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花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 水瀬 のゆ
第一章 影と光の狭間に
3/6

第一幕 星明かりを避ける者

___冷たい風が、森の奥から吹き抜ける。


あの無機質な空間とは違う。

匂いも、音も、肌に触れるものも。

まるで世界そのものが()()しているかのような、そんな感覚。


「君、見ない顔だね」


振り返ると青白い光を纏った星が現れた。


「導く者も、導かれながら生きる。僕は君に導かれた。何か迷っているの?」

「五つの、この世界の鍵となる物を集めないといけなくて。気がついたら、ここに。」

辺りを見渡してみるが、霧で包まれていてよく見えない。わかるのは森の中ということ。霧の中でもその星は光り輝いている。

「五つの鍵…か…」

顎に手を当て、何かを考える仕草をする。

「…なら、僕が君を導く星になるよ」

そういうと、光に包まれる。目を開けると小さな妖精が現れた。


「僕はセラテル。さぁ、こっちにおいで」

柚木は手を引かれ、森の奥へと進んでいく。

「本当にここに鍵があるのか?というかここはどこなんだ…?」

隣を歩くセラテルに問いかける。

「ここは北地方だよ。ここに来るのが最初なのは幸運だね。」

「どういうこと、?」

「だって、僕という相棒がいるじゃない?」

冗談混じりの笑顔で柚木に笑いかける。

「…たしかにそうだな。」

セラテルはそのまま柚木に奥へと進んでいく。


「…ここが北地方か…」

さっきよりも空気が薄くなっていき、柚木は少し息がし辛くなっていく。

「でも、鍵があるのはもっと奥深く…だよ。大丈夫?着いて来れる?」

「…だ、大丈夫。行こう。」

セラテルは変わらずの規則正しい呼吸を続ける。

「…セラテル。なんで、こんなにここは空気が薄いんだ?」

その瞬間、セラテルは手を合わせ、緑の光を出して柚木に向かい勢いよく放つ。

突然のことで柚木は咄嗟に目を瞑るが、体に痛みは生じない。むしろ、さっきよりも息がしやすい。

柚木は恐る恐る目を開けると、身体中にセラテルが放った緑の光が纏われている。

「こ、これは…?」

セラテルは微笑む。

「ここからはもっと近くに行く。つまり厳重に鍵が守られているところへ向かうから、空気が浅くなる。君はまだ体が慣れてないから、その安らぎの光があなたを守ってくれる。」


そして、柚木はセラテルの導きにより辿り着いた。

そこは、神秘の森の中に築かれた学苑。

星光律学苑せいこうりつがくえん】と呼ばれる、幻想的な場所だった。

夜でもないのに空には無数の星が輝き、空間そのものが歪んでいる。

浮遊する石橋を渡りながら、柚木はこの場所の異様な雰囲気に背筋を正す。


「何かがおかしい……でも、綺麗だ。」


学苑の門をくぐった瞬間、まるで意識が引き寄せられるような感覚に襲われた。


?「やぁやぁ、君が噂の《外界の子》?」

弾むような声と共に現れたのは、月の雫をしぼったような金の髪をふわりとはためかせた少女、雲霧 瑞稀(くもぎり みずき)

ルシェルが言っていた、クロユリという組織を象徴する礼装、漆黒のマントを右側にまとっている。


「…クロユリか?」

柚木に手を差し出しながら、屈託のない笑顔を浮かべるが、その眼差しはどこか試すようだった。

「もう私たちの存在を知ってるんだね。なら話は早い。待ってたよ、柚木來那。転送の揺れで疲れてるでしょ?でもこの学苑には"特別な人"しか入れないから。」

「でも、俺は鍵を探しに…」

一瞬瑞稀の目が鋭く柚木を指す。

「鍵…鍵ね…。」

?「もう、その辺にしとけよ。瑞稀。」

少し遠いところで壁に寄りかかっている、ツノがある赤髪と冷たい瞳の少年鬼哭 弥生(きこく やよい)。彼もクロユリの一員なのだろう。礼装をしているが、瑞稀とは反対側にマントが掛かっている。

柚木を見る視線は、敵意でも好意でもない、ただの"観察"する視線だった。


「お前がここに来ることは知っている、全部。詠蓮が"星の律"で視たんだってさ。」


"星の律"ー北地方に伝わる予知の力。

弥生によると、北地方の指導者であり、クロユリの四方幹部、玄花 詠蓮(くろいばな えれん)は柚木の来訪を知っていたらしい。


「この子、面白い。詠蓮の言った通りね。」

瑞稀の言葉に、弥生は頷く。

「行くぞ、詠蓮の所に。着いてこい。」

そう言い放ち、弥生は背を向け歩き出す。

そして柚木より少し前を歩いていた瑞稀は振り返る。


「…ようこそ、北地方へ。そして、星光律学苑へ。」








見ていただきありがとうございます

北地方へ突入です

瑞稀と弥生に柚木とセラテルはどこへ連れて行かれるのか

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