6/4(水):五人パーティ
「一日休めばスッキリするわね。今日はたくさん行けそうだわ」
「休んだんじゃなくて病気だったんだけどな。まあやる気があるのはいいことだ」
「何を言っているのかしら。私はいつでもやる気よ?」
「それもそうだな。俺と同じだ」
「えぇ、そうよね」
すっかりと元気になった輝夜と今日も一緒のダンジョンに向かう。
「来るのかしらね、愛理は」
「来るだろ。輝夜が同じ立場でも来るだろ?」
「それはそうね。でも彼女は学人や私と違うのだから来ない可能性は十分にあるわ」
「立場もあるだろうしな」
今の時刻は九時五十六分。東京ダンジョン前のロビーで十時になるまではここで待つことにした。
愛理から何も連絡は来ていないから十時になれば行くことにするとここに来る前に輝夜と話した。
輝夜は愛理が来てもいいけど俺と二人っきりでダンジョンに行きたいとは言っていたな。可愛い。
「お待たせ! 学人くん! 輝夜さん!」
「……来たのね」
「おはよう、愛理」
愛理が来たことでどうにも言えない感情の輝夜。
そして愛理は東雲さんではなく別の二人の女性と一緒に来ていた。
「おはようございますであります! 団長殿! 副団長殿!」
「おはようございます、朝日奈さん」
一人はスーツを着た元気がいい朝日奈さん。
「どーも、宵桜です。一応昇龍クランに所属していまーす」
もう一人はショートカットの黒髪の先端が青色がかって赤色のメッシュをしているダウナー系な女性だった。
この人が追加された三人のうちの一人か。
「はじめまして、新月学人です。昇龍クランの団長ですが気にしないでください」
「あっ、ホント? なら砕けた感じでしゃべろ」
「桜、それはあまりにも失礼でありますよ。最低限の礼節は弁えていなくては」
「えっ、でも言われたし……」
「朝日奈さんも気にしなくていいですよ? 俺はそういうこと気にしませんから」
「いえ! 自分はこう話していた方が楽であります! お心遣いは感謝いたします!」
まあ朝日奈さんはこういう感じだって認識しているしこれの方がいいか。
「愛理。今日はこの二人と一緒なのか?」
「うん、そうだよ。早紀は用事があるみたいだったから隙を見てダンジョンに行こうと思っていたけどこの二人を一緒に連れて行けば問題ないって早紀に言われて一緒に来たんだよ」
「そうなのか」
それはどういう意図で二人を連れてきたんだ? 昇龍クランの団員との顔合わせのためなのか、それとも単純に愛理の護衛につけたのか。
俺の感じ方はこの二人も一緒に強くしてほしいと東雲さんのメッセージだと思ってしまう。団員なのだからそうしてもいいのだが。
「愛理、少しいいか?」
「どうしたの?」
愛理と一緒に朝日奈さんと宵さんと距離をとる。
「あの二人、信用できる人なのか?」
「できるよ。昇龍クランに入った三人は私と早紀は信用できると思ってるよ」
「源三郎さんが選んだんじゃないのか?」
「そうだけどそこを加味したんだと思う。その方が私が学人くんを説得できるからね」
「あぁ、そういう感じか」
随分と面白いことをするな源三郎さんは。
でも朝日奈さんと宵さんの第一印象は悪くはない。俺の直感だがこの二人も面白いことをしてくれると感じてしまう。
『学人、二人にも能力をあげるのかしら?』
朝日奈さんと宵さんのところにいる輝夜から念話でそう聞かれた。
『そのつもりだ。輝夜は何か感じたことはあるか?』
『ないわよ。どうせ能力が余っているのだから好きにしてもいいと思うわ』
『そうだな』
昨日の午後はダンジョンに行かなかった代わりに手に入った能力ボトルやら武具を輝夜と一緒に確認していたからその多さを輝夜は把握している。
今の輝夜は賢王の宝杖に賢王のローブ、賢王の腕輪、神秘の指輪を装備している状態だがまだ同じようなやつもあるしたかが数人では使いきれないほどの武具も能力も得ている。
「じゃあダンジョンに行きますか」
「そうだね!」
「えぇ」
俺たち五人はダンジョンに入る。一階層は何もおらず、二階層もモンスターが少ないためそこそこモンスターがいる三階層で止まる。
「朝日奈さんと宵さんのダンジョンでの職業を聞いてもいいですか?」
「あたしのことは桜でいいから。宵さんって呼ばれるの嫌だし。……職業って言われると分かんないけど、あ前衛で敵の狙いを定めさせないようにしてる。『ヘイト』のアビリティを持ってるから」
ヘイトか。いいアビリティを持っているな。
「自分は銃火器で戦うであります! ポジションは中衛になります!」
銃火器か。銃火器はある程度のモンスターまでは有効に使うことができるけどある一定階層まで進めば銃弾が通じなくなる。
東京ダンジョンなら九階層までが限界らしい。
銃弾が通じなくなる理由はいくつかあるが、銃弾が通らない、銃弾に反応される、狙いを定める前にやられてしまうが主な原因らしい。
それに比べて冒険者はモンスター以上の身体能力を見せるから今では銃火器よりも冒険者の方が危険視されている。
それに銃火器の所持も日本でもそれなりに緩くなっている。だって銃火器以上の性能を持つ意思を持った生物、人間がいるのだから拳銃を隠し持つよりもよっぽど危険だ。
さて、この二人に渡す能力は大体決まっている。それに面白いことになりそうだと確信に近い直感を覚えるから渡すか。
「愛理、これを」
「何のボトル!?」
「飲めば分かる」
最初に愛理にはパーティ作成のボトルを渡して飲んでもらう。すぐに飲み干した愛理に俺と輝夜のパーティに招待する。
「パーティ……? へぇ……!」
パーティ作成の文字と俺からのパーティ招待を受けた愛理はすぐに俺と輝夜のパーティに参加した。
「え、えええええええええええええええぇっ!?」
おそらく俺のステータスやら輝夜のステータスを見て驚いているのだろう。
朝日奈さんと桜さんは愛理のリアクションを見て不思議そうな表情をしている。
「えっ、こ、ここ、これって……!?」
「今は詮索はなしだ。これからこっちの二人に渡すものがあるから輝夜と愛理は適当にモンスターを倒して時間を潰しておいてくれ」
「分かったわ。行くわよ愛理」
「えっ、えぇ……もう少しだけ情報の処理をさせてくれないかなぁ……」
昨日の件で暇をさせてはいけないと思ったから輝夜と愛理には適当にダンジョン探索に行ってもらうことにした。
「二人は東雲さんや愛理から何か聞いていますか?」
「いえ、ダンジョンの出来事については一切知らされていません!」
「同じく」
「そうですか」
これで聞かされていると言われても困るからな。愛理じゃないんだから知らされていたとしても馬鹿正直には答えないか。
「二人はその戦闘スタイルを変えようとは思っていますか?」
「自分はそう思っていません! 自分は銃が好きでありますから!」
「あたしも攻撃受けるの好きじゃないから特には。逃げるの好きだし」
「分かりました」
違うスタイルを言われたとしても少し時間をもらうだけだから問題はなかったがこれならすぐに終わりそうだな。
「まずは朝日奈さんからですね。銃火器を扱うということでいいですよね?」
「そうでありますが……」
「それならまずはこのボトルをどうぞ」
「ぼ、ボトルでありますか!? あ、ありがとうございます!」
朝日奈さんには『加速』『減速』『属性付与』『爆破』の四つを渡した。
『加速
分類:アビリティ
ランク:8
認識したものの速さを上げる』
『減速
分類:アビリティ
ランク:9
認識したものの速さを下げる』
「魔法は習得していますか?」
「いえ習得していません」
「ほしい魔法はありますか? なければ五属性の魔法を初級と中級を渡します」
「それでお願いするであります!」
「はいどうぞ」
源三郎さんに売っている価格で言えば魔法だけで三十億、加速とかは価格が計り知れないからかなり朝日奈さんに投資していることになる。
でもどうやって使うのか楽しみだ。
「次は桜さんですね。スピード重視の能力で構いませんか?」
「あー……痛いのが嫌だからそういうのない?」
「ありますよ。魔法はどうしますか?」
「雷魔法だけでいいよ。どーせあたしに使うのもったいないし」
桜さんには『重加速』『愛神』『バリア』に初級と中級の雷魔法を渡した。ステータスが百倍になる神シリーズは俺が習得しているから愛神は上書きして渡す。
『重加速
分類:アビリティ
ランク:10
加速すれば加速するだけ速くなる』
『バリア
分類:アビリティ
ランク:7
MPに応じて物理的、魔法的衝撃を防ぐバリアを展開する』
このバリアと魔法障壁の二つがどう違うのか考えた。たぶんバリアの最高硬度は決まっているけど魔法障壁は魔力の消費に応じて強さが変わるんだろうな。
「終わったかな?」
「もうこの階層にはモンスターが出てこないわ」
「もう終わったところだ」
二人はボトルをすべて飲み干してステータスを確認している。
「準備はいいですか? 朝日奈さん、桜さん」
「はい! 問題ないであります!」
「まぁ……行ける」
この二人、テンションの差が激しいな。でもそれがいい。
「では行きましょう」




