最終幕 貝殻の中の少年たち
潮風の音が聞こえない、静かな空間。
そしてそこに置かれた一枚の肖像画__天綺と明が、幼い頃に撮られたもの。
「……ここは、私たちが最初に“異端”として扱われた場所。ツノを持つ少年と、心を読める少年。存在が、学園の規律を乱すって。」
天綺の声には、怒りも悲しみもない。ただ淡々と事実を並べるようだった。
「でもね、柚木。君はあの時、そんな俺たちに“きみはきみでいい”って言った。……だから、俺はもう一度信じてみたい。やり直すことの価値を」
明が隣で微笑む。
「今度こそ、何も失わずに進めるといいね」
柚木は、強く頷いた。
「うん……今度こそ、最後まで信じる。信じ抜くよ」
その瞬間、部屋の奥にある小さな水晶が淡く光を放った。
海の色を映したような、美しくも儚い光。
「…柚木。」
背後から声がしたかと思うと、ゆっくりと足音が近づいてきた。そしてそこに現れたのは夜斗だった。
あの時の威厳さはない。玲瓏とした表情を浮かべていた。
夜斗がその水晶を持って柚木たちのいる場所へ歩く。
「柚木。今までよく耐えてきた。そして、秩序をも。」
天綺が、そっと柚木の手を取る。
「この光は、俺たちの“記憶”……そして、再び前を向こうとする君の“決意”に応えた証」
「柚木。東の鍵、君に託すよ」
鍵はもう“試練”の先にあるものではない。
それは“信頼”によって渡されるべきものに変わっていた。
柚木は静かに頷き、手のひらの光を胸に抱きしめる。
そして、静かに口にした。
「ありがとう……次は、北へ行くよ」
──もう一度、すべてを終わらせるために。
──誰も失わない未来のために。
「柚木、北に行く前に、どうしても君に会いたいって言う人がいるんだ。」
夜斗の後ろにいたのは紛れもない___朔だ。
「_____朔!!」
「…君にどうしても会わなきゃいけない気がしてさ……」
初めて会った時の朔は落ちこぼれとされていたが、今回は違う。彼は優秀らしく矯正もされたことない、まさに正反対だった。
でも、唯一変わらないのは手に紙パックのカフェオレを持っているところだ。
予想外の人に目を見開く。その目に涙を浮かべていた。
「……この感じきっと初めましてじゃないんだろうね。なぜかは分かんないけど。………夜斗さんから聞いたよ。これから大きな高い壁に挑むって。君なら出来る気がする。僕は君の背中を押し、願うことしか出来ない。それでも、君が超克することを信じてる。僕も頑張るよ___僕なりに。」
「……ありがとう。朔____ 君には背中を押してもらってばかりだ。」
朔は微笑むと背中を向けゆっくり歩き出した。
その姿は寂しくもあり、今後の自分を奮い立たせるように地を蹴っていた。
「さぁ、行こう。柚木。」
セラテルが肩に手を乗せ合図を送る。
すると、周囲に雪混じりの白光が舞う。その光は氷の破片のように鋭く、頬を切るような冷たさを持っていた。目を開けると、雪が強く降りしきる森が広がっていた。




