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花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 黒雨 のゆ
第十章 透明な祈りの中
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第一幕 星の森に導かれて

異世界の空が、深く藍に沈み始めていた。


柚木とセラテルが辿り着いたのは、星の森と呼ばれる、神秘に包まれた深い森林地帯だった。

空気は冷たく澄み、どこか懐かしい匂いが鼻先をかすめる。

枝の合間からのぞく星々は、まるで彼を導くかのように瞬いていた。


「いつ見てもこの空気、この星空は変わらないね…」


柚木は息をのむように呟く。

南の高地とはまったく違う、どこか時間の流れさえ違って感じられる場所だった。


「この奥に、星光律学苑があるはずだよ」

セラテルが隣で囁く。

いつもよりも少しだけ緊張が走っていた。まるでこの地に、何か特別な意味があるように。


「……詠蓮がいるんだよね」


「うん。星を読む者、北を指揮してる四方幹部。彼女に会えば……きっと、君の旅の“霧で見えなかったものが聡明になるはず”。まるで、星が繋がった、星座のように」


その言葉に、柚木は思わずセラテルを見つめた。

「えっ?…それって……」


セラテルは何も答えなかった。

ただ静かに微笑み、そのまま歩き出す。

柚木はその背を追った。

冬の森を抜けるたびに、まるで星の記憶がひとつずつ降ってくるようだった。



森の奥、星学苑に近づくにつれ、空が一層深く、黒に染まっていく。


その中で、古びた石造りの門がふたりを迎えた。


星光律学苑

北の地方に唯一存在する学苑。

そこに立っていたのは、ひとりの少女だった。

黒とミントグリーンの髪色に、落ち着いた星のように輝いている黄色の瞳。

まるで闇夜に咲く花のような気配を纏うその少女こそ

_____

「……詠蓮?」

柚木の言葉に、少女はゆっくりと振り向いた。


「ようこそ。星に選ばれし来訪者。待ってたよ。」


その声は、静かに、でも確かな力を持っていた。

セラテルが詠蓮に近づき、微笑んだ。


「久しぶりだね、詠蓮」

「……セラテル。久しぶり。」


そのやりとりに、柚木の心にざわめきが走る。


(ふたりは……知り合い?)

けれどその問いを口にする前に、詠蓮は柚木に向き直り、言った。


「この地に踏み入れたということは、四つの鍵を手に入れた。それと同時に、もう後戻りのできない深い記憶を知る必要があるということを示唆してる。」


「……記憶……?」

柚木は眉をひそめる。

「そう。君も見たはずだよ。" 夜斗が管理している、私たちの幼い頃の___()()()()()()()()()姿()を。」

詠蓮のその言葉が、まるで心に刃を突き立てたようだった。


──ざあっ、と風が吹く。

柚木の脳裏に、セラテルの声が蘇る。

「君が、この世界に何度目かの“風”を吹かせに来たってことを」

その意味が、少しずつ形になり始めていた。

けれど、まだ全ては思い出せない。

記憶の扉は、星の光を待っている。


詠蓮は言った。


「柚木。私は、君に“記憶の試練”を与える。

それを乗り越えたとき……あなたは、自分がなぜこの世界に来たのか、本当の意味を知るはず。」

柚木はその言葉に、強くうなずいた。

「わかった。……俺は、知りたい。すべてを」

空に、星がまたたく。

新たなる“記憶”の章が、今、始まろうとしていた。

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