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5/23(金):システム

 ハイピジンエリアに向かうとそれはもう大量のハイピジンが上空で待ち構えていた。


「うわぁ……いっぱいいるなぁ」


 一時間もここから離れていないのにこんなにいるとは。経験値稼ぎのやりがいがあるというものだ。


 でもチンアントの時は巣穴があってそこから生まれていたけどハイピジンはそういうものがないのだろうか。


 ハトの巣と言えば木の枝の上とかで作られるんだろうがこんな大きなハトの巣を作ろうとしたら木がどのくらい大きくないといけないんだ。


 たぶん巣はないと思うけど。


「くはっ、来い」


 待ち構えていた大量のハイピジンは上空で俺を取り囲むように移動して全方位から一斉に飛んできた。


 チンアントの時とは違い次も学習して向かってきている。カラスなら分かるがハトって頭がいいのか?


 いやそれよりも生き残っている個体がいなかったはずだからこうして違う動きをするのは少し疑問に思うがそれよりもまず先にハイピジンを対応することにした。


「ドーム」


 中級土魔法で圧縮した土を俺の回りに覆ってハイピジンからの攻撃を防ぐ。


 ハイピジンがドームにぶつかっても音が中に響くだけで初撃は防げた。だけどハイピジンは潰れている仲間などお構いなしに突っ込んできているようだ。


「我慢比べをするつもりはないぞ」


 水魔法よりかは少しだけ手こずることに気がついたができないこともない、ドームから鋭い突起物を出してハリネズミのようになった。


 こうして使い比べて分かったが水魔法はかなり融通が利く魔法だ。水魔法は操作している水を簡単に変化させることができるが土魔法は水魔法より少し手こずってしまう。


 こういうことを調べるのも楽しいと思いつつ、それでもなお突っ込んでいるハイピジンだが一部のハイピジンが土にもぐって下から来ようとしていることに気がついた。


「くはっ、執念だな」


 ボコッと俺の足元から顔を出す一体のハイピジン。それを中級水魔法のジェットで切り裂く。


 その穴からロケット鉛筆のように次から次へとハイピジンが来ようとしているのが感知で分かった。


 その穴を土魔法で圧縮して閉じたことでハイピジンは死んだ。


 このままでは待つだけになるがそれではつまらない。


 ハリをそのまま射出してさらに水魔法のランスでドームを押しのけて射出した。


 外に出ればさっきほどはいないがまだ五十くらい数がいた。これは最初に見た時よりも増えているな。


 チンアントは集団で来て、ハイピジンは速度で来ると思っていたのにまさか速度と集団で来るとは思わなかった。


 この集団で来るのが基本になっているのならかなりEXPは稼げそうだ。


 再びハイピジンが全方位から来ているのを見て次は土魔法で防ぐのではなくすべてカウンターで仕留めることにした。


 全方位から来ているから難しそうだができないことはないと思った。


 このハイピジンたちもよく感知していればプログラミングされているような動きをしていた。さっきと動きが違うから学習しているのかと思ったけどそういう動きのパターンがあっただけなのだろう。


 そのプログラミングされた動きを見切ればできるはずだ。


「くはっ、いいねぇ」


 面白くなってきた。やっぱりこういうことをやらないと冒険者って感じがしない。


 どう相手を倒すか、どう相手に想定の動きをさせるか、どう気持ちよく相手を倒せるか。それを考えるのも冒険者の醍醐味だろう。


 未知を発見するのも良し。モンスターを倒すのも良し。色々と良しなのだ。


「くはっ」


 追撃してくるハイピジンはもうおらず、すべて殺し尽くした。


 前半に倒したチンアント並みにいたな。それが全方位から来ていたからチンアントの時よりも多くは感じた。


 でもこれでまだ二時間も経過していないから驚きだ。だってもうLv100を超えているんだから。


『新月学人

 Lv127

 HP(1244/1244)

 MP(478/563)

 ATK:723(+20)

 DEF:664(+10)

 AGI:700(+3)

 DEX:602

 RES:523

 LUK:10345

 EXP(8926/16697)

 スキル

 スライム特化/剣士の心得/虫特化/虫特化/鳥特化/鳥特化

 アビリティ

 感知/属性付与/魔力操作

 魔法

 中級水魔法/初級水魔法/中級土魔法/初級土魔法』


 効率がいいという次元を遥かに超越している。やる気があれば永遠にレベルを上げ続けられる場所だ。


 レベル上限があるのかないのかについてネットで議論されていたことがあったらしいが、少なくとも百ではないらしい。上限を調べてみたい気持ちもあるが、上限がない方が俺は嬉しい。


 もう少し上げてもいいと思ったけど今日はここまでにする。レベルを二百にしたらどうなるのかも気になるが、今はダンジョン都市でやりたいことができた。


「くはっ、すごいな……!」


 今までの俺じゃないくらいに身体能力が異常に上がっている。戦っている時は戦いに夢中になっているから気にならなかったが改めてダンジョン都市まで戻ったら認識できた。


 俺がLv88の時でも速かったが四十近くレベルが上がっていれば速くなるのは当然か。


 Lv82の人もかなり動けていたのかと思うとヤバい。公表されている人はアメリカ人だったか。女性か男性かは分からない。


 一息ついて地上に戻ってスマホを確認しようか……いや、あれだけ倒してもまだ全く疲れていない。


 もう三回くらいは余裕だけど急ぐ必要はない。二日でレベルが百以上に上がったのだから少しくらいゆとりがないといけない。じゃないと歯止めが効かなくなるし。


 だからLv100以上で入れるようになるダンジョン都市にある中央の建物に入ることにした。


 近くにあって入れない場所なのだから重要な施設であることに間違いはないはずだ。モンスターを倒したいけど、こっちの好奇心の方が勝った。


「入れる……!」


 昨日までバリアで入れなかったバリアは簡単に抜けられ、そびえ立つ建物の中に入る。


 正面に入れば自動で扉が開いて中を見ると最先端の技術が溢れている操作室が先に広がっていた。


 あまりこういうことに詳しくないから変なところをいじりたくないのだが……これって、ここで外の様子を監視しているのか?


 外を見れるモニターの前にあるパネルを操作しようとする。


『システム管理者権限確認中……Lv2では操作できません』

「Lv3が必要ってことか……いやLv3以上があるかもしれない」


 色々なところを触るがどれもがLv3以上の管理者権限がないと触れなかった。


『システム管理者権限確認中……操作解放』

「……これは触れる」


 触れるものが出てきて操作してみる。


「俺の名前だ」


 モニターをよく見ると名前のリストが出ておりその一番上が俺の名前だった。


『新月学人 男 24 127 2』

「個人情報駄々洩れだな」


 名前、性別、年齢、レベル、システム管理者権限の順で簡単に表示されていた。


 どうやら俺が一番上にいるのはレベル順だから一番上にいるみたいだ。


「俺が一番上のレベルになったのか……」


 つい一昨日までは才能ナシの末路と言われていたのに二日でこんなになってしまった。人生何が起こるか分からないなぁ。


 ふと俺の一つ下の名前を見る。


『アシュリー・ファーマー 女 29 82 0』

「この人が最高レベルの人か。女性だったのか」


 公表していない高レベルの人がいるのかと思ったが、バッチリ公表されている人が昨日まで最高レベルの人だった。


「これは……ただ見れるだけか?」


 これはこれですごく便利な代物だけどこれを楽しむ趣味は俺にはない。


 色々と操作してみたけどできることはなさそうだった。もしかしたら管理者権限があれば何かできるのかもしれないがそれを考えるだけ無駄だな。


 検索機能があったから月見里輝夜と検索すると一人だけヒットした。


『月見里輝夜 女 24 13 0』


 これを悪用すれば悪用できるだろうがそんなしょうもないことはしない。


 今のところ相手のレベルを知ることはできないとされている。なら何故このアシュリー・ファーマーさんのレベルが公表されているのか。


 それはアメリカがそういうスキルがあると言って主張した結果、それが最高レベルがいるとなった。


 国がこんなことでそう主張しているのだから納得するしかないだろう。ネットでは何かの陰謀だと考える人がいるようだけど。


 だからこうして知ることは相手がレベルを詐称している時に使えるし、レベルを高く見せている人の本当のレベルを見れたりするわけだ。


 俺的にはそれが何だと言う話だが。


 他に操作できる場所はなかったが、調べていると上にあがるエレベーターらしい場所を見つけたがそこもバリアに阻まれていた。


「今度はLv500かよ。入らせる気あるのか?」


 次のバリアはLv500以上じゃないと入れないようだ。でもこのまま行けばできそうな気がするけど、どうだろうな。


 このダンジョン都市は輝夜たちと一緒の冒険をするための場所だからここに入るためにレベルを上げるわけではない。


 レベルが五百になったら入ってみようという気持ちでいよう。


「……少し早いけど帰るか」


 まだ十四時だが満ち足りた気分でダンジョン都市から出る。


 Lv100到達報酬を何にするのか決めたり、後半で倒したハイピジンのドロップアイテムを整理したり、五の倍数のレベル到達報酬を確認したりと、ダンジョンにいなくても楽しめることはある。


 あっ、楽しめることって思ってしまった。でも楽しいのだから仕方がない。まず楽しむことが大事だし楽しめなければ冒険者なんてできないよな。

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