最終幕 星巫と花々のカタルシス
目を覚ました柚木の瞳には、涙が一筋流れていた。
弥生がそっと近づき、ハンカチを差し出す。
「おかえり。怖かったか?」
「俺がここに、この世界に来た理由、やっと分かったかもしれない。」
「………どうやら、大事なことを思い出したみたいだね。」
「うん。思い出してよかった。……俺、ようやく進める気がする」
「_____なら、最後まで諦めずに前を向くこと。もうやり直せないかもしれない。……でも、過去のあなたよりも強くなっている。」
静かな空間に力強い詠蓮の言葉が響く。
瑞稀は黙って、星型の光の欠片を詠蓮に差し出す。
「…柚木は、もうこの結晶を持つべき人間になってる」
鍵を受け取るその手に、柚木は小さく力を込めた。
「ありがとう。少しだけ……自分を許せた気がする。」
弥生は微笑んで言った。
「人を許すことも、優しさ。でも自分を許すことは___もっと難しい。それができるようになったなら、お前はもう、きっと“大丈夫”」
「さぁ、記憶の試練を終えた、選ばれた者。このまま星を導き、新しい星を見つけ出してくれることを願ってる。」
柚木は頷く。
そして、ふと視線を向けたセラテルに、柚木は問いかけた。
「セラテル。……そろそろ教えてくれないか。……クロユリとどういう関係なのか。」
セラテルは、いつもより少しだけ真剣な表情で答える。
「僕は "成るべき姿となった者。その元の者とクロユリが深い関係にある "。」
柚木は息をのむ。
もっと深い事情がある、そんな意味を踏まえた言い方をするセラテルに柚木は言葉を返した。
「…それは、どういうこと?」
「願いで生まれたの、僕は。やり直す力を使えたのも、元の者がそう願っていたから。…最後の願い…だったのかもね。___だから星の軌道が変わり、初めから君と旅が出来た。」
詠蓮は、ポツリと呟いた。
「全てが終わったら、その意味はきっと、全部繋がるから。」
弥生と瑞稀も、静かに見守っていた。
柚木はこれ以上聞いても何も答えてくれないことを悟った。
「……分かった。ありがとう。セラテルとクロユリの関係のこと、少しだけ分かった気がするよ。」
「…なら良かった。」
セラテルが微笑みながらそう呟いた。
全ての鍵を集めた柚木は目を瞑む。
頭上から降る光は、もはや白ではなく鈍い銀色だった。空気は凍りついたまま動かず、鐘の音もどこか歪んで響いていた。
そのまま視界が暗転する。




