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6/2(月):侵攻に向けて

「EXP超ブーストが三つもあるわ」

「十個くらいにした方が良かったかもな」

「発想がお金持ちだわ。今はこの三つだけでいいわ」


 今俺と輝夜は東京ダンジョンの前にあるロビーでソファに座って人を待っていた。


 昼からだったしできるかどうか分からなかったがメッセージを送ったら速攻で既読がついて速攻で東京ダンジョンに向かうと返事が来た。


「お待たせ!」


 待っている人はもちろん愛理で、その後ろにはメイドさんも来ていた。


「いきなり誘って悪いな」

「ううん! 全然気にしないで! 用事があったけど全部ぶっちしてきたから!」

「そうか。それなら良かった」

「全く良くありません。せめて私に連絡をください」


 ぶっちできる用事だと思って返したが全く良くなかったようだ。メイドさんに疲労が見える。


「絶対に私に連絡してね! 早紀に連絡したら分からなくなるから!」

「いえ。お嬢さまが家の用事をすべてこなしてくださるのなら問題ありません。それを放り出すのをおやめください」

「は? そんなこと学人くんとダンジョン攻略するより大事じゃないから」

「……お願いします」


 切実そうに頭を下げてくるメイドさん。このお嬢さまのメイドは大変そうだな。


「その話は置いておくとして今はダンジョンに入りましょう」

「はーい! 輝夜さんもよろしくね!」

「えぇ、怪我はしないように」

「置いておかないでください。……もういいですけど」


 俺たち四人はダンジョンに入る。


『輝夜。この二人もこちら側に引き込もうと思っているんだが、いいか?』

『やっぱりそうだったのね。あの話を聞いた後にこの二人を誘ったのだからそうだと思ったわ。……いいわよ。今知り合いの他人で一番信用できるのは愛理くらいね』

『分かった』


 メイドさんは分からないが、まあ俺の勘が大丈夫だと言っているから二人とも大丈夫だろう。


 東京ダンジョン一階層で人が来なそうな場所に来て振り返る。


「愛理、東雲さん。少しいいか?」

「やっぱり話があったんだ。そんな雰囲気してたよ」

「そんなことも分かるのか?」

「これでも社交界とかは行ってるからね! それでどうしたの?」

「簡単に言えば、サブステータスをもっと渡せるということだな」

「いくらかな?」


 食い気味に釣れたな。


「お金はいらない。だが条件は信用させてくれることだな」

「お金よりも難しいよね……でもいいよ! 絶対に私を信用させてあげる!」

「東雲さんはどうですか?」

「私はお嬢さまに付き従うまでです。私は源三郎さまに雇われているわけではなくお嬢さまに雇われています。ですからお嬢さまの意向に従います」

「大丈夫! 早紀は信用できるから!」


 創作作品ではこっそり家に報告するとかいう場面があるけど、このメイドさんなら大丈夫そうだな。それに条件は誰にも言わないではないから言っても問題はない。


「分かった。愛理は魔法剣士だったな」

「そうだよ!」

「……学人はもう魔法剣士ではないからちょうどいいわね」

「まあオールラウンダーということで。東雲さんはやりたいことは暗殺者ですか?」

「……魔法は使いたいですね。魔法暗殺者というのはありませんか?」

「魔法を習得している暗殺者は魔法暗殺者だと思いますよ」


 暗殺者の方は少し悩むところだから先に愛理の方を済ませることにした。


「ちょっと待ってくれ」

「えっ!? 学人くんが飲むの!? しかも二本飲み!?」


 先に全部習得していればいいなと思いつつ、魔法剣士なるものと初級風魔法を習得してから魔法剣士なるものを初級風魔法に上書きする。


「まずは一つ目のスキルだ」

「どういう……? へっ? ……増えてる!? 魔法剣士たるもの!? 何このスキル!?」

「東雲さんは魔法を習得していますか?」

「いいえ、習得していません」

「それなら土と風の初級魔法と中級魔法をどうぞ」

「はい」


 しまったな。これはダンジョンでやることではないがダンジョンの方が秘密にできるからダンジョンで良かったか。


「それから愛理には貴公子のスキルのボトルを渡す」

「貴公子……! ほしい!」


 手に入ったばかりの四種類の貴公子スキルをこれはこのまま愛理に渡す。俺が一度飲んでサブステータスを誰でも渡せるようにしたらいいとは思うが、今のところこれを使うのは愛理だけだ。


 それにもし現れたとしても強奪で愛理から一旦預かって上書きすれば問題ない。それで貸力で返せば元通りだ。


『氷の貴公子

 分類:スキル

 ランク:8

 水魔法を氷魔法として扱うことができる。水魔法の威力が五倍。水魔法を使っている状態で全ステータス五倍。水魔法の耐性アップ』

『炎の貴公子

 分類:スキル

 ランク:8

 火を爆炎にすることができる。火魔法の威力が五倍。火魔法を使っている状態で全ステータス五倍。火魔法の耐性アップ』

『風来の貴公子

 分類:スキル

 ランク:8

 風が吹いている場所に転移できる。風魔法の威力が五倍。風魔法を使っている状態で全ステータス五倍。AGI+300』

『雷霆の貴公子

 分類:スキル

 ランク:8

 雷を蓄積すればするほど雷の威力が増す。雷魔法の威力が五倍。雷魔法を使っている状態で全ステータス五倍。雷魔法の耐性アップ』

「こ、こ、こ……!?」

「そんな顔をして大丈夫か?」

「いえ大丈夫ではありません。お嬢さましっかりとしてください」


 愛理はよだれを垂らして恍惚の表情を浮かべているが、これはお嬢さまがしていい顔ではない。


 愛理が持っていない貴公子のために必要な魔法は水、火、雷魔法か。水魔法と火魔法の初級と中級のボトルはそのまま渡して、雷は数が少ないから俺が習得してから貸力する。


 東雲さんに渡すサブステータスをアイテムボックスから探して、暗殺者の足、気配遮断、サーチ、無限暗器くらいだな。


「東雲さんにはまず暗殺者の足とサーチです」

「はい」


 気配遮断は誰でもほしいものだから俺が習得してから数が多い初級風魔法を飲んで上書きする。


『暗殺者の足

 分類:スキル

 ランク:5

 足音が気づかれない。相手に認識されず相手に近づけば近づくほどステータス補正』

『気配遮断

 分類:アビリティ

 ランク:5

 気配を殺す。敵から遠ければ遠いほど気配が気づかれにくい』


 この気配遮断は今までは必要とはしなかった。俺は敵に気づかれる前に殺しているからな。でも暗殺者志望の東雲さんなら上手く使えるだろう。でも気配遮断がこれから必要となるかもしれないから俺も保持しておく。


「これで二人には渡したいものは渡したか」

「あの魔弾はないのかな!?」

「あるぞ。ほしいのか?」

「ほしい!」


 そう言えば俺は魔弾を習得しているのに使ってないなと思いつつ魔弾と魔力操作を上書きして愛理に渡す。


「東雲さんもいりますか?」

「私には不要です。そもそもこの魔法は手段を増やしたいと思って言っただけですから」


 へぇ、面白いなこのメイドさん。


『学人、パーティ作成はいいの?』


 さっきから退屈そうに俺のことをじっと見ている輝夜からそう聞かれた。


『今はいいだろ。それよりもEXP超ブーストを渡そうかと思っている』

『まあいいんじゃないかしら。レベルが上がらなければサブステータスも意味がないのだから』


 輝夜からずっとモンスターを倒したいという感情がひしひしと感じ取れる。あと少しだから我慢してほしい。


「それから経験値をアップさせるスキルも渡しておくぞ」

「そんなスキルもあるの!? もう一生学人くんについていくね!」

「あぁ、そうしてくれ」


 愛理と東雲さんにEXP超ブーストを渡すために四つのボトルを飲んで上書きする。短い時間にボトルをかなり飲んだがお腹は何ともない。だからこういうものなのだろうな。


 スキルを二つずつ渡してようやくサブステータスを充実させることができた。あとは武器だ。


「愛理にはこれ。東雲さんにはこれを」


 愛理には貴公子の宝剣。東雲さんには無限暗器というポーチを渡した。


『貴公子の宝剣

 ランク:9

 装備可能レベル:185

 ATK:600

 AGI:300

 属性付与

 魔法威力強化

 自動魔力回復

 耐久:700/700』

『無限暗器

 ランク:8

 装備可能スキル:暗殺者

 自在暗器(運用魔力による暗器強化)

 耐久なし』


 二人にはこの武器たちの説明を行う。愛理のはともかく東雲さんに渡した無限暗器は使いにくそうだ。


「早紀のは不思議だね。ちょっと出してみてよ」

「はい」


 東雲さんはポーチの中に手を入れて匕首を取り出した。


「これは面白いポーチですね。使いやすいです」


 簡単に取り出せる辺り、東雲さんには合っている武器なのだろう。これは運命としか思えないな。俺は手に入れた時は何も望んでいないのにこうして必要になった時がすぐに来た。


 これも俺のLUKのおかげなのかもしれない。


「これで準備万端だな。行くぞ」

「おー!」

「行きましょう」

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