祝い増幅装置~秋葉原博士の新発明~
あけましておめでとうございます。
新春です。おめでたい作品を読んでいただけると嬉しいです。
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元日の朝、左京刑事は大きくため息をついていた。
「正月早々、事件か……」
現場は秋葉原。
有名な発明家――通称・秋葉原博士の研究室だった。
「被害は?」
左京刑事が問うと、相棒の山田君が助手のほうを振り向いた。
博士の助手は、明らかに焦った様子で訴える。
「発明品が一つ、消えているんです。
祝い増幅装置です。昨夜までは、確かにここに……」
「……なんだ、それは」
「おめでたい気持ちを増幅させる機械です」
左京刑事は眉をひそめたが、博士本人は驚くほど落ち着いていた。
「盗まれてはおらん。 ちゃんと使われただけじゃ」
「使われた? どこで?」
博士は、無言で窓の外を指さした。
街は、異様なほどにぎやかだった。
知らない者同士が笑い合い、
通行人が高齢者に拍手を送っている。
あちこちで、お年玉袋が配られていた。
子どもが袋を受け取り、男に頭を下げる。
「ありがとうございます。 今年は、おじさんにもたくさんいいことがある気がします」
言われた男は、照れくさそうに、だが心からうれしそうに笑っていた。
「……博士、あれは?」
山田君が、青ざめた声で言う。
「祝いが、増えすぎただけじゃ」
左京刑事は、その言葉で全てを悟った。
「装置は……誰かに盗まれたんじゃないな」
博士は、満足そうにうなずいた。
そのとき、助手がさらに青ざめて叫ぶ。
「は、博士! まさか未完成の装置を使われたのですか?
検証も不十分なのに、なんてことを……!」
博士は胸を張った。
「発明はうまくいっとる。わしは失敗しないのじゃ。
正月じゃからな。 ――むしろ、使わない理由がない」
その瞬間、左京刑事のスマホが鳴った。
〈全国各地で原因不明の祝賀ムード〉
〈事件・事故が激減〉
〈本日の逮捕者ゼロ〉
〈交番を訪れ、自首する人が激増〉
山田君が、ぽつりとつぶやく。
「……これ、
いい発明じゃないですか」
博士は、にやりと笑った。
「そう思うじゃろ?」
左京刑事は、ゆっくりと警察手帳を閉じた。
「……今年は、捜査終了だな」
その年の暮。
一番のニュースが、淡々と読み上げられた。
「今年は全国的に事故・事件が少なく、
奇跡的に平和な一年でした。
年々減少していた婚姻率は上昇し、出生率も回復。
絶滅危惧種と危ぶまれていたニホンアカチャンが、
各地で確認されています」
アナウンサーは、少し間を置いて続ける。
「次のニュースです。
お笑い芸人が流行らせた
『めでたいなあ~』が、
今年の流行語大賞に選ばれました」
テレビを消した左京刑事は、苦笑した。
「……誰も、
何が起きていたかは分かってないな」
窓の外では、
見知らぬ人同士が、笑い合って肩を叩き合い、拍手をしていた。
あなたのもとにも、幸せがきっときますよ。
(終わり)
およみいただきありがとうございました。
さとちゃんペッ!です。
代表作 完結した歴史長編です。
源平合戦で命を落とす安徳天皇に転生した俺、死にたくないので、未来の知識と過剰な努力で、破滅の運命を覆します
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