く準備は整った。
「ダートフィーク、これは関門となるクエストとなると思われます。気を付けて行ってください」
リセフの見送りを受けて出撃ゲートへ。
「なあ聞いたか?リセフちゃんが、リセフちゃんがデレたぞ!?」
異様にテンションが上がっているのがいた。今日一日こいつはテンションが高い気がする。……明日、学校で廃人になってなければいいが。
「はいはい。デレたデレた」
「そんな簡単に流すなよ!?俺にもツキが回ってきたかもしれないんだぞ!!」
多分廃人確定だ。
エントリーリスト
Lv.30 ディエゴ・サベル 錬金術師21
Lv.36 ブリネナ 忍者45
Lv.23 シュヴァーネル・アルタロン・ラ・フォングラス・ドリュッセン 白魔術師30
Lv.26 ヤノ・コウキ ソルジャー34
出撃ゲートにていつもの如く武装が展開される。
コウキはプロテクターにPL・クリムゾンカリバー、ブラスターガン、ブロークンエッジ。シュネルは光のラインに魔道書。ディエゴはその手にメイスを持つ。ブリネナは赤文字が全身を流れ、小太刀とクナイを装備した。
そのまま湿地帯への転送が始まる。
トプ。
降り立った地点は既にぬかるんでいて歩きづらい。
これからの戦いの難しさはこの時点からハッキリしていた。
ラノベって一冊十万字なんですね。この前の「ラノベ一冊分書いた」とか書きましたが超えてませんでした。サーセンww。
いや十万。過酷な道ですね。まあ気長にやりますよ。
応援してくれたらウレシーなって。(ちらちら)
それではまた次回!