第三幕 波打ち際の相方
門を抜けると、学園の海辺に風が吹いていた。
潮騒の音と共に、どこか懐かしく、それでいて胸を締めつける空気が流れている。
「……見つけた」
そう呟いた柚木の視線の先、砂浜の先端にはふたりの姿があった。
ひとりは銀の髪を風になびかせ、波打ち際をじっと見つめている少年__明。
その背に、まるで影のように寄り添うように佇む少年__天綺
ふたりとも、柚木がこの世界で出会った中でも、特に心に残る存在だった。
一度目の旅では彼らの傷を知り、寄り添いながら、鍵を受け取った。
だが、今は違う。
「……君、記憶があるの?」
そう訊いたのは天綺だった。細い指で長い白髪を押さえながら、じっと柚木を見つめてくる。
「うん……。君たちと話したこと、見た景色、心に残ってる」
「……ふうん」
それきり天綺は何も言わず、視線を海へと戻した。
その横で明が、ぽつりと口を開く。
「ループ、したんだな。」
柚木は、返事に詰まった。
だが、嘘をつく理由もなかった。
「……うん。やり直したかったんだ。……紗也を、君たちを救うために」
「紗也……。ああ、そっか。こっちの時間ではまだ……」
明の声が波に溶けていく。
「おれたちが守っているのは、もう鍵じゃない。天綺の過去、おれの過去__それをお前が再び知ろうとするなら、それ相応の覚悟がいるよ」
「…柚木、大丈夫?」
セラテルは心配そうに柚木を見つめるが、柚木本人の表情は、顔一つ変わらなかった。
天綺はゆっくりと立ち上がり、柚木の方へ歩いてくる。
その瞳は、どこまでも静かで、けれど刃のような鋭さを湛えていた。
「……ねえ、柚木。あの時、俺たちの“異端”を受け止めてくれた君が、もう一度ここに来た意味。俺たちはまだ分からない」
「でも、お前があの時本当に優しかったことは……忘れてない」
天綺が手を伸ばす。
「ついてきて。前とは違う場所で、話をしよう」
海辺から続く階段を上がり、ふたりに連れられて辿り着いたのは、学園の中でも最も古い一室だった。




