第二幕 深くに眠るオルカ
夜斗に言われるがまま、柚木とセラテルは後についていく。
着いたのは、校舎の外_____海の中へ続く門の前だ。
夜斗はその門を見つめながら低い声で問いかけた。
「……柚木。準備はいいか?」
何が待っているのか分からない柚木は答えることが出来なかった。
だが、それでも確かなものは、" もう逃げない "ということ。柚木は拳を強く握り、覚悟を決めた眼差しを見せる。
「うん。……自分を信じないと、ダメだから。」
セラテルは微笑み、柚木の隣へ着く。
その眼差しはとても温かく、柚木の心を包み込むようだった。
夜斗は門に手をかざすと青い光と共に風が吹いてきた。風に揺れる夜斗の髪からオニユリの上品な香りが柚木とセラテルの鼻を通る。
「……二人とも。目を開けて。」
夜斗の言葉に柚木とセラテルは目を開ける。
今まで閉ざされていた門が開かれ、海の中が見える透明なトンネルが見えた。
「幻想的だね。」
セラテルが見上げると、たくさんの魚が優雅に泳いでいた。仲間たちと泳いでいる魚や、一人きりで旅をしているように泳いでいる亀も見られた。
柚木とセラテルが目を輝かせ見回している光景に微笑んだ夜斗は、奥へと足を進めた。
柚木とセラテルも夜斗に続いて奥へと歩いて行った。
透明なトンネルを抜けると、大きな水槽のある部屋に着いた。
そして、その部屋にはたくさんの写真と紙が貼られていた。
幼い夜斗が無邪気に笑っている写真や天綺と明が楽しそうに砂浜で城を作っている写真。
他にも北地方、西地方、南地方のクロユリメンバーたちの過去の写真が貼られていた。
「これは………」
「僕の記録と、他のクロユリの人たちの記録。……僕たちが "異端" として扱われる前の写真。」
懐かしむようにそう呟く夜斗に二人は目が離せなかった。
「みんないい顔してるだろう?……でも一瞬で壊れた。………生まれた場所も年も違う。でもそれぞれ思ってることは同じだった。」
「夜斗……」
柚木は夜斗の肩に手を伸ばそうとした。でも、出来なかった。
「……時間が解決してくれると思った。でも、そうはいかなかった。____そして僕たちは拒絶され、見放された。」
静まり返る空間。そこに静かに咲く花が咲くように夜斗は続けた。
「……" 異端者 " の君を招いたのも、これが理由だ。」
儚く微笑む夜斗に対し、何も言えない柚木。
そこにセラテルが口を開いた。
「……夜斗。君はもう一人じゃないんだね。……良かった。」
夜斗はゆっくり頷く。
「……さて。僕の話は終わりだ。ここを出て、天綺と明に会いに行くといいよ。」
静まり返った空間に足音だけが響く。その音は、クロユリの真相に少し触れた柚木の心をあらわしたかのように重く、踵を後押しするように響いた。




