秘密
かなり遅くなってしまってすいませんm(_ _)m
さあっと潮風が肌をなでる。
「気持ちいいですわね」
エメルダちゃんを海岸にまで誘ったけど、これってまさか……。
デート…?
うわ~、どうしよう?は、初めてなんだけど…。手とか握った方がいいのかな?うあー、手汗かいてきた…。
「そういえば、来月はどうなさるんですの?」
来月…?
「何かあるんですか?」
「ブレイブの誕生日の事よ」
ブレイブの…誕生日?
「プレゼント、何にするかまだ決まってないんですの…」
そりゃあ一大事だ!!…って、俺も何か用意しなくちゃいけないよな。
俺だったら何を貰っても喜ぶけどな~。
そもそも、あいつが好きなモノって何なんだ?あいつが貰って喜ぶモノって…。
両親の愛情…?でも、そんなの用意できる訳ない。何か他に…。あいつの父さんか母さんに関係した事なら絶対喜ぶはず。けど、そんなモノあんのか?
(あっ…)
誰にも演奏されなくなったピアノ。ダトニオが好きだと言った…ブレイブの母さんが弾いていた曲。
考えに考えた末に出た一つの贈り物。
「それって“モノ”じゃないとダメなんですか?」
もしかしたらその曲、ブレイブも知っているかもしれない。
「どういう事?」
「ブレイブの母さんがよくピアノで弾いていた曲を知ってますか?」
「ええ、知っていますわ。あれはブレイブが好きな曲ですもの」
やっぱり…。
「その曲をバイオリンで演奏してプレゼントしたらどうですか?」
「まあ、なんていい考え!」
うんうん、俺も我ながらいい考えだと思う。
「私がバイオリン演奏をしてアズールさんが歌ってくだされば…」
「えっ?!ちょっ…」
何でそんな話になったんだ?歌うのは好きだけど聞いたことのない歌なんてさすがに歌えない。
「それまで一緒に練習しましょうね」
一緒に…?一緒にって…。俺の脳内でイロイロな妄想が…。
「はい!」
これは仲良くなる絶好のチャンスだ!
「それじゃあ、私、そろそろ戻りますわね」
じゃ、一緒に…と言おうとしたけど、なぜか後ろから嫌な視線を感じる。
た、多分、緊張しすぎて感覚機能が敏感になってるんだ。とりあえず振り向いて誰もいないことだけを確認しよう。そしたら帰ろう。
俺はそろりと後ろを見た。ニヤニヤと嫌な笑い顔のあいつがいる。
俺は前に向き直って歩きだそうとした。
「無視ですか?」
ここで応対したらダメだ。無視し続けるんだ。
「ひっど~い☆」
無視無視無視。キモいけど無視。
「…さっきの、彼女ですか?」
「えっ!?そ、そういう風に見えたか?」
「仲がいい、お友達のように見えました」
「だったら始めからそう言え!!あっ…」
またこいつと会話している。何でこうなるんだ…。
「実はアナタに報告…と言うより警告がありまして…」
警告?もしかして俺、一生男に戻られないとか?そんなのは絶っ対嫌だ。
「アナタは人魚に戻ったらどうするつもりですか?」
どうするもこうするも、人間の生活は楽しい。まず人魚に戻ろうとは思わない。女の姿っていうのが問題点だけど。
「戻らねぇよ。もし戻ったとしたら、またお前の世話になって人間になるつもりだ」
「それが問題なんです」
「え?」
どういうことなんだ?
「たしかに、また同じ薬を飲めば人間になれます」
何だよ。何も問題なんてないじゃん。
「ただし50%の確率で、ですが…」
ご、50%…。半分の確率で失敗するってことだよな。
「身体が薬に対する耐性ができてしまうんですよ」
耐性とかよくわかんないけど…。
「もし、失敗したら…?」
「失敗したら……海の泡となって消えてしまいます」
…消える?死んじゃう…のか。
「一度人魚に戻りし者、再び人になるべからず…ってことですよ」
「……!!」
これじゃあ迂闊に元の姿に戻られない。好きなときに戻って好きなときにまた人間になって…なんて都合のいいことはできないんだ。
「まあ、例外はありますがね…」
「例外?何だよ、それ?」
「今のアナタに知る必要はありません」
意味わかんねぇ!知る必要がないってなんか腹立つ言い方だな。
「とにかく、人魚に戻るときはよく考えてください。そのまま人間として生きるのか、人魚として生きるのか」
そんなこと急に言われたって…。俺にどっちかなんて決められない。どっちも大切なんだ。
「それってすぐに決めなきゃ…」
「何をだ?」
その低音美声は…!
振り返るとブレイブがこちらに歩いて来る。話すのに夢中で全然気がつかなかった。
「どうした?そんな顔して…。何かあったのか?」
大ありだよ!!言えるなら相談したいよ!誰でもいい。いや、できればブレイブがいい。でも、そんなことしたら人魚の存在が人間にバレてしまう。
「ブレイブ、俺…っ!」
…ダメだ。言っちゃいけない。言ったらどこにも居場所がなくなる。
「何も言わなくていい」
頭をくしゃくしゃと撫でるその手はとても暖かく思えた。
(やべ…泣きそう…)
「大丈夫か?」
何でそんなに優しいんだよ?
「…っ!」
堪らなくなった俺はブレイブの胸に飛び込んだ。
「アズール?!」
声が驚いてる。
「ちょっとの…ぁいだだけっ、こ…してていいか…?」
何甘えてんだよ…俺。でも、こうしているとほっとする。
「…ああ」
そっと抱きしめて髪をとくように頭を撫でてくれる。
「ひっぅ…くぅっ…」
今だけ甘えさせて。この優しさに浸らせて。あともうちょっとだけ…。もうちょっとだけ、このままで…。
遅れてすいません(T_T)
次話はいつupできるかわかりませんm(_ _)m