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花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 黒雨 のゆ
第四章 空に還る約束
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最終幕 待っていたもの

神苑の中心___巨大な聖なる花を象った庭園の中央に、四人は並んで立っていた。

花弁のように広がる白い石畳。遠くでは風鈴のような音が木々の葉からこぼれ、どこか懐かしい匂いが漂っている。

「……本当に、これで終わり?」

柚木の問いに、彼方は微笑みながらも、目を伏せた。

「終わりじゃない。始まり。……君が“全部”を抱えなきゃいけない、そこからの物語」

「まあまあ、とりあえず、お疲れ様ってことで〜」

孤亜が柚木を労う。紗也は感謝を伝えていた。

そして彼方は首元から吊り下げていた銀の鍵を引き抜いた。

花の形をしたその鍵には、赤い宝石が埋め込まれている。どこか、彼方自身の心臓のように、静かに脈打っていた。

「これは、“南”を象徴する希望の鍵。君に託す。」

「…紗也を助けてくれたお礼。」

「柚木くん。ありがとう。」

彼方と孤亜の隣に立っている紗也。

「…やっぱ、柚木はすごいね〜。難なくこなせちゃった。流石、夜斗を説得した男だ」

「他の地方のことも知ってるの?」

柚木は前から疑問を持っていた。

____なぜどの地方に行ったかを知っているのか。

____そもそもどこまで柚木自身を知っているのか。

答えは簡単だった。

「各地方にいるだけで、情報は全て共有されてるし、"影の協力者"もいるからね。」

西地方で甘虎から聞いていた"影の協力者"。

「甘虎も言ってたけど、その影の協力者って何なんだ…?」

「……決して前には出ない存在。強力なクロユリのサポーターだよ。」

誇らしげに言う孤亜に便乗するように紗也も話し始めた。

「柚木くんとちょっと似てるかも。顔とかじゃなくて、雰囲気?」

分かる〜!と盛り上がる孤亜と紗也に彼方は呆れた態度を見せるが、笑みが溢れていた。だが場の空気を変えるかのように咳払いをする。

「柚木。これ、受け取ってくれるか?」

柚木は黙ってその鍵を両手で受け取った。

四つ目。あと一つ。……それでルシェルに渡して、帰れる。

「……でも、あと一つは……」

「揃ってるよ」

彼方の声は、どこか寂しげだった。柚木がハッとして顔を上げる。

「え?」

彼方は柚木の胸元を指さした。

いつも着ている制服のポケット____その内側から、何かが光を帯び始めている。

柚木は慌てて手を差し入れ、硬い感触を掴んだ。

取り出したのは____ずっと前から持っていた、あの黒い石。

異世界に来る前から、なぜかポケットに入っていた、黒曜石。

それが今、ほのかに花の紋を浮かび上がらせながら、温かく光っている。


「君がこの世界に来た時から……いや、きっと、それ以前から。運命は、君に“鍵”を預けていたんだよ」

彼方の声は優しいが、どこか遠くを見ているようだった。

「五つ目の鍵、それは『君自身』が運んできた。……世界と世界の狭間に咲く“境界の花”。」

「……そんなの、聞いてないよ」

「りんにも、俺にも、知らされてなかった。けれど、もう決まってたんだ。ずっと昔に」

黒曜石は、柚木の手の中でふわりと浮かび、光の花弁を広げていく。

それはまるで、彼に“受け入れる覚悟”を問いかけるかのように___。

「これで、五つが揃った。……あとは君が、“それ”を誰に託すし、願いを示すか。」


柚木は、黒曜石と鍵を胸に抱きしめる。

扉は開かれる。希望か、絶望か。その先に何があるのかは、まだ見えない。

「ありがとう、彼方。」

「……礼には及ばない。持つべき者に託しただけだ。」

その言葉に、柚木はふと笑った。南の光の中で、彼方はまるで空気に溶けるように姿を消していく。


「じゃあ、行ってらっしゃい、柚木來那。君が咲かせる花が、誰かの絶望に届くことを。」

「幸運を祈ってる。頑張ってね」

孤亜は、紗也が彼方の方へ向かう姿を見届けた後その場で一回転し姿を消す。


空全体が白炎のような光に揺らめき、視界が燃えるような明るさに覆われる。柚木は耐えきれず目を閉じる。まぶしさの向こうで、低く響く鐘の音が長く鳴り続けていた。

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