表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

人間へ

ギィィ…。

古びた扉を開けると、不気味なものがところ狭しと積み重なっていた。玄関というのを疑いたくなるほどだ。おそらくこの家の主である魔術士が使う道具なのだろう。

「おや、珍しいこともあるものですね。こんなところに訪れる者がいるとは」

そう言う魔術師は、口元にうっすら不気味な笑みを浮かべている。

「なぁ魔術師、ちょっと頼みてぇことあんだけど…」

「何ですか?やぶから棒に」

俺は自分の願いを告げた。

「いずれあなたはきっと後悔するでしょう…。人間は、わたし達人魚一族よりはるかに寿命が短い。何よりおろかな生き物だ」

「んなこと何でわかるんだよ?偉そうなこと言うな!短い時間の中で精一杯生きてる方が、俺達よりもずっと立派なんだよ!」

しまった…、怒鳴っちゃった。頼みに来たのに怒鳴ってどうする!!

「あの…、すまな――」

謝罪の言葉を言おうとしたら遮られた。

「いいでしょう。そこまで言うのなら自分の目で、身体で確かめて来なさい」

そういうと何やら紅色をした液体を差し出し、飲むように促された。

「それを飲むとあなたはおそらく人間になるでしょう」

そうか、これを飲めばおそらく人間に…。

……。

…ん?

お、おそらくぅ!?

「どういうことだ?完璧に人間になれるんじゃないのか!?」

俺があわてて言ったのがおかしかったのか、愉快そうにこう言った。

「まだ開発中なんですが…、まぁ大丈夫でしょう。以前、君と同じように頼みに来た者には成功しましたし。それでも何か不具合があるかもしれませんから気をつけてね☆」

なんかキャラ変わってねぇか?開発中、って大丈夫か、これ!?でも手段はこれしかない。

鼻をつく異臭を堪えながら一気に飲み干した。

目の前がぐらりとゆらぎ、急に息が苦しくなった。呼吸をしても、口に入ってくるのはしょっぱい水で。頭も痛いし、吐き気もする。いつものように泳ごうとしても上手くいかない。

(く、苦し…)

必死にもがいてやっとのことで海面に浮かんでこられた。

「ぷはぁっ…っはぁ、はぁ…」

死、死ぬかと思った…。

「あ、いい忘れてましたけど、人間は水の中では息ができませんよ。」

(言うのが遅い!!)

呼吸が荒くてしゃべれない俺は、思いっきりコイツをにらんでやった。

…いや、待てよ。

今のコイツの言い方だと俺は人間になれたってことか?尾ヒレを見ると、そこにはそれはなく、代わりに2本の足がついていた。

「っしゃああぁっ~!!!サンキュー!」

「それはどういたしまして。とりあえず岸に上がってはどうですか?このままではあなたがいつ溺れるかわかりませんからね」

うっ…、くやしいがコイツの言う通りだな。なれない泳ぎで、やっとのことで岸までたどり着いた。

(さてと、これからどうすっかな?)

少なくともあの娘に会うためには、どこかの城に行かなければならない。辺りを見渡しても日が落ちてしまったので、暗くてほとんど何も見えない。第一手がかりも何もない。

(まぁ、なんとかなるか)

いつものポジティブさと好奇心旺盛な性格のおかげで、不安よりも楽しみの方が大きかった。


ここまでは普通の人魚姫とほぼ同じなんですけど……。さて、これからどんな話にしていきましょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ