犬塚の輩
掲載日:2026/08/17
闇の中から聞こえる不気味な声。それは決して意味を調べてはならない、異界からの手招きだった——。
月明かりすら届かない闇の中、男はただ「のやから」と繰り返す声を聞いた。
初めは耳鳴りのような低い呟きだった。しかし、夜が更けるにつれてその声は壁を通り抜け、枕元へと近づいてくる。
「のやから……のやから……」
意味を調べようとスマホを手にした瞬間、冷たい息が耳元をかすめた。
「みーつけた、のやから」
画面の明かりが照らし出したのは、男の影の中に潜む、目と鼻のない顔だった。言葉の意味を理解した時には、男の意識は闇の底へと引きずり込まれていた。それは、こちら側の人間を呼ぶ、異界の言葉だったのだ。
【了】
最後までお読みいただきありがとうございます。
日常のすぐ隣にある怪異と、意味が分かった瞬間に訪れる絶望を描いてみました。
「のやから(汝輩)」という言葉の本当の意味に気づいたとき、少しでもゾクッとしていただけたら幸いです。
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