プチ鬱ディナー
結局あの後ブレイブを見つける事はできなかった。案の定、その日の夕食にも顔を出さなかったし。メイドに尋ねると、ブレイブは自室で食べているそうだ。
(みんなで食った方が絶対うまいのに…)
よっぽど仕事が忙しいのだろう。
「アズールぅ~、どうしたの?そーんな暗い顔してさ」
「お前は心配じゃないのか?あいつの顔、最近見てないし」
俺が尋ねるとムゼットは、なぁんだ、その事か…と呆れたように口を開いた。
「ブレイブはね、この間婚約パーティーしたんだ。そのせいで仕事が溜まっちゃったから今やってるんだよ。」
多分それが原因で、あの船に乗っていた時のあいつは不機嫌な顔をしていたのだろう。俺も何か手伝ってやろうと思ったが、仕事の事となったらただの邪魔者にしかならないのはすぐに目に見えた。
“船”で思い出したけど、ブレイブの奴、婚約者と全然会ってないみたいだ。ムゼット以外に城への来客は他にいないようだし。俺も早く会いたいなぁ…。
「そうそう、アズールのクローゼットに服足しといたよ」
そう言いながらデザートの苺を口に運ぶ。
またコイツは勝手に他人の部屋を…。
「カモフラージュ用の服だから。着る時は好きなの選んで♪」
はぁ……。女物の服って事だな。つか選ぶほどあんのか?!せいぜい2、3着でよくねぇか?
「ほらほら、そーんな険しい顔しないで。アズールも食べなよ、苺。おいしいよ?」そう言って俺の口に蔕を取ったばかりの苺を押し込んできた。
「ひゅうになにふんがっ!!(急に何すんだっ!!)」
俺は苺は蔕側から食べる派だったのに…。口の中にプチッとした食感…その後に甘さと程よい酸っぱさが広がる。そのせいでそれ以上はムゼットに文句を言おうとは思わなかった。
「おいしい?」
「ん…、まぁ…」
確かにうまかった。ただ、蔕側から食べた方がもっとうまかっただろうと思った。