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花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 黒雨 のゆ
第十章 透明な祈りの中
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第二幕 記憶の扉

星光律学苑の外れにある、沈黙の図書塔。

星本室とは違った、天井を突き刺すように高くそびえる本棚には、世界に刻まれたすべての「記憶」が眠っていた。


「ここには、“星に選ばれた者”たちの記憶が封じられている」


詠蓮の声が静かに響く。

導かれるままに、柚木とセラテルはその奥へと歩みを進めた。

本棚の間を抜け、開けた空間に出たときだった。

音もなく、闇からふたつの影が現れた。


「来たな、柚木。」


前に進み出たのは、鬼哭 弥生。

その背後に立つのは、雲霧 瑞稀__冷静で、瞳の奥に静かな決意を宿す少女。


「……瑞稀と弥生…?」

「そう。そして“記憶の扉”の番人。ここを越えるには、試練が必要なの」

「試練……」

詠蓮が口を開いた。

「これは、過去と対峙する力を試す扉。君に過去と向き合う覚悟がなければ、星は鍵を託さない」

弥生が微笑んだ。

「でも安心しろ。きっと超えられる。……俺たちもかつて、そうしてここにいる。」


その言葉に、柚木の瞳が揺れた。


「……弥生たちにも、“向き合った過去”が?」

瑞稀は少しだけ視線をそらし、小さく頷いた。

「私を信じてくれた人もいた。けど、守れなかった」

「俺は……」と弥生が続ける。

「ずっと、“誰かのため”に笑ってきた。でも気づいた。誰かの涙を背負って生きるには、俺自身が泣くことを許されなきゃいけない。」


柚木は、彼らの姿に____かつての自分を重ねた。


「……行くよ。俺、自分の過去と向き合う。」

二人は静かに道を開けた。

「ようこそ、“記憶の扉”へ」



視界が闇に染まり、気づけば柚木は見知らぬ教室に立っていた。

だが、その空気に心がざわつく。懐かしく、痛みをともなう場所。

壁には、写真が飾られていた。

その中央に映る___少年。見覚えのある顔。そして優しげな瞳をしている。


「……さ、朔……?」

扉が開きそこに現れたのは_____笑顔で入ってくる、あの冬間朔だった。

「迎えに来たぞ。早く帰ろう。」


まるで夢のような光景。

柚木はその“記憶の中の朔”を見つめたまま、動けなかった。

東地方で初めて会ったはずなのに、どこか引っかかるような会話をしたことがフラッシュバックする。

柚木の中で曖昧だったものが鮮明になる。

「…俺、朔と昔から……」

「何言ってんの。僕たち、幼なじみだろ?忘れちゃったのか〜?ったく。」

慣れ親しんだその空間に居心地の良さを感じる。

(俺……こんなに、あたたかいものを、失っていたんだ……)


そのとき、背後から声がした。

「君は、なぜこの世界に来たの?」

セラテルの姿もなぜかこの記憶の空間にいた。

「……誰かを守れるようになりたかった。誰かを、失わないために……」

朔の笑顔が、優しく微笑む。

「柚木。君はもう、立派に“誰かの希望”になってるよ」

胸の奥で、何かがほどけていく。

だが次の瞬間、教室が崩れ、柚木は闇に落ちた__

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