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肉体強化系能力者の戦闘記  作者: ネイン
ホムンクルス編
30/65

第三〇話 『茂&修vs義安&音流』

 (かなで)義安(ぎあん)は中腰の体制から長髪茂(ちょうはつしげる)強力修(ごうりきおさむ)の居る所に向かって走り出す。


 茂と修は義安が動いた瞬間に能力を発動する。


「【短刀十刀・顕現たんとうじゅっとう・けんげん】」

「【戦斧・顕現(せんぷ・けんげん)】」


 茂の周囲を囲むように一〇刀のダガーナイフが宙に浮かび、修の右手に金属製の柄手一メートル、斧身が六〇センチある戦斧が顕現した。


 二人は義安の背後から動かない赤塚(あかづか)音流(ねる)を奇妙に思いながらも戦闘を開始した。


 茂は指を前に突き出す。


「【十刀射出(じゅっとうしゃしゅつ)】」


 一〇刀のダガーナイフを一斉に義安に向けて射出する。


 義安は止まることなく走ると、その背後に居る音流が顔の前で右手のひらを開いて握る


「【風壁(ふうへき)】」


 義安は球状の風の壁に囲まれると、射出されたダガーナイフが弾かれて四方八方に飛び散る。


「だと思ったぁ、ちくしょう! 九刀(きゅうとう)戻れ!」


 茂は自身のダガーナイフを宙で自由自在に操る能力と音流の風力を操作する能力とでは相性が悪すぎるのは承知だった。彼は弾かれたダガーナイフ九刀を周囲に引き戻した。


「茂、任せい!」


 一メートルの距離まで迫った義安を修が戦斧を右肩に担いで迎える。


「ウホッ!」

「【結界展開(けっかいてんかい)】」


 修が右斜め上から戦斧を振り下ろすが、


 カンッ!


 と戦斧が弾かれて、修が思わず「ぬおっ」と仰け反って後退する。戦斧を弾いたのは義安が立ち止まって前方に展開した結界である。結界は蜂の巣状でガラスの様だった。大きさは大人一人入りそうな大きさである。


「【強風(ごうふう)】」


 すかさず音流は突風を義安に向けて送り込む。


「修っち! あぶねぇ!」


 結界を消した義安は突風に乗って修の顔に右足で飛び膝蹴りを食らわす。


「むぐお!」


 修は後方に飛んで地面に背中を打った。彼は鼻を触ると血を流していた事を認識する。


 茂は義安が起き上がろうとする修を追撃すると思った。


一刀(いっとう)戻れ!」

「! 後ろ!」


 音流が叫ぶ。何故なら義安の背後に向かってダガーナイフが飛んでいたからである。茂は九刀だけ手元に戻して一刀だけ弾かれたまま放置してたのであった。


「むっ!」


 義安を後ろを振り向いて腕を交差させて防御態勢と取る。


 ダガーナイフは義安の右手の甲に刺ささった――――かの様に思われたが義安は平然とダガーナイフを抜き取って前方に放り投げる。


「ふむ、鉄を少し貫いたか」

「なっ、てめぇ、何か仕込んでるなぁ!」


 義安の黒い皮手袋の中には鉄が仕込まれており、ダガーナイフは手の甲を少し刺しただけであった。抜き取って放り投げられたダガーナイフはいつのまにか宙を移動して茂の手元に戻っていった。


 起き上がった修は右手を引いて戦斧を縦回転になる様に義安目掛けて投げつける。


「【戦斧回転(せんぷかいてん)】」

「【結界展開】」



 戦斧は高速回転して義安が展開した結界に当たって回り続けた。


「ほう」


 義安は斧が結界に当たっても弾かれずに回り続けてる事に関心した。その時、


「ウホッい!」


 修は結界を回り込んで横から義安に右拳を振るう。対して義安も右拳で対応する。右拳同士がぶつかり合うと、


 パキッ


 と何かが割れる音がした。


「なるほど」


 割れる音がした瞬間、義安は自分が走って来た方向に二回跳躍して後退した。先程の音は手袋に仕込んだ鉄が割れた後である。修が単に斧を顕現する能力だけではなく、なにかしらの身体能力も向上していると判断した。


 茂や修の様な顕在化系能力者は顕現する物に能力が依存し、副次的な能力も生む事もある。つまり、修の戦斧は筋力増強効果があり、茂のダガーナイフは自由自在に宙を舞う事が出来るといった事である。


 結界はいつの間にか消え、戦斧は地面を転がっていた。修は戦斧を拾って再び投げつけようとしていた。さらに茂も修の攻撃に合わせてダガーナイフ一〇刀を投げつけようと切っ先を義安に向けた。


 修は一筋の希望を見出していた。


(いけるではないか。奏義安殿は前方の一部分に結界を展開できるというのなら、先程の様に斧で結界を展開させようぞ。その間にあっしが本体に攻撃する!)


 修の考え方は茂にも伝わる。


(修っちが奏って野郎自身を攻撃したら反対方向にナイフを飛ばす!)


 そんな二人の考えとは裏腹に義安は二人に向かって走り出した。 


「「⁉」」


 二人は驚くが攻撃の指針に変更はなかった。何故なら、唯一、勝利を見出せる活路だと思っていたからだ。

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