勘違いカップル2
遅くなりましたm(_ _)m
何でこうなったんだろう。どうしたらこんな展開になるんだ?目の前にはにこにこと微笑むエメルダちゃんと必死に誤解を解こうとしているムゼット。
そこへやって来たのがブレイブだった。
「朝から一体何を騒がしくしているんだ?」
「ブレイブ…!!」
ようやくお目当ての人を見つけて駆け寄るエメルダちゃん。いつかその立場は絶対にこの俺が奪ってやるぜ。
「……エメルダ?随分と早かったんだな」
「早く着いちゃダメだったかしら?」
首を傾げ尋ねる。
くぅ~っ!!かわいい。あーーっ、エル・オー・ブイ・イー!!
「それより、あのパーティーの時に約束した事、忘れたの?」
「約束?」
何の事だ、という風に片眉を上げるブレイブ。それを聞いてエメルダちゃんは機嫌を悪くしたらしい。
「もう!私の家に来るって言ったじゃない。私、その便りが来るのをずっと、ずーっと待っていたのよ?」
「落ち着け、エメルダ…」
癇癪を起こしたエメルダちゃんをなんとか宥めようとする…が焼け石に水の状態。
「何が落ち着け、よ。約束を破ったくせに…」
でも確かに、今の話だと明らかにブレイブが悪いと思うけど。でもあいつもあいつで仕事が立て込んでたみたいだし。うーん…。どっちが悪いかなんて言いようがないけど、世の中には“レディーファースト”という言葉があるし…。
「俺が悪かった。だからそんなに怒るな」
あのブレイブが謝ったー…!さすがに婚約者には敵わないってことか。
「本当にそう思ってるの?」
「ああ、思っている」
「本当の本当に?」
「本当の本当だ」
「なら、許してあげるわ」
やっと落ち着きを取り戻したようだ。また笑顔を浮かべたエメルダちゃんはこちらに歩み寄って来た。
「お見苦しい所をお見せしてしまってごめんなさい」
「いえ、大丈夫です!」
エメルダちゃんを間近で見た俺は、婚約者であるブレイブの前だというのにデレデレとしてしまう。
「あなたも、彼が約束を破ったらこんな風になっちゃうかもしれないわよ?」
それを聞いたブレイブは眉間に皺を寄せた。
「どういう意味だ?」「あら、知らないの?ムゼットとアズールさんってお付き合いしていらっしゃるのよ」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。ブレイブは勢いよくこっちを向いた。俺は高速で首を横に振ってさっきの言葉を否定しまくった。
次にムゼットの方を見た…というよりも睨みつけた。
「前々からお前の女遊びが激しいと思っていたが…」
「違うっ!ちーがーうって!!」
全力で否定し、ブレイブの耳元でコソコソと事情を説明している。
「……という事だから、違うの。わかった?」
状況を理解したブレイブが、ホッと胸を撫で下ろしたように見えたのは気のせい?
「あいつらは付き合っていない。弁を弄するのはやめろ」「そうだったの。私、早とちりしちゃったのね」
ブレイブの言葉だと一発で信用するのか!!確かに信憑性はあるけどさ…。
やっぱり好きだから信じられるって事か。
「それより、何でまたこの中途半端の時期に来たんだ?」
今は梅雨でじめじめシーズンの真っ只中だ。
エメルダちゃんの顔から笑顔が消え、俯き加減でこう切り出した。
「お父様と…喧嘩したの」
さっきよりも1トーン低くなった声。
「だってお父様ったら、私の事をいつまでも子ども扱いして…」
単に、娘を嫁にやるのが寂しいだけなんじゃないかと思うんだけど…。
「だから、しばらくここに泊まることにしたの」
うひょーっ!ここに泊まるのか?!やったぜい!!
俺の心の中はお祭り状態。だけどブレイブはそんな俺とは裏腹に、恐い顔をしていた。
「……帰れ」
とても低く怒りが混じった声。
「え?」
「帰れ、と言ってるんだ」
こんなに恐いブレイブは見たことがない。
「ちょっと、そんな言い方はないんじゃない?エメルダは婚約者じゃん」
ムゼットの言う通りだ。婚約者にはもっと優しく言葉を選んで言うべき。
「婚約者だろうと関係ない」
そう短く言い放った。
「そ…んな。ひっぅ、ひどいわ。私……っ」
エメルダちゃんの瞳は涙で濡れていた。それに気がついたブレイブはう゛っとうろたえた。
少し朱く色づいた頬に、とめどなく流れる涙。ブレイブがどんな言葉をかけようとも泣き止まない。これは「泊まれ」と言うまで泣き止まないだろう。
ブレイブは大きくため息をついた。
「……一日だけだぞ」
どうやら涙には弱いらしい。エメルダちゃんは今夜、ここに泊まることになった。