好きな人までの距離
積もる想いは増すばかり。駅で、通学路で、食堂で、図書館で。広い構内でつい彼女を探してしまっていた。
大学生になってから1か月経たないほどのゴールデンウィーク前、ゼミの親睦会が開かれた。鈴木玲と同じゼミ主催のだった。彼女も来るらしい。
時間割が授業で埋まった1週間を送った金曜日の夜、親睦会のある店に向かった。
アルコールは飲んでいないのに店の雰囲気でか普段以上に陽気でいた。互いに知らないことが多い人たちだからこそ、話さないようなことまでも口から出ていた。
お互いにこれまで歩いてきた道で何があったか語り合った。出会いと別れを繰り返し、その中でずっと一緒にいる人は少ないだろう。でも、彼女とはずっと一緒に歩いていたいと思った。
お開きとなり店の前で担任を待っている間、声がした。
「顔赤くなってる」
そう言ってきたのは鈴木玲だった。頬は赤く染まっていて彼女もよく酔っているみたいだ。
「えっ、そう?」笑いながら返す。そんなことで笑い合っていた。
担任がレジの店員に会釈するのが見えた。もうすぐ出てくる。
「このあと何かある?」口からはそんなセリフが出ていた。
「え」思いがけない一言だっただろう。一瞬、時が止まっていた。
「もし良かったらーー」
「ごめんなさい」
階段を何段跳び越したんだろう。普段なら絶対言えないことを言っていた。明るい夜のせいか?
「いいよいいよ、ごめん」
連絡先は交換した。その日は足早に駅へと向かった。
帰りの電車の中、スマホが世界で一番うれしいメッセージを知らせた。
『今日はごめんなさい。日曜日だったら映画とかどう?』
熟考に推敲を重ね、メッセージを返した。
日曜日、彼女に会う。




