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銭湯のおかみさん~物の怪銭湯奮闘記~  作者: さいとう みさき
第二章お仕事
8/18

2-3:裏方事情

とある八王子のとある銭湯に嫁入りしたかなめが体験する不思議な不思議な物語。


今日もおかみさんのかなめはてんてこ舞いの一日を過ごすのだった。


 湯本銭湯に嫁いで初めて知ったけど、銭湯を運営するのは結構大変だって事。

 特にうちは朝湯の部と夕方の夕湯の部に分かれているけど、その間にちゃんとお湯を抜いて清掃をしなければならない。



「はぁ~、何とか氷が溶けましたね」


「うん、ありがとうかなめさん。おかげで掃除も終わって少し休めるからね」



 湯本銭湯は朝湯は六時から九時まで、夕湯は同じく六時から夜の十一時まで。

 時間的には結構と長丁場だ。

 なので休める時に休まないと体がもたない。


 それに裏方では意外と知られていない重労働もある。



「それじゃかなめさんは休んでて。僕は薪を割って来るから」


「あの、私も手伝いますよ?」


「いやいや、休める時に休んでおいて。出来れば仮眠しておいてね」


 守さんはそう言って裏方に回る。

 湯本銭湯のボイラーは古いもので、未だに薪を割ってお湯を沸かしている。

 その薪も今は色々な所から調達しなければいけないので大変だって言っていた。


 最初私は燃やせるものなら何でもいいのかと思っていたら、環境汚染やら何やらで意外とうるさいらしい。

 木材やビニールのついていない紙くずは燃やしてもいいけど、それ以外はダメなんだそうな。

 特にプラスチック素材が紛れているとダイオ何とかって毒素が煙に出て環境汚染になるとか。

 なので古来より燃やされている木材や紙を燃やしている。


 でもそうなると薪の仕入れが大変じゃないかと聞いたら、家具屋の工場から出る木のくずや住宅解体時に出る木材、後は要らなくなった木製パレットとかを引き取って燃料にしているのだとか。

 足らない分は仕方ないので昔から契約している大月の辺の業者から薪を購入しているんだって。


 大変だと思ってガスの湯沸かし器にしないかと聞いたら実際にはそっちの方が高くつくとか。

 石油関連は価格の変動が高いので大変らしい。


 だから壊れるまで湯本銭湯は昔ながらの薪くべでお湯を沸かすとか。


 それと初めて知ったけど薪って言うのは意外と温度が上がるらしくお湯を沸かすのにはいいらしい。

 言われて見れば陶芸とかもいまだに薪使ってるもんね。


 そして薪は奇麗に燃えると真っ白な灰になる。

 この灰は農業とかでも再利用できるので売れるそうだ。

 ちょっと意外。


 お湯を沸かす以外にも毎日お湯の衛生面にも気を使っていて、実はあの湯舟って巡回してフィルターで常にお湯を奇麗にしてるんだって。

 それで一時間に一回検査して汚れがひどいと新しいお湯を流し込んでお湯の清潔さを保っているとか。


 う~ん、今までそんなこと気にした事無かったけど、だから銭湯とかっていつ来ても小奇麗なんだね。


 他にも排水溝の掃除とかゴミのかたずけ、洗い場の温度調節や脱衣所の温度調節と意外と細やかに様子を見ないといけない。

 これだけの事を家族三人、今は私も含めて四人でこなすのだから毎日が大忙しとなる。


 それにお休みも基本的には無い。

 月に一回か二回。

 最初驚いたけど、毎日来てくれるお客さんの顔見てると納得する。


 みんなお風呂が大好きなんだと。


 特に恒例のお客さんはだんだんなじみの人が誰だかわかるようになってきた。

 最近は私も番頭に立っているから「若女将」とか言われるようになってきた。

 ちょっと照れるけど、毎日来てくれるお客さんの中には雑談もしてくれる人も増えて来た。

 勿論、「特別なお客さん」も。



 そんな事を思いながらうつらうつらと居間でしていたら守さんが慌ててやって来た。



「父さんいるかい!?」


「はっ!?」


 いつの間にか横になっていて居眠りしていた私のお腹あたりにうずくまっていたヨークシャテリアが起き上がり、「きゃん!」と鳴く。

 そして守さんの方へとてとてと歩いて行って途中でボンっと煙を吐いて初老のおじさんになる。



「どうしたんじゃ守?」


「いや、今保健所から連絡があってノロウィルスの人がどうやらうちに来ていたらしいんだよ、すぐに消毒しないといけないから手伝って!」


「何と、それはまずい。すぐに儂も行くぞ。おっと、かなめさんすまんが入り口付近を消毒液入れたやつで水拭きしておくれ。塩素系のやつで五パーセント以上入っていればいいからね。アルコールはだめだよ」


「あ、は、はい!」


 大騒ぎしている守さんたちのおかげで目が覚めるけど、お義父様もいつもと違ってテキパキと指示してくる。



「守、タンクの湯は?」


「今入れてる。どうする、廃棄する?」


「そうじゃな、万が一があるから一旦廃棄じゃ。そんでもって消毒。大変じゃやが沸かし直しじゃ!」


 言いながら二人も急いで裏方に戻って処理を始める。

 私も起き上がって物置にある消毒液を計量カップではかって消毒水を作る。

 そしてそれにぞうきんを浸してから湯本銭湯の出入り口から拭き始める。


 途端にプールのような消毒の匂いが立ち込めて、なんかさっぱりと殺菌されていくような気分になる。

 夕方の時間までにはまだ余裕があるけど、こうなったら拭ける所は拭けるだけやってしまおう!




 私は年末の大掃除よろしく玄関から脱衣所とあらゆるところを拭き掃除していくのだった。



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