星の声を聴く者たち
風が優しく吹き抜ける、雲と空の狭間の高台。
南の学苑でのすべてを終え、柚木はその場にひとり…いや、もうひとりいた。
「やっと、ここまで来たね」
そう言ったのは、傍に立つセラテル。
星屑のように淡く揺れる髪が、風に靡いている。相変わらず中性的な姿だったが、その横顔にはほんの少しだけ、影が差していた。
「セラテル……君がいてくれて、ずっと助けられてきた」
柚木の言葉に、セラテルはふっと小さく笑った。
その笑みは、どこか寂しげで___けれど、とても温かかった。
「僕はね。……最初から知っていたんだ。君が、この世界に何度目かの“風”を吹かせに来たってことを」
「……え?」
唐突な言葉に、柚木は目を瞬いた。
セラテルは視線を遠く、空の彼方へ向けたまま、続ける。
「星は巡るよ。運命を描いて、そしてまた書き換える。でもね、それはとても痛みを伴うこと。悶えて、嘆いて。それでも諦めきれなくて、踏み出して。……同じように“誰かを守りたい”って願って……」
柚木は息をのんだ。
彼の言葉に、胸の奥が何かに触れたように熱くなる。
「……セラテル?」
「あの子に会った時、全部思い出す。君も、僕も。」
「あの子……?」
その言葉にセラテルは返さず、ただ微笑んだ。
けれどその目には、どこか“別れ”を知っている人の眼差しが宿っていた。
「柚木。星の導きは、必ずしも幸せを約束してくれるものじゃない。
でも__君の選んだ“今”は、誰かの涙を救ってる」
柚木は、セラテルの言葉の意味を深く理解するには、まだ若すぎたかもしれない。
けれどその声だけは、胸の奥にしっかりと刻まれた。
「……ありがとう、セラテル。君のこと、もっと知りたい。君は……何者なんだ?」
「それは、北地方で教える。……全部じゃないけど、少しだけね」
彼は小さく肩をすくめて、星の光のような笑みを浮かべた。
この人が何者であれ、きっと__自分はこの手を離さないだろう。
そして、ふたりは北を目指して歩き出した。
森の奥へ進んでいくと雪の匂いが、微かに風に混じり始めていた。




