勘違いカップル1
「ブレイブったら私の所へ来るって言ったのに…」
あのパーティーから4ヶ月。その間に彼は一度も私の元へ訪れていない。手紙の一つだってくれない。
「私、見放されちゃったかしら…」
いいえ、ブレイブに限ってそんなことするはずない。きっと何か事情があったのよ。
「すみません。もう少し急いでいただけるかしら?」
馬車を走らせる執事に呼びかける。執事は、はいやっと叫び、馬をより一層速く走らせた。
今日は朝から何やらバタバタと騒がしい。どうしたのかと思いメイドに尋ねると、大事な客が来るとのこと。メイド達は花瓶の花を色鮮やかなものに入れ替えたり、すでにピカピカの窓を更に念を入れて拭いたり、ゴミ一つ落ちていない床を掃いたりととても忙しそうに動いていた。
「おっはよ~、アズール」
「ああ、おはよ……ってムゼット!?」
何でここに居るんだ?家に帰ったんじゃなかったのか?
「もしかして…、大事な客ってお前の事か?」
こいつの場合“だいじな客”というよりも、“おおごとな客”だと思うんだけどな。
「ん?…あぁ、違う違う。僕もその人に会いに来たんだからね」
そんな会話をしている内に、部屋の外がさっきよりも増して騒がしくなった。
「ブレイブー!ブレイブーっ!!」
女の声だ。ひょっとして、この声の主が大事な客なのか?
「おっかしいな~。予定よりも3時間早いじゃん。……って、やばっ」
何が…と言おうとした、“な”のところで部屋に押し込められた。
「急に何すんだよ?危ねーな…」
もう少し強く押されていたら危うく転ぶところだった。しかしムゼットは真剣な表情で言った。
「アズール、早くドレス着なきゃ!」
「何で今……。あっ…!」
そうか!!俺が男の格好していたら変に思われるから。でもこれを着るのはちょっと…。
「ほらほら。早く、早く!!」
今は躊躇っている場合ではない。
「わかってるよ!……あれ?あれ?この服どうなってんだ??」
「何やってんの?!早くしないと…。ほら、ここをこうして…」
ぎこちない手の動きだったが手伝ってくれて、なんとか半分くらいまで着ることができた。
その時、また外から声が…。
「その声は……ムゼット?さてはまたあの部屋に泊まってるのね?」
さっきよりも声が近くなった。おまけに足音までこちらに向かっている。ドレスはまだ着れていない。あと30秒あれば間に合ったのに…。
「とりあえず隠れて…」
と言ったと同時に俺の体はベッドへと押されていた。倒れそうになって反射的に動いた手が、ムゼットの服を掴み一緒にベッドへ倒れ込む。
その時にちょうど扉が開いた。
「ねぇ、ムゼット。ブレイブはどこに居……」
「「あ」」
俺とムゼットの声が綺麗にハモった。
隠れるための布団を被っていないので、俺の姿は丸見えだ。それに今、体は仰向けになっており、ムゼットは俺にまたがるように四つん這いになっている状態。ちなみに俺はドレスをちゃんと着れていない。
「あら?邪魔しちゃったみたいね…。ごめんなさい」
パタン。
一瞬の沈黙の場に扉の閉まる音が響く。顔を見合わせた俺達は一目散に部屋から飛び出した。
「ちょ、ちょっと待って。早とちりしないでください」
「そうだよ、エメルダ。勘違いだよ。勘違い」
必死の状況説明も虚しく、まったく通じていない。
「やっとムゼットにも恋人ができたのね~」
「え……、あの~…」
話がどんどん進んでいっちゃってるし。ってかこの娘、あの船に乗ってたかわい娘ちゃんじゃん!
「あなた、お名前は何とおっしゃるの?」
「えと…アズールです」
「そう、いいお名前ね。私はエメルダ。ムゼットの幼なじみでブレイブとは婚約しているの。ムゼットは少し子どもっぽい所があるけれど、心はしっかりしてるからよろしくね」
「は、はあ」
まずいぞ。完璧にムゼットの恋人っていう位に見られている。誰か違うと言ってくれ~。
ハイペースアップでストーリーめちゃくちゃになってることに今頃気がつきました(^_^;)
早けりゃいいってもんじゃないんですね。
私の場合、どんなに推敲してもおもしろくはならないけれど(^q^)/