第二幕 選ばれたのは
「…いつまでお喋りしてるの。」
最初に姿を現したのは、詠蓮。夜風に揺れる黒のマントと、揺るがぬ瞳をたたえて。
そして少し距離を置き、弥生と瑞稀も歩み寄り、その場に立つ。
続いて、夜斗と天綺、明。
その後ろからは、彼方、紗也、孤亜。
「……やっぱり、みんなも来ると思った。」
そして最後に、西から甘虎、唯人、埜楼。
全員が、柚木を中心に集まっていた。
組織クロユリの全員が揃った瞬間だった。
「……全員が、この場所に立ったのは、これが初めてかもしれないな」
夜斗が静かに呟く。天綺が微笑むと、明はつぶやいた。
「この“今”のために、ずっとずっと、おれたちは温めてきたんだろうな。」
「……“再会”だよ」
ぽつりと孤亜がつぶやいた。柚木の方を向いて。
その言葉に、柚木は目を見開く。
「……また、会えたんだね」
「紗也…良かった。」
「埜楼も、元気そうで良かった。」
微笑む紗也に涙を浮かべる埜楼。
そんな紗也と埜楼の背中を優しく見届ける唯人。
「…唯人も埜楼を見てくれてありがとうね。」
瑞稀が優しく微笑み、弥生が少し口角を上げ、何も言わず目を瞑る。
今までどれだけの悲しみ、辛いことを耐え、乗り越えてきたのだろう。
彼の脳裏に、一瞬、あの“最初の世界”の光景がフラッシュバックする。
黒い霧、ルシェルの覚醒、紗也の消滅___
そして、“ループ”を望んだ、あの瞬間。
「…ねぇ、そういえば、りん。さっきの会話は…?」
柚木は恐る恐る尋ねる。
「…後にわかる。」
触れないでくれと感じ取った柚木は、もう問うことはなかった。
するとセラテルが一歩、前に出た。
「柚木。このまま鍵を持ってルシェルのもとへ行けば、“結末”が始まるよ」
「……わかってる。」
「でも……前とは違う。今の君は、一人じゃない。違う時間を選び、違う仲間と絆を結んできた」
柚木は、深く頷いた。
「うん。今度こそ、終わらせたい。悲しみの、輪廻を。鍵を渡す相手は、ルシェルじゃない。俺は……ミカロスに渡す」
クロユリの面々がざわめいた。
瑞稀は柚木の肩に手を置き驚いたように見つめる。
「ミカロス様って……私たちが再生を望んでるんだよ?」
そして唯人が、顎に手を置き冷静に話す。
「でも、あの神は封印されてるはずじゃ。」
「待って、それってどういうこと……?」
紗也は、埜楼の隣から動かず小さな声で呟き、埜楼もその呟きに乗せてりんに問う。
「でも、ミカロス様はりんが見てるって…」
りんは微笑んで言った。
「……僕はずっとミカロス様の再生を待っていたが、その時は来なかった。でも、これでミカロス様が再生されるなら僕は本望だし、柚木がそうしたいなら、それでいいと思う」
その一言で、全員が沈黙する。
りんは一歩前へ出て、優しく言った。
「君が選ぶ未来なら、僕は信じる。
……たとえ、それがどんな結末を呼ぼうとも」
セラテルがそっと隣に立った。
「もう……迷わないね?」
「うん。今度こそ、最後まで信じ抜くよ」
(今度は――もう誰も、後悔させない)
「……行こう。私たちも、君と共に進む」
詠蓮と夜斗が、前へと一歩を踏み出す。
「僕たちは、もう後戻りしない。“罪”も“誤解”も、“失われた過去”も背負って――」
甘虎が続いた。
「君と出会って、変わったんだ。もう一度、未来を見たい」
彼方が柚木の肩を叩く。
すると。その瞬間、遠くから白い光に包まれた者が現れた。光が消えると、その中央に浮かぶように佇む顔のない猫
表情は分からないが、儚げな微笑みを浮かべているはず。
――ルシェル。
静かに柚木を見つめる。
「……ようこそ、運命の分岐点へ」
ルシェルの背後で、空間が震える。
あの“終焉”が、再び目を覚まそうとしていた。
「君たちの選んだ“未来”を見せて」
柚木は一歩、前に出る。
「見せてやるよ。……俺たちの、希望の答えを」
彼の背には、クロユリの仲間たち。
絶望を知り、それでも立ち上がった者たち。
――今度こそ、“願い”ではなく、“意志”で、世界を変える。
クロユリが集合したことにより、登場人物が多くなったため、次回からは誰が話したかわかるように台本調になります。ご了承ください。




