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花ヨ、終焉ヲ告ゲヨ。  作者: 黒雨 のゆ
第二章 祈りは海を越えて
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第六幕 心の解放

視界が開けると、生徒たちは整列していた。

まるで人形にように、何の意思も宿さぬ眼差しで、完璧な直立不動を保ち誰かが出てくるのを待っていた。

教会のようなこの場所。でもどこか現実味がない。そこに、柚木は佇んでいた。

大きな時計台の針は過去に戻るかのように逆に動いていた。

「ここは…」

「僕の世界だ。」

生徒たちの前にゆっくりと姿を現したのは、夜斗だった。

ここは夜斗の創り出した幻想世界であり秩序が理想の形となって現れた閉じた世界。

そこに、柚木は佇んでいた。

教会を象徴するかのように大きい時計台の針は過去に戻るかのように逆に動いていた。


「これが、君の望んだ世界なの?」

その声は静かに、しかし確かに場を切り裂くように響いた。

「…あぁ。君も見ただろう?あの、消失を。」

夜斗は、大きな時計台を背に冷たい瞳を柚木に向ける。

「理想の秩序こそが、人を救う。君のような"異端"がそれを壊すなら__君もまた、排除されるべきだ。」

夜斗は柚木に近づきながら、秩序を守ってきたその手に力を込め、乱すものを排除するための雫が、静かに形を生成していく。

「秩序を乱すものは、此処には居させない。」


“完全なる理想”が構築された仮想空間。歪んだほどの『正しさ』に囲まれた中で、柚木は何度も倒れ、それでも立ち上がる。

夜斗の放つ言葉は刃のように鋭い。

「感情は人を壊す。記憶は人を縛る。だから僕は、守るために自分を捨てた!」

だんだんと夜斗の感情が現れ、雫の形も、勢いも強くなっていく。


「秩序に囲まれた世界なら、何もいらない。それに気づいてからは楽になったよ。秩序の傀儡として此処を守っていけばいいって。」

「…違う!夜斗!!」

あたりは海中のように水で包まれていた。だが、不思議なことに柚木は息ができている。きっと幻想世界だからなのだろうと柚木は腑に落ちる。

「…君には分からないだろうな。今まで何度も何度も正した。期待しては裏切られる。なら、理想の秩序を押し付けるしかないんだよ!!」

「こんなことして何になる!!俺は、俺たちはお前の人形じゃないんだ!」

「っ!黙れ!!!!」

雫の形だったものが水龍のように成している。その水龍は柚木に向かって泳いでくる。

柚木は目を閉じ受け止めようとした。


______だがどこにも痛みは感じられない。ゆっくりを目を開けると天綺と明が立っていた。

「もう、やめてよ。そんな夜斗見たくない。」

「夜斗、落ち着け。」

柚木を水龍から守るように立ちながら夜斗に話す。

「……お前たちも裏切るのか?なら僕の敵だ。」

そして再度水龍を生成し、三人に襲いかかる。その威勢は生きているように縦横打尽に動き回る。水龍を操っている夜斗の姿は完全に冷静さを失っていた。天綺が水龍を防ぎながら夜斗を落ち着かせる。

「裏切りじゃない!俺たちは自分の意志でクロユリに入り夜斗に忠誠を誓った。これは嘘じゃない。秩序を守ることは自身を守る最大の防御。でも今の夜斗は違う。」


夜斗の力が弱くなった。その一瞬をつき、明は夜斗の胸ぐらを掴む。

「おれも天綺も柚木も、夜斗も。”異端”とされてきた身分だ。でも、今は違うだろ!お前だって、今お前が作り出した秩序を壊してるじゃないか!!」

「うるさい!!……そうだ、そうだよ。ここは僕が作り出した秩序だ。だから僕がこの学園の秩序(ルール)でありこの東地方の王なんだよ。僕はもう何も失わない。僕の居るべき世界は秩序に囲まれた世界だ。」

「これ以上続くならこの世界も、夜斗自身も崩壊して戻れなくなる!!」

必死に天綺が止めるが夜斗には響いていないようだった。

「なぁ、天綺。ここの主人(あるじ)は誰?…そう。この僕だ。僕が居る限りここは崩壊したりしない。だってここは僕の創り出した世界だ。」

「……今のお前、狂ってる。矛盾もいい加減にしろよ!!」

「明。僕に逆らうなら、副官である君たちにも消えてもらうよ。」

夜斗の自暴自棄な行動に二人は何も言えず立ち止まってしまった。


「「……消えるなら、天綺/明 と共に…。」」

二人は目を閉じ、覚悟を決めていた。そんな二人を見た柚木は、夜斗に届くよう声を振り絞った。

「夜斗!本当はそんなの本望じゃないはずだ!お前たちは互いに認め合ってるじゃないか!自分たちはここに居ていいって、そう思える場所があるじゃないか!本当は守りたかったんじゃないのかよ!!!」

「…!」

柚木の一言が夜斗の心を打ち抜いた。

張り詰めていた空間が音を立てて崩れ、仮想の世界がひとひらずつ剥がれていく。

「…るさい…うるさい。…やめろ…うぅ……。」

夜斗は、その場に膝についた。

その瞳から、涙が零れた。

「……僕は、守りたかった。失いたくなかった…妹も、世界も……自分の、理想も……」

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