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6/2(月):着々と

 俺たち四人はそれぞれが武器をもってダンジョンの中を進んでいくが一階層は全くスライムが出てこなかった。


「スライムいないね」

「あぁ……そうだな」


 これは前兆なのか? いや偶然かもしれない。これから起こることを無理矢理結びつけようとしている。それが前兆だとしても、まあそれがどうしたという感じだな。


 二階層に降りればチンアント六体に遭遇した。


「あのチンアントは私が――」


 愛理が宝剣で斬りかかろうとする前に輝夜が雷魔法で六体すべて打ち抜いた。


「早い者勝ちよ」

「追いつけるかなぁ……」


 雷の速度に勝とうとするなんて俺ならまだしも無理だろ。


『ま、学人。レベルがかなり上がっているわ!』

『……これはヤバいな』


 輝夜からの念話で輝夜のステータスを見るとかなりEXPを貰ってレベルが上がっていた。


『EXP超ブーストはスキルが重複して三乗になるのか。これはとんでもないな』

『レベルの問題は解決ね。……くふっ』


 本来のチンアントのEXPは大体六から九。おそらく六体の本来のEXPは四十八だが、そこから八百万倍して四億ほどのEXPを得ている。もうダンジョン都市の比じゃないだろ。


 今の輝夜のレベルは114になっている。チンアントを六体倒すだけで俺に次ぐレベルになっているんだぞ? チートだ。


 でも見た感じレベルが百を超えてから数百万単位を要求されているみたいだな。これくらいじゃないと普通の人のレベル上げは大変そうだ。


「気が変わったわ。次は愛理に譲るわ」

「本当!? やった!」


 これまた愛理もEXP超ブーストで驚くんだろうな。


 今度はチンアントが五体現れたことで愛理が前に立つ。


「よしっ」


 貴公子の宝剣を握る姿は様になっている。愛理は火魔法を剣に纏って走り出した。


 それだけでもステータスが上昇してチンアント五体を簡単に倒すことができた。


「え、えぇぇっ!?」

「レベルが上がったか?」

「上がった! どれだけEXPがもらえるの!?」


 EXP超ブーストが二つだけでも四千倍にはなるのか。最低でもEXPが十二万貰えているわけだ。やっぱりダンジョン都市よりも強いな。


 でもまあダンジョン都市ではドロップアイテムを手にいれれるわけだからどっちでレベル上げをするかと言えばダンジョン都市だな。本音を言えばこんなチマチマした戦いではもう満足できなくなっている。


 それならここでは他の人に譲ろう。


「もっとやるね!」


 そこから愛理が出てくるモンスターを倒してレベルを上げていた。


 もう一つEXP超ブーストを渡してもいいかもしれないが、渡し過ぎても輝夜みたいなステータス値が物を言う職業ならともかく体を動かす職業はこれくらいがちょうどいいのかもしれない。そうしないとステータスに振り回されそうだ。


「愛理、そろそろで東雲さんに譲った方がいいんじゃないのか?」

「えー、もっとしたいよ!」

「それなら愛理と東雲さんの早い者勝ちでいいんじゃないか?」

「そうしましょう。そうでなければお嬢さまにステータスで負けて逃げられてしまいますから」


 この言い方は今までにも愛理が逃げようとしたことがあったんだな。


 今は愛理の方がステータス値は高そうだから出てくるモンスターは愛理がとるか? と思っていたら四階層にいるハイピジン三体を東雲さんが無限暗器から取り出した針で的確に急所を突いて絶命させた。


「えっ? 何それ。はやくない?」

「……どうやら気づかれない対象が多ければ多いほどステータスが上昇するようです。それにかなりEXPがもらえますね」

「愛理の方が有利かと思ったがそうではないようだな」

「むー! 絶対に負けないんだから!」

「ここからは早い者勝ちね。私は十分に待ったわよ」

「えっ!? ……学人くんは……?」

「俺は参加しないぞ。危なそうだったら参加はするけど……この調子なら大丈夫そうだな」

「よしっ! それなら何とかやるね!」


 この中で一番楽しんで気合がバッチリなのは愛理だ。


 まあこれからのことを考えれば俺を抜きにして頑張ってもらう方がいいな。でも暇だから剣でも振っておこう。


「えっ……腕が見えないんだけど何をしているのかな……?」

「剣を振ってる」

「あっ、剣を振っているんだ……」


 こんなことをしていたら愛理じゃなくても言われるだろうな。輝夜は何も言わないし東雲さんは特に感情のない顔でこちらを見ているだけだ。


「ど、どうしてか聞いていいかな?」

「俺のスキルには剣を振るほど剣が速くなるスキルがあるんだ。だからこうして振っている」

「へぇ、何て名前のスキルなの?」

「剣神降臨」

「神! 学人くんには似合っているスキルだね!」

「ありがとう」


 似合っているって本気で思っているんだろうな。どこら辺が似合っているのかが分からないが素直に受け取っておく。


「本気で一回振ったらどれくらい速いの?」

「本気でやったらここら辺が吹き飛ぶぞ」

「吹き飛ばない加減でできる?」

「まあ、失敗したらごめんな」


 ゆっくりと上まで手をあげて絶妙に手加減して振り下ろした。


「どうだ?」

「一瞬で下に行った」

「私は辛うじて見えたような気がするわ」

「見えませんでした」


 どうやらこの速度でも三人にはハッキリとは見えないようだ。本気でやれば本当に見えないくらいに俺の剣は速くなっている。


「どれくらい速度が上がるのか気になるんだよな」

「それで飛ぶ斬撃が来たら見えないよね」

「まあ剣を持っているからそれが来ると心構えができるくらいか」

「……前に魔法剣士って言ってたけど剣士だよね?」

「大丈夫。これで魔法も使うから」

「でも一つのことを突き詰めた方が……私が言えることじゃないよね」


 バッチリと魔法剣士のスキルを四つも持っているから言えない愛理。


「このパーティでいる時はたぶん俺は剣士でいると思うぞ。目指すはオールラウンダー」

「あー、そっちの方が似合ってるね。で、でもやりたいことをやれる方がいいと思うよ!」

「これもやりたいことだから気にするな」


 話しも終わってダンジョンの先に進み続ける俺たちだが剣を振っている時に文字が出てきた。


『剣の速度が一定値を超過。到達報酬獲得』

『神域の太刀

 分類:アビリティ

 ランク:13

 太刀の最高速度に比例して剣を振らず剣を振ることができる。現在の太刀:1』

「おぉ……?」


 何だかヤバいアビリティが出てきたな。これは剣を持っていないとできないのか? さすがにそうか。いや、もしかして同時に二撃繰り出せるんじゃないのか?


「どうしたの?」

「うん? いや何でもない」

「……何でもなくないよね」

「気にするな」

「むー……はーい」


 まだ愛理に話すことじゃないからな。


 俺は三人を見守りながら剣を振って太刀を増やしていく。


「あっ、サイレンウルフだ。あれで経験値がいっぱい来るね!」

「もう前と言っていたことが違うんだよな」


 ダンジョン内にいるモンスターたちを狩り尽くしながら五階層に向かうとサイレンウルフがいた。


 すぐに愛理が前に出るとサイレンウルフ四体は俺たちの姿を認識してダンジョン内に響く声を出した。


 今の輝夜たちにはこの大量のモンスターたちはただのEXPにしか見えないのだろう。それはそれでいいことだ。


 こうしたことをしていると実戦経験が乏しくなりそうだがレベルを上げてからやっても何も問題ないからいいか。

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