表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 黒雨 のゆ
第七章 仮死の彼岸に咲く花
42/54

第四幕 雲の奥にある記憶

霧がはれると、あたりは厚い雲で覆われていた。

「……ここで、終わらせないっ!絶対に、目を覚させるんだっ…紗也っ!!」

必死に探りながら雲をかき分けるが、厚い雲はそう簡単に消えなかった。

「柚木……彼の“鍵”は、その奥にある。恐れから逃げて閉じた記憶。君がその痛みを抱き締めなければ、彼は“前”に進めない」

セラテルそう助言をした。

柚木は、もう一度雲をかき分け、歩き出す。

痛みを、恐れずに。

「……同じことはさせないっ!!!!!」



ー学苑の雲庭にてー

紗也のまぶたが微かに揺れた。

孤亜が目を見張る。

「紗也……!」

孤亜の声に彼方が駆け寄った。

「紗也がどうした」

「い、今、まぶたがピクって、動いたのっ!」

孤亜はずっと紗也の手を握り、目を閉じて願っている。

「戻ってこようとしている……」

彼方も、空を見上げて呟く。


_____


分厚い雲を掻き分け続け、遠くに人影が見えた。

柚木は必死にその影に近づこうと無我夢中で追いかけた。

その影に近づくにつれ、足場がどんどん不安定になっていく。

それでも必死に足場を蹴る。だんだんと濃くなっていく影。

「っ、紗也っ!!!」

その瞬間。


「__柚木くん……?」

小さな、けれど確かな声が、紗也の唇から動いた。

「た、助けに来たっ、早く手を掴んで!!」

紗也は手を伸ばすが、後少しのところでてを引いてしまった。

「な、なんで……」

「………ぼくは…救われるべきじゃない気がするんだ……。」

「な訳ない!!」

紗也は驚き、目を見開いた。

「紗也!君は埜楼と約束したんじゃないの?ずっと一緒って。……紗也がここに閉じこもってる間も、埜楼はずっと君を心配そうに気にかけていた。俺がこの地方に行く時も、紗也の様子を見て来てくれって。…紗也も本当はここから抜けて、クロユリたちと、埜楼と一緒にいたいんじゃないの?」

紗也の目に涙が浮かぶ。

「……うん、ぼくもみんなといたい。埜楼といたい…でももう無理だよ……」

「大丈夫。きみには受け入れてくれる、素敵な仲間がいるじゃないか。」

「っ………うん」

もう一度手を差し伸べる柚木。そして応えるように涙を流しながら手を取った紗也。

そしてその瞬間光に包まれた。


柚木は霧の中から、現実へと戻ってくる。


目を開けたそこに、確かにいた。

紗也が___目覚めて、彼の名を呼んでいた。



「紗也!」

駆け寄り、彼の手を強く握る。

「…柚木くん……僕……」

彼の目から、涙が一粒こぼれ落ちる。

「紗也、柚木!!」

彼方の力で雲の上へと飛んできた彼方と孤亜が2人に駆け寄る。

心配と安堵の入り混じった表情で問いかけた。

「紗也大丈夫?柚木も怪我してない?」

「孤亜くん、ぼくは大丈夫。……また、みんなといたい。いてもいい?」

「もちろんだよ、紗也。」

孤亜が涙を流しながら二人に寄り添い、彼方は通信機に伝達していた。

「……紗也が、目を覚ました。また、あの時みたいに笑い合える。……埜楼、紗也はもう大丈夫だ。」

「戻ってきてくれたんだね……紗也…」

紗也は優しく微笑んだ。

「ただいま…ぼくはちゃんと、“ここにいる”」

紗也は地に足をつき、笑顔を見せた。


「……これで大丈夫。もう、何も奪わせない」



雲の上で、初めて吹いた風は

過去ではなく、これからを運んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ