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肉体強化系能力者の戦闘記  作者: ネイン
ホムンクルス編

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第四四話 力を持つ者の責任

 十月(とおつき)風成(ふうせい)は敵である(かなで)義安ぎあんを目の前にしながら葛藤していた。すると、彼の左手のひらに紫苑(しえん)が刻んだ【収納術式】が浮かんでいた。


 (なんだ左手に違和感が……)


 風成は左手を見て一本の縦線が浮かび上がってるのに気付く。


(紫苑? 俺に何か言いたい事でもあるのか……)


 風成は右手で左手のひらから剣を抜くような動作をすると、義安は冷静でありながらも声を漏らす。


「なんだそれは」


 声を漏らすのも無理もない。何故なら、風成の右手は刀が納まっている鞘を握っていたからである。


 風成は刀を見ながら不安の声を出す。


「いくら刀があっても、あいつの能力相手じゃ意味ないんじゃ――」

『この、うつけ者が‼』

「うっお!」


 風成が持っている魔刀『紫苑』に宿る霊、紫苑が開口一番に叱責する。風成は虚を突かれ肩がすくんだ。


「い、いきなりでかい声を出すなよ」

『そちは何を愚かな事で悩んでいるのだ!』

「でも、あいつの言ってる事は完全に否定できないからな」

『は?』

「ひぇ、こっわ。怖すぎる姉さん」

『誰か姉さんだ!』

「なぜ一人で喋っている……」


 義安は紫苑が見えない。何故なら彼女は風成にしか認識できないからだ。故に一人で喋っている風成を怪訝な顔で見ていた。というか引いていた。


(幻覚と喋っているのか? 統合失調症かもしれぬ。恐らく『姉さん』という言葉からあいつは姉を亡くして精神状態が不安定になったのであろう)


 義安は真面目に的外れな分析をしていた。


 紫苑は腕を組んで風成を諭す。


『そちが人の命を奪う快楽殺人者でも人をいたぶるのが好きな暴虐者だという事を自覚しても、今やる事は一つぞ』

「いや……そこまで思ってないからな、そこまでやばくないわ」

『いいか風成』

「……」

『そちの人を助けたいという気持ちは偽りか? 本心なのだろう? なら今は戦う事だけを考えよ! 死んでしまえばそちの願いは果たせぬ! 生きてさえいれば悩む事など後で出来るであろう! 何も失いたくなければ敵を打ち滅ぼせ!』


 風成は紫苑の言葉が心に響いた。全く持ってその通りであると同調していたのである。


 身近な人達が失われるぐらいなら敵を殺す。人だけではないこの世の生きとし生ける者は他者の命を食らって生きている。そうしなければ生きていけないからだ。しかし、生きとし生ける者は命を奪う事しか出来ないわけではない。自分自身や最愛なる者、親愛なる者の存在が失われないように戦う事だって出来る。


 自分や身近な人たちに危害を及ぼす者が現れ、話し合いが通じず力で制する事しか出来ないのなら圧倒的な力で相手をねじ伏せる、それは自国が他国に侵略された時にも起こりうる。故に力を持つ者には責任がある。その力を人に危害を及ぼす為に行使するのか。人を守る為、敵に危害を及ぼす事に行使するのか。


 風成は自身の本質はなんであれ、やるべき事は一つだと思い、義安を見据える。左手で鞘を握って刀を引き抜き、鞘をズボンのベルトの内側に差した。


「奏義安!」

「……」

「お前を殺す」

「ふっ」


 義安の口角が片側だけ吊り上がり、歓喜のするように鼻で笑った。


 風成は義安に向かって走る。対して義安は背後にある八つある六角形の結界を一つ風成にぶつけようとした。


「とおっ!」


 風成を前に走りながら結界を跳躍して避けた。すると二つ目の結界が風成にぶつかろとしていたが、


「せい!」


 持っている刀を上方に振りかぶって結界に叩きつけた勢いでそのまま前方宙返りをした。


「【小結界(しょうけっかい)集合展開(しゅうごうてんかい)】」


 義安は自分の上空に迫った風成を見て言うと背後にある残りの六つの結界を集合させ、蜂の巣状の結界を形成しようとするが、風成は持っている刀を結界が集合して一つになる前に刀を投げつける。


「っ!」


 義安は予想できなかった刀の使い方に一瞬、戸惑った。


 風成の能力は肉体強化の類であるが故、投擲が強力な武器にもなる。回転している刀は義安の首を掠め切って床に落ちる。


「ぬっ……!」


 義安は首横から血を流すが命に別状はなかった。しかし、怪我した部分が致命傷を食らいかねない首だったので思わず出血部分を手で押さえた。一方、風成は形成された結界にぶつかる前に結界を足裏で蹴った。その蹴った勢いを利用して後方宙返りをし、床に着地する。


 義安は首を触り、致命傷ではないと判断した。


「十月風成……奇怪な奴だ」

「傷は浅いようだな」

「残念ながら」

「ああ、本当にな」


 風成の心には迷いが完全に消えていた。明確に眼前の敵を打ち滅ぼそうとしていたのであった。

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