第十二話 グレイハント
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状況はあまり良くない。
周りを取り囲むヴォルフは全部で五十はいるだろうか。それに比べてこちらは六人。この人数でその程度の数の敵なら普段なら苦しくないが、相手はヴォルフ。個々の性能よりも群れ全体の総合力が優れた敵だ。対するこちらはお互いの実力を知らない。コウキが知っているシュネルとなあたんでは、コウキも含めて今回の状況を打開できそうにない。
一同の視線が桜花に集まる。
「僕は兄さん姉さんよりも弱いんですけどね……。仕方ない」
桜花は拳を構える。地に強く踏みつける。
「今度こそ守りますよ」
その発言には何が籠っているのか。
「来ます。後ろは頼みますよ」
「はい!」
「ラジャー!」
「わ、分かりました」
「了解しました」
コウキ、シュネル、なあたん、そしてディエゴは各々が得物を構える。ブリネナは既に戦闘態勢だ。
ヴォルフの一匹だけが突っ込んでくる。それを桜花が撃退に入る。
「こちらは気にせずに、みなさんは周囲の警戒を!絶対に死角を作らないでください!」
言いながらも蹴りの一撃で吹き飛ばし、吹き飛ばされたヴォルフが他のヴォルフを巻き込んでいく。
さすがに一撃では倒せなかったが、多数にダメージを与えられた。
今度は一気に飛びかかってきた。
こちらは総出で撃退する。シュネルとディエゴは魔法で、ブリネナはくノ一の俊足で多数の敵を倒していく。コウキとブリネナは武器の性質上多くは倒せないが、それでも堅実に数を減らす。
(来る!)
コウキはすぐさま振り向き剣で防御姿勢をとる。
ガキン、ドン
防御と同時に攻撃を受け、そのヴォルフを桜花が殴り飛ばした。
「死角を作らないでください!!」
「そんなこと言ったって、目の前の敵で手いっぱいだって」
敵の個々の実力はそれほどでもない。だが多い。
次々とランダムに襲われ、捌くのがやっとになってきたところに不意打ちのように死角を突いてくる。
(……?)
迎撃の最中、コウキは一瞬違和感を憶える。
違和感の正体は分からないが、何か嫌な予感がする。
数体のヴォルフの足が揃う。
「………」
桜花が何かを思案し始めた。
そのヴォルフ達が踏み出した。
「コウキさんとブリネナさんはシュネルさんを守ってください!なあたんさんとディエゴさんはフォローをお願いします」
指示に従い陣形を変える。
ヴォルフ達は先程の勢いのまま飛び掛かってきた。その軌道はシュネルに向かっている。一点集中だ。桜花の指示は的確だった。
コウキとブリネナの二人で打ち落とす。開いてしまった迎撃の穴を桜花となあたんとディエゴの三人でカバーする。
シュネルが魔道書を振りかざした。
「よっしゃいくぜ!……風よ、大いなる風よ。一陣に駆け抜け彼の者に示せ。我が名はシュヴァーネル・アルタロン・ラ・フォングラス・ドリュッセン。世が光を手繰る者なり。吹き荒らせ、風周刃」
今まで見たこともないほどの風刃が周囲の敵をなぎ倒す。
呪文のロングスペル。
呪文は技名のみで発動できるが、ロングスペルは呪文の詠唱が終わるまで他に何もできなくなるというデメリットはあるが、呪文の威力とMP効率を飛躍的に高めることができる。
今回はコウキとブリネナが守ることでやっと使うことができた。
そのまま敵を押し返す。
10、9、8、……2、1。
最後の一匹がそれでも果敢に攻めてきた。
コウキはブラスターを構える。
「これでラストッ!」
空中、ヴォルフのジャンプの最も高い位置で打ちぬく。
久しぶりの静寂が流れる。
「終わった?終わったよな!?終わったんだーー!!」
シュネルが歓喜に震えていた。
ディエゴは肩で息をしている。
ブリネナはいつも通りに無表情だが、その顔には疲労の色が窺える。
「はあ~~」
コウキとなあたんは安堵からかその場にへたり込んだ。
本当にくたくただ。現実でもこんなに疲れたことはない。だが、疲れはしたが満ち足りていた。
「お疲れ様」
いつに間にか桜花が目の前に来ていた。
彼は自信を得たというような表情をしていた。
「実を言うと、これが久しぶりの戦闘でして…」
桜花がコウキの隣に腰を下ろす。
「前回の戦闘で椿姉さんを僕のせいでゲームオーバーにしてしまって、姉さんのレベルが40くらいだったでしょう?本当は90くらいあったんです」
あれで低かったのか。
「今回も上手くいける自信はなかったんですが、なんとかやっていけそうです」
そう言って桜花は微笑んだ。
「はあ」
なあたんが純粋に聞き入っていた。
「ハハ、ハハハハ」
つい笑ってしまった。
「な、なんですか」
桜花が尋ねてくる。
「なんか、紅龍ってすごいなってイメージしかなかったけど、案外普通なんだなって」
コウキの言葉に桜花は首を傾げる。
対してなあたんは微笑んでいる。
「分かります。話してみると、結構わたし達と変わらないんだって」
コウキは立ち上がり桜花に手を差し出す。
「これからもよろしく!」
ノイズの発生地点調査は終わった。
判明したことはノイズの危険性とブロークンエッジのノイズ撃退能力だけだ。
情報の共有をしたが新着情報なし。
「そういえば……」
桜花が何かを思い出したように呟く。
「ここのところ惑星ジィグラの敵の中に、おかしな行動の敵が出るって噂を聞きました」
ジィグラ、前にディアゴルガを狩りに行った所だ。
密林惑星ジィグラ、迷いやすい、薄暗い、毒持ちの的が多いと悪い噂ばかりの惑星だ。
「公式からの新種の発表もないし、噂くらいしか頼れないから、行く価値はあると思います」
噂。その程度でも今までの行き当たりばったりよりは幾許かマシだろう。
「じゃあ次はそこだ」
目的地は定まった。
「ジィグラかー。あそこって良い思い出が無いよなコウキ」
「でも行くしかないだろ」
「まあな。目指せ主人公的展開!」
シュネルがサムズアップしてきた。
「桜花さんはどうなさるのですか?」
「僕ですか。僕は様々な伝手を頼って他にも噂を探してみます」
てっきり付いて来てくれると思ったが、そうしてもらった方が後々助かる気がする。
「なあたんさんはどうします?僕に付いてきますか?」
「そうします。わたしの似顔絵ももっといっぱい貼った方がいいと思うし」
……あの少年はどこで何をしているのだろうか。
考えても分からないことが多すぎる。このノイズ関係のことは謎だらけでヒントがない。
「ということは、さっきまでといっしょで、俺、シュネル、ディエゴさんとブリネナさんのグループと、桜花となあたんさんのニグループで行動でいいかな」
確認を取ると全員が頷いた。
遠くからコウキを呼ぶ声が聞こえる。これは母の声だ。
時計を確認する。かなりの時間ゲームをしていたようだ。
「どうしたコウキ」
「ああ、すみません。時間も時間なんで抜けさせてもらいます」
これからって所だが、現実を疎かにできない。
「あ、じゃあ俺も」
シュネルがコウキに続く。
「それでは明日調査に向かいましょう。いいですね皆さん?」
そこで今日は解散となった。
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「----どう思いますか」
「あのブロークンエッジというのは脅威だな。使い手であるコウキも拙者と同程度の感覚を天然で持っているようだ」
「紅龍とも交流がある分、あの銀色よりも警戒すべきだろう」
「では早急に対処しましょう。…上には今回のことも含めて報告しておきます。あなたはゆっくりと休んでいてください」
「そうさせてもらおうか」
新学期です。
いやあ、新入生に部活に入ってほしいですね。
5くらい。
ダース単位で。
そんなことはさておき。
どうやったら面白くなるんでしょうね?語彙力?文章力?構成力?
設定は面白いと友達からは言われるんですがねえ。
まあ、ぼちぼちがんばっていきます。
これからもよろしくお願いします。