かくれんぼ
部屋に戻った俺は鏡で自分の姿をじっくり見た。第二ボタンまで外されたシャツからちらりと覗く胸の谷間。腰の辺りまでのびた少しくせ毛っぽい茶色の髪。そして嫌と言う程目立つ、左が黄色で右が青色の瞳。
変わってないのは顔と声と心。
「ふぅ…」
ため息をついた後、服をきっちりと着直す。特に胸の辺りがバレないように細心の注意を払って。それから、上着を着てボタンをすべてかけた。少し苦しいけど我慢、我慢…。
髪は……切ろう。
しかしハサミがなかなか見当たらない。机の引き出しを開けてもタイムマシンどころか、何も入ってない。どうしようかと悩んでいたその時、ノックもなしに部屋の扉が開いた。突然のことだったので、とっさにベッドに潜り込んで息を潜めて隠れた。そして布団の隙間から外の様子を伺った。入って来たのは……ブレイブ?
いや、似ているけどちょっと違う。少し幼い。
「は~疲れた」
盛大なため息。聞いているこっちまで疲れそうだ。
「朝食までまだ時間あるし…。うん、ちょっとだけ寝よ」
え?寝るってやばいんじゃ…。ちょっ、どんどんこっちに近づいてるし!
こうもなったからにはぴくりとも動けない。
何でこうなったんだ?ハサミを探してただけなのに。大体アイツは誰なんだ?
そんなことを考えている間にベッドへダイブする青年。
「どーーんっ☆」
「うぎゃっ!」
どうして普通に寝ないんだ?なぜわざわざダイブした?疲れているんだろ…。
「あれ?先約がいた…。ま、いーや。こっち半分僕ね」
そんなんでいいのかよ?!マイペースな奴だな。
「てか、君誰?」
起き上がって布団を剥ぎ取ろうとする。でもここで気づかれたらせっかく隠れた意味がない。俺も負けじと包まる。
それからしばらく布団の引っ張り合いが続いた。傍から見ると、今やっている事は明らかに幼稚園レベル。俺は本気でやってるのに、上に乗っかてる奴はおもしろ半分って感じで笑っている。
ベッドのスプリングがギシギシと軋む。
「ここ僕の部屋だよ?無断で入るなんて…君、いい度胸してるね」
フッと笑ったその後、引っ張られていた布団からその力が消えた。ベッドからも離れる。
(えらく素直に諦めたな)
ほっとして力を緩めたのが間違いだった。
「隙アリッ♪」
べりっと布団を剥がされた。
じーっと音が出そうな程こっちをジロジロと見ている。ようやく口を開いて何を言うかと思いきや…。
「君、男?女?名前は?何歳?」
一気に質問攻め。
「え、えーと俺は男だ。んで名前はアズール。それで……何だっけ?」
「歳」
「そうだ、そうだ。歳は18…で、それが何だよ?」
今気がついたけど、知らない奴に名前言ってしまった。プライバシーってこういう所から流出していくんだよな。
青年を見ると、俺の姿を上から下までしげしげと興味深げに眺めていた。
「君が男だって?ほんとかなぁ?」
言ったのが先か、俺の腕を片手で逃げられないように固定し、着ていたジャケットを脱がされる。せっかく胸を押さえ付けていたのに。そんなことはお構いなしに、そのままシャツのボタンをぷちぷち外しはじめた。
「胸はあるみたいだね」
確かめるように触る。
「ばっかやろ…!触んな!」
「何?もしかして…感じちゃった?感じやすい身体だねぇ~」
クスクスと笑う顔は無邪気なんだがやっている事は邪気ありまくり。また、魔術師にやられたことをされるのか…。
あれ?お金もちって部屋の中でも靴を履いてたような…。
いろいろとおかしい所があってすみませんm(_ _)m