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花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 黒雨 のゆ
第三章 赦しが咲く時
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最終幕 再び、共に咲く

柚木が甘虎に着いていくと、そこにはすでに見慣れた二人の顔があった。

甘虎はゆっくりと唯人と埜楼の前に立つ。

「おまたせ。待たせちゃったかな。」

「いや、気にしないで。」

唯人が微笑みながらそう答える。

「……終わった、のかな」

柚木の声はどこか震えていた。心に残るものはまだ消えない。だが、それでも歩を進める勇気を得たのは確かだった。

「うん。君はちゃんと選んだ」

甘虎がにこりと笑う。その眼差しは優しく、それでいて試練を終えた者を祝福するように澄んでいた。

「これで、一段と強くなったんじゃない?」

唯人が優しくこたえる。

その時、埜楼が口を開いた。

彼は神殿の壁に寄りかかり、腕を組んだまま視線を宙に彷徨わせていたが、ふと柚木に向き直る。

「なぁ……次は南だろ」

「うん、そう聞いてる」

柚木が頷くと、埜楼は少しだけ目を伏せた。その仕草に、いつもの挑発的な色はなかった。

「……そこに、紗也(しや)がいるはずだ」

「紗也?」

思わず聞き返す柚木に、埜楼は小さく息を吐く。

「俺の……幼馴染だよ。昔、一緒に馬鹿みたいに空を見上げて過ごした。だけど、違う地方に向かった。自分で決めたことだけど…でも…」

そこで言葉が途切れる。掠れた声が残るだけで、続きを語ろうとしない。

柚木は静かに問いかけた。

「今は何してるの?」

「……知らねぇよ。俺が最後に見た時のままなら、何かを探してる顔だった。記憶をなくしてたのか、ただ思い出したくなかったのか……わからないけど。」

埜楼の声は、いつになく弱々しかった。まるで過去を怖れるように言葉を選んでいる。

柚木はその姿をじっと見つめ、ゆっくりと頷いた。

「……会いたいんだね」

「……っ!」

埜楼は驚いたように目を見開き、それからすぐに視線を逸らす。

「別に……会いたいわけじゃねぇ。ただ……」

拳を握り、声を押し殺すように続ける。

「様子を見てきてほしい。それだけでいい」

「埜楼……」

柚木は胸の奥に熱いものを覚えた。再生の神殿で共に過ごした時間が、確かに埜楼の中にも何かを芽生えさせたのだと。

甘虎が穏やかに言葉を添える。

「……それもまた“再生”のひとつの形なのかもしれないね」

埜楼は答えず、ただ黙って天井から差し込む光を見上げた。

やがて、神殿の扉が開き、強い風が流れ込んでくる。

空を渡る風の匂い──それは新たな旅立ちの合図のように感じられた。

「気をつけてね。」

唯人が声をかける。

「……うん」

柚木は深く頷き、甘虎が穏やかに微笑む。


「踏み躙られても、もがいて目的を果たせ。この地にある大地のように__そして、今までの軌跡を胸に。」


「……!」

それは、この旅で得られた新たな仲間の言葉だった。再生の神殿で柚木たちは、自分自身の傷と向き合い、そして乗り越えた。それはほんの小さな一歩にすぎないかもしれない。けれどその足元には、たしかに“希望”の芽が芽吹いていた。

「応援してる。」

「おれたちはここに居る。」

唯人は一歩後ろから柚木に声をかけ、埜楼は拳をつくり柚木左胸を軽く叩く。

「…ありがとう。」

次に向かうのは、南の地方。

____旅は、まだ終わらない。


柚木はゆっくりと目を閉じると、天井から降り注ぐ金色の光が、花びらのように舞い落ちる。肌に触れた瞬間、百合とハーブの香りが漂い、胸の奥が温かくなった。次に目を開けたとき、風が吹き抜ける高所に立っていた。

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