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暴走王子

無我夢中で走った。どこの部屋に行くにしても、以前はかなり迷いながらだったけど、今は勝手に足が動いている。何度目かの廊下を曲がるとようやく目的地へ着いた。深呼吸をし、扉に手をかけたその時…。


―――ガシャンッ!!


何かの割れる音が聞こえた。俺の心にはますます不安でいっぱいになった。

「2人はちょっと待っててね。僕が先に入るから」

「え…」

人を呼んでおいて何なんだよ。仕方なく扉に耳をあてた。こうなりゃ音で部屋の中の様子を探るしかない。

それでも聞き取れる範囲は限られてくるもので。今も何か話しているみたいだけど内容までは聞き取れない。ただ、妙に空気が悪いというか…。

「よく聞こえませんわね…」

「うん、そうだね…って」

顔近っ!一気に熱が顔に集まる。大声を出しそうになった俺は慌てて手で口を塞いだ。危ない、危ない。ん…?なんか、エメルダちゃんからいい匂いするなぁ。これがいわゆる女の子の体臭?うわ、ドキドキしてきた。

目は自然と膨らんだ胸元へと移る。


―――ドカッ!!

「お前…殴られたいのか?」

「やだなぁ~。暴力反た~い」

―――ドン!


「ひっ!」

耳をあてていた扉に、急に何かがぶつかって振動した。何考えているんだ、俺は。今は卑猥なことを考えている場合じゃない!

とりあえずブレイブが元気そうなのはわかった。でもさっき殴るとか言ってたような…。

「あの」

エメルダちゃんはスッと立ち上がった。

「私、中に入って参ります」

バタン!

凛々しくも扉の向こう側に行ってしまった。

「えぇっ?!ちょっと待っ…って痛ぇ~」

だっせぇ。ドレスの裾踏んでしりもちついたとかアホすぎる。なんで俺っていつもこう抜けてるんだろ?

…っと、今は自嘲している場合じゃない。俺も中に入ろう!

そっと扉を開けてこっそり中に入った。一息ついて顔をあげると、そこには不機嫌そうなブレイブとそれをなだめようとするエメルダちゃんとムゼットがいた。

「失せろ」

怒気が含まれた声でその場の空気が凍りついたようになっている。

何に対して気に入らないのか。俺には皆目わからなかった。

「何怒ってんだよ?とりあえず落ち着けって」

言った途端、ブレイブはハッと驚いたように目を見開いた。

「アズール…?」

名前を呼ばれ、初めて目が合う。2週間ぶりに見たブレイブはどこも変わっているところがなくて安心した。さっきまで怒り狂っていたはずのブレイブは、いつの間にかいつもの落ち着きを取り戻し咳ばらいをした。

「…悪い。取り乱した。少し外の空気を吸ってくる」

パタン。

扉の閉まる音がした後、俺達は顔を見合わせる。2人が思っていることはおそらく俺と同じ。

「ブレイブ…どうして怒っていたのかしら?」

「しかも一瞬で機嫌直ったしね」

付き合いの長い2人でさえわからないようだ。

「「何か知ってる?」」

「えっ!?」

び、びっくりした…。なんで2人して俺に聞いてくるんだよ!つか知ってたら言うし。

「いんや、知らない。帰ってきたばっかりだし。…っていうかなんで俺……じゃなくて私に?」

俺はあいつと知り合って数ヶ月しか経っていない。当然2人の方がどういうヤツなのかはよくわかっているはず。

「だってさ、僕より仲いいじゃん」

「ど、どこが!?」

「私もたまに嫉妬しちゃうこと、ありますのよ」

「…は?」

どこをどう見たらそうなるんだろう。俺とブレイブはそんなに親しい間柄じゃない。いや、俺は友達だと思ってるけど、きっとブレイブにとって俺はただの居候でしかない。この関係はそれ以上でもそれ以下でもないだろう。

「仕事が忙しかったからじゃないのか?お…、私ちょっと散歩してくる」

それでも俺はあいつともっと仲良くなりたい!

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