獅子奮迅
城に居座るようになって一週間。時が経てば俺の性別変化は治る……訳もなく。相変わらず昼間は女のままだった。
俺は部屋のベッドに腰掛け、これまでのことを考えた。
あの女の子に会いたくて薬飲んで人間になって、海辺でブレイブに拾われて。そして城に住まわせてもらった。で、朝になったら女になってたんだよなぁ。
「こんな体じゃなぁ…かと言ってここで諦めるのも「何の話?」
「ぅわっ…ムゼット!?」
いつからそこに居たんだよ?!はぁ~、心臓に悪…。他人の部屋に入る時はノックぐらいしろ!!まぁ、この部屋は俺のじゃないからはっきりとは言えねぇけど…。
「ねぇねぇ、アズール。ちょっと来て」
ベッドの縁を掴んでいた手をとられ、ぐいっと引かれた。
いきなり部屋に来たかと思えば強引に連れ出す。
(訳わかんねぇの)
「早く、早く!」
俺が歩いていたのがじれったかったのか。こちらに来て文句でも言うのかと思いきや、俺の身体はフッと浮き、視界に天井が映った。一瞬何が起きたのかわからなかった。
「走るよ」
「へ?」
途端にファインは走り出した。
「うわぁぁーっ!!」
「しっかり捕まってないと落ちちゃうよ?」
咄嗟にムゼットの服をぎゅっと掴んだから大惨事には至らなかったものの…。はぁ…、コイツの行動パターンはよくわからねぇ。
「どうせなら首に手を回してほしかったなぁ」
こいつめ。絞めてやろうか?
そもそも“お姫様抱っこ”っていうものは男ならいつかはやりたい憧れの行為。俺もその内の一人のはずなんだけど……。
なぜ今俺がされているんだ!!
お姫様抱っこをする前にされたなんて最悪すぎる。
「降ろせーっ!」
「ん~、もうすぐで着くから待ってて」
必死の願いも虚しく、あっさりと流された。何もこんなことしてまで急がなくてもいいのに。
「なあ、走るから降ろせよ」
「だーめ」
あぁ、もう意味わかんねぇよ。コイツ何がしたいんだ?
「あ、着いたよ」
そう言って、先にある扉をゆっくり開いた。