夢見月の夜
※謎の人物視点です
すみません。
誰視点か書くの忘れてました。
俺はどうかしているのだろうか。昔、夜の海で出会ったあの子をまだ忘れられずにいたとは。いや、本当に会ったかどうか定かではないが…。
俺はあの嵐の日から……両親を奪ったあの嵐の日から、毎晩この海岸へ散歩するのが日課となっていた。
別に両親の死に未練が残っていた訳ではない。心のどこかでまたあの子に会えるのでは…と信じていたからだ。
でもダメだった。今日もまた会えなかった。やはり、あれは夢だったのだろうか?
(あの岩場まで歩いたら帰ろう)
そう思い岩場へ向かった。ふと、月が明るく岩陰を照らした。そこには驚いたことに……人がいた。この寒い中、何も身に纏わず。
「おい、お前。そんな格好でここで何やっている?」
バレないと思っていたのだろうか。ま、この辺りで隠れる場所なんてほとんどない訳だが。
そいつは肩をビクッと震わせ、思案した後におずおずと岩陰から出てきた。
細い体に俺よりも低い背丈。男なのは体で判断できるが…。
(まだ子供なのだろうか)
彼はうろたえながら俺へ返答しようとする。
「えっ、えーと……っくしゅ!!」
慌てて鼻を抑える…が時すでに遅し。もうくしゃみは出てしまった。しどろもどろになっていたが彼は小刻みに震えている。月光のせいか、肌がやけに青白く見えた。俺は自分の上着をバサッとかけてやった。少し乱暴だっただろうか。
彼は大きな目をぱちくりとさせたが、ようやく自分が何をされたか理解したようだ。
「あの、ありがとっ」
そんな彼の仕草を俺は―――
(可愛い)
そう思ってしまったのだ。見知らぬ……しかも男を。
「…とりあえずこっちへ来い」
そんな思いを悟られないよう短く言い放った後、踵を返し歩き始める。すると少し遅れて小走りで砂を踏む音がこちらに近づく。その音に内心ほっと胸をなで下ろす自分がいた。
―――いつもならこんなことはしなかった。感じなかった。そう、きっとこれはこんなにも輝いている空のせい。月のせい。
……きっと惑わされたのだ。
あの小さな星達の輝きに。この思い出の海の波音に。