『速記者とプレスマンin井戸』
速記者愛用のプレスマンが、井戸に落ちました。もちろん、速記者が、愛用のプレスマンを井戸に落としました、と言っても同じことですけど、その話、今、します?
はい。
速記者は、井戸に飛び込みました。
だって、プレスマンが井戸に落ちたんですよ?
あ、いや、プレスマンを井戸に落としたんですけどね、単に。
プレスマンは、生まれて初めて井戸に落ちましたので、激しく動揺していました。ま、大抵、生まれて初めてのことには、激しく動揺するものです。しかし動揺したのをいいことに、プレスマンは、速記者を刺しました。ざくっと。ぶすっと。ぐりぐりっと。
ひどい話です。プレスマンは道具です。プレスマンを生かすのは、速記者です。その恩を忘れて、速記者を刺すなんて。
ま、そんなことを言っても、刺してしまったものは、仕方ありません。
速記者は、プレスマンを抱いて、井戸から出ました。
その間に、何度も何度も刺されましたが、速記者ですから、プレスマンに刺されるなら本望です。いえ、痛くないとは言っていません。痛いです。でも、プレスマンがよければ、それでいいのです。そういうものです。
教訓:かわいいんだから仕方がないでしょう。