表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 黒雨 のゆ
第五章 光の仮面を被った神
33/54

最終幕 記憶に咲く花

風が、柔らかく吹き抜ける。

目を開けた柚木は、最初に異世界へ来たときと同じ、花畑にいた。

ネモフィラが咲き誇るその丘で、彼はゆっくりと立ち上がる。

胸の奥が、ひどく疼いていた。


(……俺は、また……)

あの戦い。

あの選択。

あの喪失。

でも今は、まだ誰も失っていない。

仲間たちは、まだ未来にいる。


「……ありがとう、セラテル」

小さく呟いたその言葉に応えるように、風が吹いた。

再び始まる旅。

けれど、今度は違う。

彼はもう、ただの迷子じゃない。

願いが星に還り、時は戻った。

____だが、それは完全なる“やり直し”ではない。

この世界のどこかに残された“記憶のかけら”が、静かに波紋のように広がっていた。

指先が微かに震えている。

心の奥に残るのは、喪失の痛み。そして、どうしても守りたかった少年の名。

「……紗也……」

その名を呟いたとき、背後からふわりと草の香りが舞った。


「やっぱり、君がここに来ると思った」

振り向くと、そこに立っていたのは__セラテル。

本来なら、北の地で初めて出会うはずだったその存在が、まるで自然にここにいる。

少しだけ成長したようなその瞳が、静かに微笑んだ。

「星の流れが変わった。君が“願った”から、時の川の分岐がここにきたんだよ」

「セラテル……君は、どうして___」

「あの戦いも、あの声も、あの選択も。柚木は間違えてない。もう一度、"再生"し直すんだよ。やり直さなきゃ。」

「…俺、大丈夫かな…」

「大丈夫だよ。柚木なら。」

セラテルの指が、空に一筋の光を描く。

それは、遥か遠くに輝く花のような記憶だった。

「紗也を、クロユリを、今度こそ助けたいんでしょう?」

柚木は頷く。

「じゃあ、前向いて"今"と向き合わないと。」

「うん。……今度は、順序なんかに縛られない。

最初に“彼”に会って、“彼”を守るんだ」

___邾田 埜楼。

闇に呑まれた、優しき少年。

紗也を失ったことで壊れてしまった彼を、今度は壊れさせない。

柚木は、歩き出す。

まだ空は曇っているが、確かに一筋の光が射していた。

セラテルがそっと後ろを歩きながら、口元に微笑を浮かべる。

「……さあ、“はじめから、やり直そう”」

頭上から降る灰がかった光が、静かに肩を覆う。光は冷たくも重く、空気がどこか湿っている。目を閉じた瞬間、どこかで鈍い水音が響いた。

「絶対に……守るよ。今度こそ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ